第8話 おとしもの
友達4人で買い物に行った時のこと。僕とリサと、男女の友達がいました。
リサと女友達は、やたらとカフェに行きたがります。ランチも食べたのにカフェに2回も行って、歩く度に胃の上の方から、ちゃぽちゃぽと音がしていました。
それなのに夕方になると、またカフェに行くとか言い出したのですが、そのカフェは坂の上にあるカフェで。僕と男友達は、苦しみながら登っていました。すると。
「きゃー!」という女性の甲高い悲鳴が聞こえました。
声がしたのは道路の反対側で、ベビーカーがお母さんの手を離れて、坂道を下って行きます。
僕が走り出そうとした瞬間、リサが「行って!」と叫びました。
ものすごく一瞬のことですが「え? リサは行かないの?」と思いました。でも、そんなことよりも今はベビーカーです。
車は走っていなかったので、道路を走って横断しました。そして坂の上を見ると、僕たち以外にも気付いた人がいたようで、年配の女性2人が、ベビーカーを止めていました。
その後、お母さんも追いついて「ありがとうございました」と半泣きでお礼を言っています。
「おぉ、よかったね」
「きつい坂だったら、ヤバかったよね」
そんなことを話しながら戻ると、リサは「あぁもう、早く行かないからー」と、なんだか不機嫌でした。
いや、赤ちゃんが無事だったんだから、それでいいだろ。
するとリサが、ぼそりと言いました。
「助けたら、謝礼がもらえたかも知れないのに」
しーん、となりました。
……キミって、生まれる時に『良心』をどこかに落っことしてきた?
さぁ、探しに行っておいで。
〈つづく〉
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