第10話 大賢者フラム、ふたたび
「やあグレッグ君。お邪魔しているよ」
「え、フラム様……?」
キングトータスの討伐から数日が経ったある日のこと。
グレッグが日課の素材収集……ならぬドラゴン討伐から戻ると、道具屋の店内に大賢者フラム・リレーヌがいた。
フラムはノノと話をしていたらしく、カウンターの前からひらひらとグレッグに向けて手を振っている。
「どうされたんです? 先日もいらしていたのに」
「フッフッフ。いやなに、愛しのノノ君と語らいに、ね。ついでにあわよくば私の住処に連れて帰ろうかと」
「危なかったです。ご主人がもう少し戻ってくるの遅かったら、ノノお持ち帰りされちゃうところだったです」
「はぁ……。フラム様、ノノを可愛がりたくなる気持ちは分かりますが、ほどほどにしてくださいね」
「ふむふむ。ウチの子に手を出すな、というやつかな?」
からかってくるフラムにまたも溜息をつくグレッグ。
その様子を見たフラムは魔女帽子の奥でケラケラと笑っていたが、やがて話題を切り替えるかのように咳払いを挟んだ。
「して、グレッグ君。例の件、ノノ君から聞いたよ? もう残りの素材が2種になったそうじゃないか」
「やっぱりその件でしたか。そうですね、あと少しで依頼の素材は全部集まりそうです」
「まさかここまで早いとは恐れ入ったよ。グレッグ君がストックしている素材である程度は揃うと思っていたけど、正直ふた月はかかるかと。いやー偉い偉い」
「大賢者さま、なぜかめっちゃドヤ顔です」
「ハッハッハ! 任せた身としては鼻高々だからねぇ! これはラインズ王もお喜びになるだろう」
フラムはそう言って高らかに笑う。
この人が来るといつも閑散としている道具屋が一気に賑やかになるなと、グレッグは苦笑した。
「そういえばフラム様、そろそろ教えてくれてもいいんじゃないですか?」
「教えるって何をだい? 私のスリーサイズならグレッグ君には以前教えたと思うんだが……」
「いえ、全然違います。そもそも聞いたことないです」
「おや、そうだったかな? 何なら今度実際にその身で確かめてみても――」
「俺が聞きたいのは、ラインズ王がどうしてこんな依頼を出しているのかってことです。フラム様はご存知なんですよね?」
「やれやれ、つれないねぇ」
まったくこの人はと、グレッグは頭を掻きながらまたも嘆息する。
そしてフラムは今度こそ真面目に答えようとして、少しだけ真剣な表情を浮かべた。
「この依頼が出された理由、だったね。私から話しても良いんだが、そうだな……。グレッグ君、この後少し時間はあるかな?」
「え? ええ、特に予定はありませんが」
「なら話が早い。それじゃあちょっと私と一緒に出かけるとしよう」
「出かけるって、どこにです?」
「王都バイデルに、さ」
「え……?」
唐突に出たフラムの言葉に、グレッグは目を見開く。
「ご主人、王都に行くです? いいなーです」
「いやいやノノ、ここから王都って馬車でも一日以上かかるんだぞ。フラム様、さすがにそんなに遠出となると……」
「ハーッハッハ! 大丈夫大丈夫。私を誰だと思ってるんだい? この身に
「うーん。最近俺の中では本当にこんな人が大賢者でいいんだろうかと怪しくなってきているんですが」
「それはノノもすっごく思うです」
「君たち、それはどういう意味だい……」
グレッグとノノの辛辣な言葉にがくりと肩を落とすフラム。
日頃の言動から出た身の錆なのだが、それは今置いておくことにしてグレッグは話を戻した。
「ええと、何かいい移動手段があるってことですかね?」
「そういうことさ。まあ、1時間もあれば着いてしまうだろうね」
「それは凄いですね……。でも、どうして王都に?」
「依頼の理由が知りたいんだろう? なら、直接聞いた方が早いかなと思ってさ」
「直接って、まさか……」
グレッグが察するのを見て、フラムはニヤリと笑みを浮かべる。
そして、グレッグに対してフラムは言葉を続けた。
「うん。ラインズ国王に会いに行こう――」
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