第13話 ハプニングからの……?
女神のチャンネルとコラボでもできないか。
あの尊大な女神相手に期待しづらいが、とりあえず話だけしてみるか。
聞くと、女神は買いだしに出ているのだと言う。
「服とかアクセサリーを買いに行っております」
良い立場だなぁ、全く。
と、従者Bが走ってきた。
「トイレの電球とトレペーがなくなりそうなので買い出しに行ってきます」
「あ、じゃ、俺が買いにいきます」
室地さんと従者達には色々世話になっているから、備品買い出しくらいは手伝わないと。
あと、協力すれば女神との話にも口添えしてくれるかもしれない、という下心もある。
お金自体はレシートと引き換えに返してくれそうだし。
ということで、電球を預かって近くのスーパーに出かけて、該当するものを2個とトイレットペーパー12ロールセットを一個ずつ買う。
それを持って、戻ろうとした時、ちょうど反対側の道路に女神がいることに気付いた。特別ファンタジーっぽい装いはしていない。ブレザー姿のままだ。大きな紙袋を持っているから、服か何かを買ったのは間違いないようだ。
すれ違った男が、「おっ」と振り返っているが、まあ、初対面ならそうなるかもしれない。
合流しても良いんだが、わざわざ道路渡って文句を言われるだけなのが関の山だろう。
別に合流する必要はない、と思ったその瞬間、反対側の道路向こうにあるコンビニから凄い物音が聞こえたかと思うと、サングラスにマスクをつけたナイフを持った男が、突然通りに飛び出してきた。
「強盗! 強盗です!」
その後、飛び出してきた店員らしい女性が叫ぶ。
コンビニ強盗!? こんなところで?
逃げる男と一直線の先に女神がいる。
「えっ、えっ? うわぁ! きゃーーっ!」
男が女神にナイフを突きつけたかと思うと、そのまま車道に近づく。
「近づくな! こいつがどうなってもいいのか!?」
男はそう言って、車道側に近づいた。恐らく人質を抱えたままタクシーにでも乗り込むなのだろう。
「……」
いや、女神なのに人質に取られるのはどうなんだ……
と思っても、この世界では特別な取り柄はないからなぁ。
いくら性格が悪くても、さすがにこのまま連れ去られると大変なことになるだろうし、助けてやるしかないか。
周りに人だかりが増えてきたから、あまり派手にやることはできないが、小型の魔法なら目立つ動作をする必要もない。
まず、念のため女神の防御力をあげておこう。刺されても心配ないように、な
大賢者たる者、補助魔法もしっかり使えるのだ。
そのうえで慎重に狙いを定めて、ファイアーボールだ。
空間に浮かんだ火の玉がナイフを持つ男の右手に直撃する!
「うおっ!? アチィ!!」
男が思わずナイフから手を離した。
追い打ちでもう一発!
「うわあ! 顔まで!」
驚きと恐怖で男は女神から手を離した。
「このタコ!」
女神は男の股間に蹴りを一発放って、そのまま逃げだした。
これでいいや、あとは炎を消して、一丁上がり。
コンビニから出て来た体格のいい兄ちゃん達が男を取り押さえたが、男は「熱い! 熱い!」と泣き叫ぶだけだ。
後は警察が来てくれるだろう。
俺はそのままスタジオに戻った。すぐ後から女神が入ってくる。
「アンタだったのね!」
女神の口からいきなり文句が飛んできた。
「この馬鹿賢者! 変に刺激してアタシが刺されでもしたら、どうするつもりだったのよ!?」
痛てえ! 俺にまで蹴りを入れてきやがった!
「いや、ディフェンスバフはしていましたから!」
「馬鹿のくせにこのアタシに口答えするの!? 冗談じゃないわよ!」
反論すると更に蹴りが飛んでくる。室地さんと従者Aが「お嬢様、おやめください」と間に入ってきて、どうにか解放された。
この女、本当にムカつく……
見捨てれば良かった。
その時、従者Cが「おや?」と声をあげた。俺の端末を見て、けげんな顔をして言う。
「建謝さん。建謝さんの動画、急に再生回数増えだしていますよ?」
えっ……?
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