プロローグ3・賢者と女神はギリギリセーフ?

 勇者と魔王、聖女と竜騎士はそれぞれミジンコ、アリンコに転生するという罰を受けることになった。


 次は儂の番だ。


「だ、大主神様……」


 この調子だと儂も処罰を受けるかもしれないが、儂は冷静に落ち着いていたし、世界を滅ぼすようなことはしていない。

 何とか、この功績を評価してもらわないと。


「儂は世界の危機を察知して、攻撃を控えておりました。どうかお目こぼしを」


『馬鹿者!』


「ひぇぇっ!?」


 許してくれそうになかった。世界は甘くない。


『貴様も大賢者という身であれば、世界の危機を察知して仲間を止めるべきであった! 確かに貴様は攻撃をしていないが、職務怠慢は甚だしい。そして!』


 大主神の矛先は女神にも向かったようだ。


 女神は恥も外聞もなく土下座している。布きれと揺れる胸のあたりがチラチラしているのが気になる。


『貴様は、ファンタジア大陸の女神という世界を守る最後の砦でありながら、おめおめと勇者と魔王に世界を破壊させおって! 全く持って言語道断だ!』


「申し訳ございませんでした! どうか、どうかお慈悲を!」


『貴様達はチャリンコに転生だ!』


「チャリンコ!?」


 って、何だ、それは?

 でも、女神が必死に頭を下げているところを見ると、楽しいものではなさそうだな。


「どうか、どうかもう一度だけチャンスを!」


 女神、本当に恥も外聞もなくへこへこしている。

 とはいえ、儂も同じような罪なのだし、謝罪したほうがいいか。

 ここまで恐れられるチャリンコへの転生は避けたいし。


「大主神様、儂も勇者たちを止められず反省しております! ですので、どうかチャリンコだけは……」


 ひたすら謝り続ける。


『……ふうむ、まあ、確かに勇者と魔王が酷すぎて、おまえ達が多少なりとも被害者の立場であったことは否めない……』


 おっ、流れが変わったぞ?


 チャンスと見た儂と女神は更に土下座攻勢を仕掛ける。


「「どうか、もう一度だけチャンスを……!」」


 大主神はしばらく考えている。


『……良いだろう。お前達にはチャンスをくれてやろう。滅ぼしてしまった世界は、異世界の多くの者がカンパすることで再生できるという。これから異世界に転生させてやる故、その世界に住む考えられる限り多くの者からカンパを募るのだ。カンパが十分に満たされれば、ファンタジア大陸は再生するであろう』


 イセカイ?

 カンパ?

 何のことだか分からないが、女神はホッと溜息をついている。

 ということは、チャリンコよりはマシなのだろう。


「あ、ありがとうございます!」


『では、さっさと転生せい!』


 大主神が叫ぶと、光が眩しくなり、儂は意識を失った。

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元大賢者は現代日本で魔法を配信する 川野遥 @kawanohate

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