第7話 賽は投げられた(主に聖女に)
セイコに好き勝手に発言させてしまった後、程なくベンケイのチャンネルも生配信を始めた。
これは、さすがに確認せざるをえないか。
『賢者チャンネルから来ました。果たしてどうなるんだろうか?』
『聖女なのか巫女なのか分からないけれど強烈だった』
俺のチャンネルを見た人達も、始まる前からコメントをしている。
こうやって、チャンネル同士の対立が激化していくんだな。
出てきたベンケイは何故か頭の上にヤカンを乗せている。
ベンケイの生配信は道場のようなところでやっているが、何故かカップ麺も用意されている。
『どうも、フォロワーの皆さん、ベンケイでござる』
当然、視聴者のコメントも「そのヤカンは何ですか?」から始まる。
『これでござるか? 拙者の今の心境でござる』
言うなり、ヤカンをカップ麺に注ぎ始めた。たちまちカップ麺に注がれるお湯から湯気が漂っている。
『先日、コラボを申し込んだ大賢者でござる! あの腰抜け賢者が、事もあろうに生意気な自称聖女なる者とコラボをすると言ったのでござる! その聖女が拙者と女神ちゅわんを煽りまくって、拙者の怒りはこの湯を沸騰させるほどでござるよ!』
本当かよ!?
湯だったヤカンを頭に乗せていたんじゃないのか?
それでもよく我慢できるなとは思うけどな!
『拙者あまりにおかしくて!』
今度はいきなりブリッジをして、手伝いが急須を腹の上に置いた。
途端に急須が高い音を立てて、湯気が立ち始める。
『
どういう仕組みなんだ?
悔しいが、やることの手が混んでいて、不覚にも面白いと思ってしまったぞ。
『女神ちゅわん! 2人で腰抜け賢者と』
『もちろんよ!』
あぁ、女神もノリノリだ。
女神も段々、路線が分からなくなってきたな。
『やれるものならやってみるがいいですぅ!』
って、セイコ?
おまえまでベンケイと繋いでいるの!?
『私達とやる気なら来週の日曜日20時に札幌まで来るですぅ! そこで決着をつけるですぅ!』
あの、セイコさん……?
それって、俺も来いってこと?
来週日曜に札幌まで行けってこと?
『合点承知の助でござる! コテンパンにしてやるでござる! その時になって泣きを入れても知らないで御座候!』
『そうよ! そうよ! アンタ達生意気なのよ! 女神を何だと思っているの!?』
相手もノリノリだ。
この3人が最初から計画していて俺を引き込んだんじゃないかってくらいに思えてくるくらいだ。
『うぉぉ、決着をつける気だ?』
『一体どういうことになるんだ?』
『賢者と聖女コンビ対忍者と女神ってこと? 予想もつかん』
俺だってつかないよ。
というか、こんな展開、予想すらしていないよ。
どうするつもりなんだよ。
ベンケイチャンネルが大盛り上がりのまま終わった。
よくよく見たら、コイツのチャンネル、登録者が25000まで増えているぞ。俺との絡みで6000人も増えているのかよ?
と思ったら、俺の方も5万人を超えていた。
争い好きな連中がどんどん登録しているということか。
いや、よく見るとコメントの中に英語とかハングルもあるぞ?
こんなアホみたいな展開がワールドワイドになってきているのか?
……チャンネルのカンパを広く募るという点では望ましいのかもしれないが。
というか、セイコに文句を言わないと。
「おい、こら、セイコ!」
『何ですぅ? 来週日曜日はよろしくですぅ』
「よろしくですぅ、じゃないよ! 札幌までどうやって行けって言うんだよ!」
『よく聞くですぅ。羽田空港か成田空港から新千歳空港まで飛行機で行けばいいんですぅ! 新幹線はめちゃくちゃ遠いですぅ』
「知っとるわ! 誰が交通費を出すんだよ!?」
『もちろんセイジですぅ! もしお金がないなら、年利30%で貸してやるですぅ!』
高っ!
『ここまで来て逃げたら、セイジは腰抜け中の腰抜け賢者として記憶されるですぅ! セイジに残された選択肢は札幌まで来て、ベンケイを倒すだけですぅ! それしか選択肢がないんですぅ!』
誰のせいだよ!
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