第3話 屋上での気づき

「おい、セイジ」

 有人が声をかけてきた。


「おまえ、明上愛美あきがみ めがみさんと知り合いなのか?」

「明上愛美って言うの?」

 明上で、しかも愛美かよ。

 どれだけ女神を強調する名前なんだ。

 まあ、俺の名前もあまり人のことは言えないが。そういう名前になっているのかな。


 ミジンコやアリンコに転生させられたイサミやキシ・タツナも、人間に戻れれば”そのまんま”な名前になるんだろうか?


「知らずに声をかけられたのかよ?」

 有人の顔には明らかな妬みがある。

 いや、有人だけではない。周りの男子共が「あんな美人に声をかけられて」とやっかみに満ちた視線を向けている。


 いやいやいや、見た目は最高かもしれないが、性格は最悪だぞ!

 しかも、自分の世界をあっさり滅ぼされて懲罰転生食らっている無能女神だぞ!

 と、声を大にして言いたいが、そんなことを言っても、俺が馬鹿にされるだけなので言わない。

「……何か、他人のそら似だったみたいだよ」

 そう答えて、この場の男子共のヘイトを回避することにした。


 女神こと明上愛美は一年年上らしい。

 一年なんてものじゃないだろう!

 俺も前世で70だったが、女神は前世では数千歳は行っているぞ! 何、歳を誤魔化しているんだ!

 って、急に悪寒がしてきたから、これ以上考えるのはやめることにするが。

 元女神だから、人の考えを多少読むくらいはできるかもしれない。マジで殺されかねない。

 黒い髪に戻ったのに、殺されるのは嫌だ。


 教室の話題も、明上愛美のことばかりだ。

 そのついでに、俺も話題になる。「あんな釣り合わない奴が」、「冴えないのに声をかけられた」と散々な扱いだが。



 学校が終わると、有人から「一緒に帰ろうぜ」と誘われたが、断って帰るふりをして屋上に行った。

 誰もいないことを確認して、携帯で女神からもらったカードを読み込んでみる。


 家でやればいいだろ、って?

 家には小学五年の妹がいるんだ。

 あの女神のことだから、ひょっとしたらエロ系の内容かもしれないからな。

 そんなもの見つかった日には「兄ちゃんが女の裸を見ている」とか言い出して、家の中の立場がなくなるかもしれん。

 これでも家では真面目で通っているんだ。


 話は戻る。

 タイトル……『明上愛美の女神の部屋』だとぉ!?

 どれだけ自意識過剰なんだ、あの馬鹿女神は。

 危惧していたようなエロいものではなかった。

 どんなものを配信しているかと思えば、正直、たいしたものではない。

 スイーツを食べるところとか、ゲームしているところとか、そんなものだ。

 まあ、スイーツを食べる時には妙に唇をアップにしていたり、ゲームするのにそんな服着るのか、というような妙に体の線を強調するような服を着ていたりしているが。


 たいしたことではないが、それを見映えの良い美女がやっているので、ファンも多いらしい。『本当に女神です!』とかコメントして投げ銭している連中もいる。

 まあ、実際にあんな性格でなければ、俺もそれなりに「おー」とか「うわー」と感心していたかもしれない。


 登録者は2万か。

 始めたのは3か月くらい前のようだ。

 ということは、女神も最近になるまで知らなかったんじゃないのか?

 年齢差を考えれば、俺のことを馬鹿とか言えないだろう。まあ、教えてもらわなければ来年になっても俺は気づかなかっただろうけれど。というより、半分くらいどうでもよくなっているし。


 しかし、いいよなぁ。

 見た目が良いし、物凄い金持ちっぽいし。

 元が女神というだけで優遇してもらって。

「あーあ、俺もせめて魔法でも使えたらなぁ……昔みたいにファイアーボールって詠唱して炎の玉でも出てくれたら……」


 ボウッ!


「……えっ?」

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