第2話 転生元賢者、女神と再会する2
「お嬢様、どうぞ」
執事の指示で、他の従者達が車から降りてきた。
たちまち学校への入り口に赤いカーペットが敷き詰められている。お嬢様専用のカーペットのようだ。
いいトコというより、とんでもないところのお嬢様なんじゃないのか?
すごい女がいるものだな~。
と、感心しながらぼんやり眺めていると、何故かお嬢様の姿が大きくなる。
そう、俺の目の前に来るかのように。
って、あれ?
目の前にいるぞ。
「久しぶりね、建謝セイジ」
「えぇっ?」
お嬢様が口を開いた。
何で、俺のことを知っているの?
戸惑っていると、相手の顔にも困惑が浮かぶ。小声で尋ねてきた。
「あんた、私のことを覚えていないの?」
「覚えて?」
いや、こんな美人と会ったことがないぞ。
「あんた、以前は大賢者だったでしょ?」
小声でつぶやかれて、ハッとなった。
「……あ、もしかして、女神?」
「そうよ」
言い当てると、何故か途端にドヤ顔される。
そうか、女神も一緒に転生するような話になっていたが、それがこのお嬢様なわけか。
なるほど、確かに女神としてはダメだったが容姿その他は凄かったもの、な。
ある意味納得だ。
というか、ちょっとムカつくぞ。
同じ罪で転生させられたのに、俺は普通の学生なのに、こちらはとんでもないお嬢様だ。
この扱いの差は何なんだ、元女神だからかもしれないが不公平じゃないのか?
ぼやいていても仕方がない。
女神は一体、何の用で俺に声をかけたんだ?
「……何か用ですか?」
「何か用ですか、じゃないわよ。あんた、元の世界に戻るために何もしていないっぽいじゃない?」
「……いや、何もしていないというか」
何をすればいいんだよ、って話なんだが?
周りに人が集まってきた。
とてつもない上流そうなお嬢様っぽい女神と、普通っぽい俺が向かい合って話をしているから、「一体何なんだ?」ということなんだろう。
執事が「見世物ではありませんぞ」と規制線を張って野次馬を退けているが、かえって関心集めそうな気がするんだが……
後々、有人はじめとした追及が凄いことになりそうだ。
「大主神が言っていたでしょ。この世界の多くの人に、ファンタジアを知ってもらい、助けてもらえと」
「それはもちろん覚えていますよ。カンパがどうこうという話も」
「つ・ま・り」
女神の顔がアップになる。
そんなに近づくな。ドキドキするじゃないか。
「この世界で色々な配信サービスがあるでしょ? そういうものを使って、ファンタジアを助けてもらうわけよ」
「あ、そういう話なんですか……」
なるほど。
動画配信サービスだと投げ銭機能がある。
多くの人に動画を見てもらって、カンパを募るというわけか。
カンパを募ればファンタジアが復活する原理がさっぱり分からんが、とりあえず元の世界に戻るにはそうするしかない、ということだな。
「今、初めて知ったみたいな顔をしているわね? 全然分からなかったの? それでも元賢者?」
言いたい放題だ。
ムカつく。美人なだけにムカつく。
しかも反論できないのが更に悔しい。
こちらが反論しないとますます言いたい放題になってきた。
「元賢者だから何か策でもあるのかと思っていたら、そもそもやり方から知らなかったとは、見た目からしてヲタクだし、どうしようもないわね」
うるさいわい。
「とりあえず、これがアタシの配信チャンネルのコードよ。これを見て参考にしなさい。アタシのように超絶美人でもなく、運動神経もなさそうで、おまけに賢者でもないとなるとお先真っ暗そうだけど、ゲーム配信とかヲタクなチャンネルでも作れば意外と好評になるかもしれないし、せいぜい頑張ることね」
そう言って、コードが入ったカードを投げ渡すと、女神はカーペットの上を歩いて学校へと入っていった。女神が通り過ぎたところから、カーペットが丸められて、校舎に入るとそのまま回収していった。
これから毎日、あの女が登下校する度に、こんな光景が繰り広げられるのだろうか。
それはそれとして散々言われた俺のムカムカはおさまらない。
本当にムカつく、あれでも本当に女神なのか?
あんな女神のいる世界、復活させなくてもいいんじゃないか?
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