第32話
「は? 人工衛星?」
「そうそう、カメラ壊れて使えないの多いって言ってたでしょ? あと放棄された宇宙ステーションがあるって昔習ったんだけど、……あれ、動かせない?」
「人工衛星も宇宙ステーションも、設計図によると墓場軌道に乗せるためのロケットエンジンを積んでるはずだけど……、ちゃんと動くかは知らないわよ? 一番新しいのでも100年以上前のだからね? あんたそれ分かってる?」
「分かってるって。……フェリなら、動かせる?」
「……不可能じゃない。けど、確証はないわ」
「充分。いくつくらいあるの?」
「民間のから軍事衛星まで全部合わせると、500は超えるくらいね。作りかけのスペースコロニーとか、乗組員が全員死んだ宇宙ステーションとか――、動かせそうなのを全部合わせたら、700くらいかしら」
「……壊しすぎよ」
「仕方ないでしょ。人工衛星なんて元は2、30年おきに交換する予定で打ち上げられてるのを、100年以上、物によっては200年くらい使ってんだから。もう、ちゃんと生きてるのより壊れてるやつのが多いのよ。次の100年のこと考えるだけで頭痛いわ。それに宇宙ステーションなんて、地上からの物資供給が前提なの。それが止まったら全員死んで、ただぷかぷか浮かんでるだけ」
「そう。……んー、とりあえずあと二日で全部動かせるようにして。ついでに落下軌道のシミュレーターもお願いね」
「…………無理って言ったら?」
「ただでさえ仕事に追われて死にそうな情報科に、統合本部からすべての仕事を中断してこの作業に集中するよう命令が行くと思うわ」
「……あんたに強権持たせた奴ぶん殴りたくなったわ」
「よろしくね、親友。一緒に人類を守りましょう」
「はいはい、中佐サマ」
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