第11話 女神より執事
翌朝、起きると女神にメッセージを送る。
「おはようございます。今日も室地さんと相談したいのですが」
すぐに返事が来た。何故か分からないが、女神はメッセージへの反応だけはやたら早い。
性格がマメ……なはずがないから、スマホ中毒なんだろう。
『そういうのをアタシに聞かないでくれる? 直接連絡すればいいでしょ』
「連絡先知りませんので」
返信を送ると、『だったら登校の時に直接聞け』と返ってきた。
あ、そうか。
確かに室地さんと従者達は登下校の時についてくるか。
なら、そこで待つか。
今日はカーペット敷くのかな。
ということで、いつもの時間に学校に向かうと、いつも通り途中で有人と遭遇した。
「おう、セイジ」
「おう、有人。おはよう」
2人で学校まで歩いていき、校門の近くに着いたところで足を止める。
「有人、悪いけど先に行っておいてくれ」
有人は一瞬、「何だ?」という顔をしてから、何か閃いたような顔をした。
「分かったぞ! セイジ、おまえ、明上先輩を待つ気なんだな!?」
「何で、そうなるんだよ!?」
反論はしたけれど、まあ、女神が転校して早々俺に絡んできたこともあるから、そう思われるのは仕方がなさそうだ。
実際は違うから、好きなように誤解させておこう。
始業時間の10分前、いつものようにリムジンが現れた。
でもって、いつものように颯爽と後部座席から女神が出てきて、従者達がカーペットを用意する。
となると、周囲が期待するのは昨日のようなハプニングだ。
あるいはカーペットをスッと引かれて、ひっくり返ってパンツ丸出しみたいなのも期待しているのかもしれない。
「げっ、何でここにいるのよ?」
女神が俺に気づくなり声をあげた。昨日のことがあるだけに警戒していることは間違いない。
俺は無言で右手を校舎の方に向けた。昨日のように邪魔する気もないし、「さっさと校舎に行ってください」と言うだけだ。二日続けて邪魔するほど暇じゃないよ。
「おや、建謝様、おはようございます」
そうこうしていると助手席から出てきた室地さんが挨拶をしてきた。俺も頭を下げる。
「すみません、ちょっと編集とか聞きたいので、もう一回相談させてもらっていいですか?」
「おぉ、構いませんとも。それでは放課後、昨日のスタジオまで来てください」
またスタジオにいるのか。
女神チャンネルの方の動画を撮るんだろうな。
まあ、この人は女神の執事役だから仕方がない。
「ありがとうございます。では、放課後に行きますので」
約束にこぎつけたところで、校舎に向かおうとしたら、突然「きゃーー!」という女神の悲鳴が聞こえた。
「えっ?」
振り返ると、女神がひっくり返っている。
慌てて従者達が駆け寄っているが、女神はすぐに立ち上がった。
そのまま俺の方にとてつもない殺気めいた視線を向けてきくる。
いや、今のは俺じゃないわ! 単なる自爆だろ?
自分の失敗まで俺のせいにするのはやめてくれよなぁ。
女神はさすがに衆人の目の前で俺に八つ当たりするのは自分に損だと思ったのだろう。
そのまま校舎へ入っていった。それを見届け、室地さんと従者達もリムジンに乗って出発した。
有人が「惜しかったなぁ」とか言いながら近づいてくる。
「もうちょっとでパンツが見えたのに……」
「そうかい、惜しかったな」
真面目に取り合っても仕方がない。
適当にいなすように答えるとすぐに有人も話を切り替えてきた。
「でも、おまえ、明上先輩を無視して執事の人と話していて、知り合いなのか?」
「あぁ。遠い親戚らしいんで」
「じゃあ、おまえからあの執事の人を通じて、明上先輩のことを色々聞けるってことか?」
「いや、興味ないから」
有人の女子情報へのこだわりは半端がない。女神のスリーサイズとかそういうものを聞いてくれとか言いかねない。
仮にそんなものを聞いたら、女神がマジギレしかねないし、室地さんから軽蔑されるかもしれない。女神のマジギレはともかく、室地さん達の協力を得られないのはキツい。
「そんなことより、さっさと校舎に入ろうぜ」
俺は有人を促して、教室へと向かった。
ただ、心の中は動画をどうやればいいかということで一杯だ。
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