第23話 成長の日々
「ファイアボール!」
まずは、強化版ではない通常のファイアボールを何度か放ち、少しずつだが着実にダメージを与えていく。
「ヒール」
続けて、ファイアボールで傷付けた『不死人形』にヒールを発動。
回復魔法によって本来の形に戻ろうとする魔力が働き、熱で焦げ付いた表面が徐々に元通りになった。
「よし、いい感じだな。あとはこれを繰り返していくか」
ファイアボールや瞬刃による攻撃と、ヒールによる再生。
そのサイクルをただひたすらに続けていく。
MPが切れかけたら、事前に購入したポーションを飲むことで対応。
値は張ったが、ダンジョンへ自由に挑戦できるようになればすぐ取り戻せる。
アレンには悪いが、持ち込んでいたお金を大胆に使わせてもらった。
こうして、俺の特訓の日々が始まった。
熟練度上げに注力する傍ら、それ以外の時間も決して無駄にはしない。
たとえば、放課後の1~2時間は鍛錬場に他のクラスメイトが集まるため、違う場所に移動して別の特訓を行うことにした。
まずは、魔導図書館に籠って魔導書を読み込んでいく。
「やっぱり今あるスキルだけじゃ、強敵相手には戦えないからな……」
ページをめくりながら、俺はこの世界におけるスキルの習得方法を思い返す。
最も一般的なのは、ジョブレベルが上がった際に得られるジョブスキル。
しかしジョブレベルを上げるには、魔物を倒して経験値を得る必要があるため、現状では上げる手段がない。
次に、スキルオーブを使用することで習得可能なエクストラスキル。
このスキルオーブはダンジョンなどで手に入れることができるのだが……今の俺にはまだ手が届かないし、幾つか懸念事項も存在するためこちらも後回し。
そして最後に、時間がかかる代わりに最も確実な方法として、魔導書を読み込んだり、型の特訓を繰り返すことで、新たなスキルを習得できる。
アレンの持つファイアボールや瞬刃も、そうして手に入れたものだろう。
こちらはジョブに関連のないものだろうと、最低限の適性さえあれば習得できるため俺にはうってつけだ。
実際に『ダンアカ』では、『不死人形』相手のスキル熟練度上げの他、新しいスキルを獲得するための設備として魔導図書館や道場が存在していた。
ただ知っての通り、本職以外の人間がスキルを発動した場合、その効果は著しく減少してしまう。
そのためスキルを獲得したとしても無駄に終わることが多く、進んで活用することはなかったが……
アレンとして生きる以上、ジョブスキル以外で攻撃用の手段は幾つも必要になる。
学んで損をするということはないだろう。
放課後の魔導書勉強に加え、早朝の時間も有効活用する。
この時間帯も放課後ほどではないが、『不死人形』を使った鍛錬を行うクラスメイトがいるため、別メニューを組んだ。
基礎体力の向上を目的とした走り込みや、筋力トレーニングである。
一見地味な鍛錬だが、これが案外馬鹿にならない。
日に日に体が軽くなり、魔力の扱いやすさも増していくのを実感できた。
それだけスケジュールは埋めつくされ、体力も魔力も限界を迎えそうになるが……
それが鍛錬を中断する理由にはならない。
「ゲームと違って、
そうして特訓を重ね――あっという間に二週間が経過した。
◇◆◇
「ふぅ、もうこんな時間か」
夜の鍛錬を終える時間であることを確認し、俺は小さくそう呟く。
この二週間、全力で鍛錬に身を投じた。
早朝は基礎的なトレーニングを行い、昼間はアカデミーの講義を受けつつ、ユイナを始めとした一部のモブクラスメイトと多少の交流。
放課後は魔導書を読み新スキル習得を目指し、そこから夜遅くまで『不死人形』相手の熟練度上げ。
それだけ努力した成果はというと――
「ステータスオープン」
――――――――――――――――――――
アレン・クロード
性別:男性
年齢:15歳
ジョブ:【ヒーラー】
ジョブレベル:2
レベル:21
HP:1798/1610(+188)
MP:562/490(+72)
攻撃力:213(+35)
防御力:175(+22)
速 度:202(+31)
知 力:288(+42)
器 用:180(+25)
幸 運:202(+29)
ジョブスキル:ヒールLV6、ディスペルLV1
汎用スキル:ファイアボールLV3、ウォーターアローLV1、
――――――――――――――――――――
見ての通り、如実に表れていた。
ヒールはLV5からLV6へと上昇。
ファイアボールに至ってはLV1からLV3まで成長し、瞬刃もLV2に。
さらには新たな汎用スキルとして、水属性の初級魔法であるウォーターアローを獲得することができ、基礎パラメータも大幅に向上していた。
前回、バフォールを倒してレベルアップした時に比べたら少なく見えるかもしれないが、あの時は一気に10以上も上昇するという異例中の異例。
これでも、ダンジョン攻略なしで得られる成果としては――いや、仮にダンジョン攻略をしていたとしても、二週間で得られる成果としては十分以上だった。
「ん~、やりきったな」
そんなステータスを見ながら、俺は達成感とともに伸びをする。
ガシャッ
「……ん?」
その時、突如として鍛錬場の入口付近から物音が聞こえた気がした。
念のため外に出て周囲を見渡すも、どこにも人影は存在しない。
「気のせいか……?」
いないということは、そういうことなんだろう。
少し引っかかるところはあるが――
「それより、明日はとうとうダンジョン実習だな」
『ダンアカ』のプロローグ最終パートであり重要なイベントだが、俺にとってはそれだけじゃない。
あのダンジョンには隠しアイテムが存在し、俺はそれを何としてでも手に入れたいと考えていた。
そんな風に明日へと思いを馳せながら、俺は寮に戻るのだった。
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