第6話 セイコの毒舌
ベンケイとコラボをするのが嫌なので、俺はかつての仲間である聖女のセイコと先にコラボすることにした。
実際に見てはいないが、神の力を引き出すことができるらしいから、俺の魔法とも相性が良さそうだ。
コラボ内容も、俺の近くにあるパワースポットを回るだけと割と簡単な内容だ。パワースポットというからには何かしら魔法が使える場所もあるはずだし、魔法配信のうえでも都合がいい。
で、セイコが「私に任せておけですぅ。ベンケイと女神にコラボについてガツンと言ってやるですぅ」と言うので、早速、夜に短い生配信をすることにした。
2日空いての更新だからちょうどいいだろう。
「ハッハッハ! 皆さん、ご機嫌よう! 私はファンタジアの大賢者だ。今日は初めてコラボをすることになったので、その相手から紹介してもらいたいと思う」
と言って、カメラをセイコ側に回した。
『賢者チャンネルの皆さん、こんにちはですぅ! ワタシはぁ、聖女のセイコですぅ!』
『聖女? 巫女装束だけど?』
『……そういうキャラ設定?』
『勇者もマシンガン乱射していたし』
『シノビマスターのベンケイが逃げたとか言っていたけれど、やっぱり避けたのか?』
セイコに対するツッコミの他、ベンケイの件に関してもやはりチェックしていた人がいるようだ。
それに対してセイコ、「フフフフフ」と不気味な含み笑いを浮かべている。
「今回の件は、ワタシの方が3秒早く大賢者に申し込んだですぅ。先着が優先されるのは当たり前。大賢者はフォロワー数などで選別しない奴なのですぅ!」
おっ、先着したって理由か。これはいいな。正当な理由だ。
ただ、3秒っていうのは時間としてどうなんだ。記録があるわけでもないし、ベンケイに対してちょっと煽っていないか?
あと、セイコってファンタジアにいた時、こんな風に俺をフォローしてくれたっけ?
あれやれですぅ、これやれですぅ、と命令ばかりだった気もするが……
『3秒ww』
『賢者がこっちを優先したいのは分かった』
『それもあって女神ちゃんがベンケイと組んだんじゃないか?』
いや、女神を争うとかそういうのは絶対にないから。
俺が何かを言い返すより先に、セイコがコメントを見たうえで更に言い放つ。
『皆さぁん、考えてほしいですぅ。賢者というのはどう書きますかぁ? 賢い者と書きますねぇ? 賢いというのはどういうことですぅ? 頭を使って考えるってことですぅ』
ふむふむ、ここでも俺をフォローしてくれているのか?
『翻って考えてほしいですぅ。女神はエネルギーが全部胸に集まっていて、頭が空っぽですぅ。彼女は考えることができないですぅ』
うおっ?
い、いくら何でも言い過ぎじゃないか?
言っていることは間違ってはいないかもしれないが、さすがにそれは言い過ぎな気が……
というかセイコ、ファンタジアにいた時から、女神のことをそう思っていたぽいな……
『ベンケイも同じですぅ。筋肉は裏切らないとしても筋肉だけに栄養を行かせてはダメですぅ。頭にも栄養を与えるべきですぅ! そこを改善してから出直してこいですぅ!』
おおぉぉい!?
いくら何でも会ったこともない相手にそこまで言ったらダメだろ!?
『すげー! セイコちゃん、煽りまくっている!』
『これは賢者と忍者の対決待ったなしだ!』
『女神と聖女の女の対決も見られて、2度楽しそうだぞ?』
視聴者は喜んでいるけれど、こういうのはダメだ!
喧嘩腰とか炎上スレスレとか俺は嫌だぁ!
これは……血を見ることになる。
ごっそりと血が流れることになりそうだ……
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