第1話その3 一緒にお風呂は恥ずかしいんですけど……!
「お風呂場はここです」
わたしは一先ずお姉さんを風呂場に連れて行くことにした。
「……これ、何?」
お姉さんは洗濯機を指さしてそんなことを呟いた。
「えっと、十年くらい使ってるウチの洗濯機ですけど……。」
「……洗濯機って、何?」
その表情はとても冗談を言っているようには見えなかった。
確かに、日本語が喋れるとはいえその容姿はあまりに浮世離れしている。
もしかしたら本当に洗濯機がわからないのかもしれない。
『誤解とはいえ、さっきは失礼なことをしちゃったしな……。』
全くの誤解とはいえ、お姉さんの体を眺めてしまった件を踏まえるとあまり邪見に扱うことはできない。
「とりあえず、さっさと服を脱いじゃってください……。お風呂場の使い方を教えますから……。」
「わかった。」
そう答えて、彼女は上の服を脱ぎだした。
褐色の肌に銀髪の髪。この世のものとは思えないような美しい姿が露わになっていく。
思わず手で目を隠したが、指の隙間から変わったアクセサリーが見えた。
「あのー。その首から下げているものはなんですか?」
「……これは魔導具。これのおかげで意思疎通ができている。」
なんだか一気にファンタジーみを帯びてきたが、その容姿も含めて考えるとそれなりに説得力があった。
『もしかして、本当にダークエルフだったり……。』
そんなことに気をまわしていると、お姉さんは自分の胸の間に首飾りを突っ込んだ。
「な、なにやってるんですか!?」
「……? 邪魔だったから。」
指の隙間から、お姉さんの豊満な体が揺れて見える。
お姉さんは体を隠そうとはせず、無気力に背中を丸めている。
『……。』
お姉さんと目が合う。
「……はあ……。またいやらしい目つき。」
「……ハッ。いやいやいや!お、お姉さんこそ!前ぐらい隠してください!」
私がそういうと、口を不服そうに噤んでこっちをジロジロとみてくる。
「な、なんですか!?」
「……さっきから、ことあるごとに私の体をジロジロ見てた。お仕置きが必要。」
「お仕置き!?」
お姉さんは少し考えるそぶりを見せた後、無表情な顔つきのまま……。
「……じゃあ、服、脱いで?」
そんなことを言いだした。
「な、な、な……、何を言い出すんですか!?そ、そんなのは絶対ダメ'です!変態みたいなこと言わないでください!」
拒絶しても、表情を変えないまま少しずつ近づいてくるお姉さん。
私は少し後ずさりした。
『お姉さん、背ぇ高……。ち、近い……。う……、うぅぅ……。』
前を隠しもせず、私の目の高さに二つのモノを下げて、さらに近づいてくる。
「……脱がないなら、しょうがない。私が脱がしてあげる。」
「…っっっ。わ、わかりました!……、わかりましたから……。いま!脱ぎます!」
そう言って私は、タイツをまず脱いで……、トップスとスカートを脱いだ。
それから……、下着を外した。
『な、なにやってるのかな、私……。』
お姉さんは無表情のまま、こちらをじっと見ている。
「……これで、オアイコ。」
「お姉さん……。その、あんまりジロジロ見ないでください……!」
「……お姉さんじゃだめ。私はクロリア・レガニス・フェリン。クロリアって呼んで。」
「え?えと……、クロリアさん……?」
言われるがまま、ぼそっと呟くようにその名前を読んでみる。
『ゾクッ……』
ただ名前を呼んだだけなのに、ジロジロと見られているせいか、イケナイことでもしている気分になって気恥ずかしい。
「あ、あの……。」
「……キミの名前は?」
「湊、由愛ですけど……。」
「……よろしく、由愛。」
そういえば、私たちはようやく互いの名前を知ったのだった。
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