第4話

1人の女性が窪みに杖が嵌り、抜け出せずに困っていた。

だが誰もその道を通らないらしく、辺りはシーンとしている。

其処へ1人の女子高生が通りかかった。

「どうしました?」

女子高生は女性に声を掛けた。

「窪みに杖が嵌ってしまって…… 」

見れば白い杖が道の窪みに嵌っている。

「ああ、これですね。ちょっと待って下さい」

女子高生は窪みから杖を引き抜いた。

「はい。抜けましたよ」

女の人は杖を受け取ろうとするが、手が定まらない。

あ、見えないんだ。

女子高生はそう思った。

女性の手に杖を持たせる。

よく見れば女性は転んだらしく、買い物の袋も散らばっている。

「まず、これがバックです」

女子高生は女性にバックを持たせた。

そして買い物袋は自分が持った。

「家、何処ですか?一緒に行きますので」

「そこまでしてもらうわけには」

「足、怪我しています。私の腕に掴まって下さい。行きますよ」

「ありがとうございます。あの、お名前は?」

「白鳥優希と言います」

「白鳥さん……私は宮田祐里と言います。住所は曙町の423番地です」


自宅近く迄歩いて行くと、1人の少年が走って来た。

「母さん!」

「壮真?壮真なの?」

少年は走って来ると、女性の手を握った。

「壮真だよ。母さん、一体どうしたの?遅いから探しに行く所だったんだ」

息子さんかな?

何処かで聞いた事ある声だけど。

「杖が窪みに入って困っていたら、この方が助けてくれたの」

「そうだったんだ。あの……ありがとう。母は目が見えなくて。宮田壮真と言います」

宮田壮真!

あの学年人気No. 1の⁈

「私は1年A組の白鳥優希と言います」

「同じ青楓なんだね」

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