第7話

壮真が家に帰ると母親が鮭のムニエルを作っていた。

「お帰りなさい。ちゃんと送った?」

「大丈夫。ちゃんと家まで送ったよ」

母親は料理から洗い物迄一人で出来るが、買い物だけはお手伝いを頼んでいる。高橋陽子と言う40代の女性である。

だが今日は子供が熱を出していたため、母親は1人で買い物に出掛けたのだ。

スーパーでは店員に必要な物を言って

カゴに入れてもらったが、一人で帰っていた所が工事中で杖が窪みに嵌ってしまったのだ。

「母さん、サラダ作ろうか」

手伝う時は必ず声を掛ける。

「ありがとう。お願いね」

調味料も使ったら必ず元の場所に置く。

そうしないと母親が分からなくなるからだ。

全ての調味料に点字シールが貼ってあって触ったら分かるようになっている。

電磁調理器なのでボタンの場所も覚えている。

後は野菜や肉などの匂いや焼けている音、長年の感覚などで判断していた。

壮真は母親から少し離れた位置で野菜サラダを作り始めた。

食事の位置も同じ場所に置く。

もう毎日の事なので感覚で分かっていた。

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