第19話 王族からの感謝


「よし、それじゃあ儀式を始めるとしようか」


 ユニコーンを撃破し、求めていた素材を全て集め終えた翌日。


 グレッグたちは黒い本に閉じ込められたリリアム王女を救うべく、王都バイデルにある王宮を訪れていた。


 今グレッグたちがいるのは玉座の間。

 これまでに集めた素材を並べ、そこに魔法陣のようなものを描き、フラムが儀式を行っているところである。


「おお、これは……」


 魔法陣の中心に置かれた黒い本からまばゆい光が立ち込め、ラインズ王が声を漏らす。


 その様子を見ていたグレッグやノノ、そして王宮の兵士や侍女たちも一様に息を呑み、状況を見守っていた。


 そして――。


「まあ! お外に出られましたわ!」

「おお、リリアムよ! 無事であったか!」


 光が収まると、そこに立っていた銀髪の少女が声を上げ、ラインズ王が駆け寄る。


 リリアムが閉じ込められていた本から解放されたのだと知ると、周りにいた者たちが歓声を上げることとなった。


「おおー、すっげーです。ほんとに本から人が出てきたです」

「良かった。これで何とか一件落着かな」


 フラムの儀式を見守っていたノノやグレッグも、リリアムが解放されたことに安堵の息を漏らす。


 当のリリアムは相変わらずどこか緊張感のない様子で、歓声に沸く兵や侍女たちに笑顔で手を振っていて、一方でラインズ王は自分の娘の無事に胸を撫で下ろしていた。


「フラム様、ありがとうございました。おかげで本の中から戻って来ることができましたわ」

「フフフ。私はちょこっと手助けをしただけさ。今回の功労者は間違いなくあそこにいるグレッグ君たちだよ」

「ええ。もちろん、お礼を言わねばなりませんね」


 フラムがグレッグの方を指差すと、リリアムはパタパタと駆け寄ってくる。

 そして律儀に頭を下げた後で、グレッグの手を取ってにこやかに微笑んだ。


「グレッグ様、本当にありがとうございました!」

「ああいえ、その、お体は大丈夫ですか?」

「ええ、それはもう。この通りピンピンとしております。本当に、感謝しかありませんわ」

「それは何よりです。でも、今回の件が上手くいったのは色んな人が協力してくれたおかげですよ」

「フフフ。そうやって謙遜されるところも素敵ですわね」


 そう言ってリリアムはグレッグに向けて感謝の念を向ける。


 ノノとはまた違った意味で一直線だなと、グレッグは少し押され気味だった。


 と、今度はラインズ王が近くまで寄ってきて頭を下げる。


「グレッグ殿。儂からも礼を言わせてくれ。此度の一件、貴殿の活躍がなければ解決できないことであった。王として……いや、一人の親として最大限の感謝を」

「ありがとうございます、ラインズ王。でも、さっきも言った通り俺一人だけの力では完遂できませんでした」

「はっは。グレッグ殿は殊勝な人物のようだな」

「本当ですわね、お父様。でも、素晴らしいお人柄ですわ」

「いえ、本当に謙遜なんてしていないんです。今回はフラム様ももちろんですし、ノノも……この子もたくさん頑張ってくれましたから」

「こんちはです、王さま、王女さま」


 グレッグがノノを紹介すると、リリアムが一瞬きょとんとした表情を浮かべる。


 そして、その表情はすぐに満面の笑みへと変わった。


「まあ! まあまあまあっ! なんて可愛らしい子ですの~!」

「むぎゅ……」


 結果、ノノは思いっきり抱きしめられることとなる。


「ノノさんと言うんですのね! 可愛らしいお耳にモフモフのお尻尾! これは犯罪的ですわ~!」

「ぐ、ぐるじいです……」


 その光景を見たラインズ王はやれやれと頭を抱えていて、フラムはその気持ちはとてもよく分かるというように頷いていて。


 そうして、リリアムの帰還を皆が喜び、その夜には今回の一件に関わった者を含めて宴が開かれることとなった。


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