第5話 第二の刺客はかつての仲間?

 次の日、学校の帰り。

 有人が駅近くのショッピングセンターでジャージーを買いたいというので、一緒についてきた。

 考えてみれば、ここ数日は配信のことばかりに頭を使っていた。同じことばかり考えていると頭が深みに入ってしまって抜けられなくなるとも言う。

 気分転換も必要だ。


「そういえばさぁ、最近、セイジがモテているらしいって話を聞くぜ」

 唐突に有人が変な事を言い出した。

「おいおい、何を言っているんだよ? 今だって、俺達2人しかいないじゃんか」

「いやいや、明上先輩と色々話しているって聞くし、他にもおまえと女子が一緒にいるシーンが目撃されているらしいぜ?」

「おいおい、明上先輩みたいな人が俺と仲良くすると思うか?」

 実際、昨日動画的な交友関係すら裏切ってきたわけだから、な。

 俺は女神とベンケイの相性は悪いと睨んでいたが、さもしい妬み感情で協力するようになった。

 今後も「臆病賢者」とか言って、無理矢理コラボさせようとしてくるんだろうなぁ。はぁ、面倒くさいことこの上ない。


 スポーツ用品店で有人がジャージーを探している間、特にやることもないのでチャンネルをチェックしてみた。

 予想通り、『コラボ希望』というメッセージが来ている。

 はぁ、面倒だ。

「あれ……?」

 が、その瞬間、差出人がベンケイでないことに気づいた。

 差出人のところには『セイコ』とある。


 セイコだと?

 まさか、ファンタジア大陸で共にパーティーを組んでいた聖女のセイコか?

 イサムがいるのだから、セイコも当然転生しているのだろうが……


 とはいえ、セイコという名前自体は決して珍しいものではない。聖子だったり清子だったり色々いるわけだからな。

 一応、中身をチェックしておこう。

『賢者セイジ、久しぶりですぅ。イサムちゃんからおまえのことを聞いたので挨拶するですぅ。私のチャンネルはあまり伸びていないんでコラボして助けてほしいですぅ』

 イサムの名前まで出てくるということは、間違いないようだな。

 というか、イサムの奴、既にセイコと合流していたのかよ?

 まあ、こちらも聞かなかったけれど。


 有人と別れて、家に帰った後、セイコが「伸びない」と言っているチャンネルをチェックしてみることにした。

「聖女、パワースポットを歩く」という名前のタイトルだ。

 パワースポットかぁ。

 一部の人には人気かもしれないが、確かに大きく受けそうな感じはしないな。

 登録者は1500人。

 1500人だから決して少ないとは思わないが、俺のチャンネルが4万人を超えているから、確かに少ないは少ないのかな。


 試しに中身を見てみると、パワースポットを巡っているわけだが……


 セイコ、おまえ、何で巫女さんの姿なんだ。

 いや、可愛いは可愛い。ファンタジアでは茶髪だったが、ここでは黒髪だ。やはり巫女は黒髪に限る。

 目は緑だが、これはまあカラーコンタクトで言い訳がつくだろう。

 しかし、おまえは巫女なのか聖女なのか、どっちなんだ?


 確かにセイコはファンタジアでも、我流の神の道を唱えていた。

 聖女のくせに「絶滅の光」なんていう物騒な技も使っていた。

 ただ、聖女という言葉の響きからは、人はファンタジーを連想するんだ。

 巫女の恰好をするのなら、タイトルも巫女にすべきではないだろうか。


 そもそも、セイコのこの内容だとどんなコラボになるんだろうか?


 まあ、とりあえず返事はしておくか。

『やあセイコ。久しぶり。以前の仲間の誘いだから、もちろんコラボは歓迎だ。そのうち何かあったらやろう』

 返事が戻って来た。

『そのうちやろうという言葉ほどアテにならない返事はないですぅ。私とコラボしたくないと考えているですね?』

 乗り気でないことがバレたようだ。

『すまない。最近、コラボの申し込みが他にもあって、今はちょっと気が乗らないんだ』

『そういうことなら仕方ないですぅ。しかし、そのうちそちらの方から、私に頼ってくるはずですぅ。おまえは魔法が使えるようですが、神の力は私にしか使えないですね』


 コイツの返事も何かむかつくなぁ。

 俺の方からセイコを頼るに決まっている、という、決めつけたような態度だが、別にセイコの力が必要なわけではないからな。そもそも、ファンタジアでもそれほど頼りにならなかったし。

 ただ、神の力は気になる響きだ。

 ヒールとか使えるのかな?

 それなら、ケガした時には便利かもしれない。

 ただ、とりあえずしばらくは、セイコのことはいいだろう。


 これでセイコとコラボしようものなら、ベンケイと女神がますますキレちらかすだろうからな。


 いや、待てよ……

 むしろ、セイコとコラボしてベンケイと女神を馬鹿にした方が、この2人には効くかもしれないな。


『セイコ、申し訳ない。予定が空いたから、コラボしても構わない』

『ワタシには分かっていたですぅ、セイジが誰からも相手にされず暇で死にそうにしていたことは。最初からそう言えばいいのですぅ』

 やっぱりムカつくな。

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