第7話 元賢者、動画作成の方法を聞く
放課後、指定されたスタジオを訪ねた。
そこにいるのは、執事と従者4人だ。
女神は家の都合で来られないらしい。
金持ちっぽいので、何かしらの都合があるのかもしれないが、あの女神のことだから、「面倒くさい」とか「忘れた」という理由で来ていない可能性も普通にある。
まあ、いればいたで、うるさい。
とりあえず動画配信の方法だけ分かればいいから、別にいいか。
執事は結構親切な人で色々教えてくれた。
動画自体は携帯電話でも撮影できるものだが、時間が長くなると容量が大きくなるから送るのが大変になる。いわゆるVtuberのような形式にすると編集が必要になるから尚更大変だ。
「そのためにはこの辺りのアプリがあればよろしいかと……」
気軽に示してくるが、一般的に使えそうなものは数万円もする。
高いな……。
転生した学生がポンと出せる金額ではない。
金がないことを正直に言うと、編集の仕方なども色々教えてはくれたが……
結構難しいな。
「1人でやるのは中々難しいでしょうな」
なるほど……。
そして、当然だが、執事も従者もそこまで協力はしてくれないだろう。
と、思ったが、そうでもないようだ。
「いや、しかし、お嬢様がボーイフレンドを連れてくるのは初めてでして、感無量でございます」
そう言って、執事はハンカチで目頭を押さえる。
ボーイフレンド?
女神は俺を下僕くらいにしか見ていなさそうな雰囲気があるんだが……
ただ、元女神だから、俺がどうこうではなく、そもそも「人間自体が格下」と思っているのかもしれない。そうなると誰とも付き合わない、という話になる。
女神本人はそれで良いかもしれないが、お嬢様として転生した以上、周辺はお嬢様らしい交際も求めるものだろう。
そういうのはやらなさそうだよな~、自分勝手だから。
執事にとっては「こいつの相談に乗りなさい」なんて女神が言う時点で実は結構な進展なのかもしれない。俺自身をどう評価しているのかは分からないが、男子生徒を呼んでくるということで大進展、なのかもしれないな。
ただ、俺が女神のボーイフレンドっていうのは、俺的にはないな~。
何度も言うけれど、女神は女神だけに外見的な部分は最高なんだけど、内面がなぁ……。色々まずすぎる。
恋愛無しの関係ならいいんだろうけれど、それもどうだって感じだし、な。
「我々も協力しますぞ」
考えている間に、女神の執事と従者というより親衛隊? は盛り上がっている。
恐らく女神にとっても想定外だろうが、俺は、彼らにとってはお嬢様初のボーイフレンド、結構良い待遇のようだ。
快く協力を申し出てくれたが、俺は即答は避ける。
「あ、うん。ちょっと考えて、本当に動画を作るのなら考えてみます」
俺が動画を作るとなると、それは魔法のものとなる。
が、彼らに「魔法の動画を作る」と言っても、俺の正気を疑われるだけだろう。
この問題は誰かに協力を求める以上、どうしてもついてくる問題だ。
唯一の例外は俺の前世を知っている女神だが、あれに頼めば「はあ? 何であんたに協力しないといけないのよ、このタコ」とか言ってくるに違いない。
どのような形で魔法の動画を作るのか。
昨晩からの課題はまだ解決していない。
相談相手もいないし、中々難しい。
ただ、前世でもそれほど相談相手はいなかった。
前世で行動を共にしていた勇者パーティーの連中も女神に負けず劣らずロクでもない奴ばかりだった。
勇者イサムは勇敢というより蛮勇がウリ、話し合い無用ですぐに機関銃ぶっ放す存在だった。
竜騎士タツナと聖女セイコは揃って、自分がルールという騎士道と神の道を教えていた。
仮にこの三人がいても、女神と違う意味で頭が痛い。
結局のところ、自分で考えて解決するしかない。
こういうストレスが、神を白くしたり、抜け毛になったりするんだろうな……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます