第2話
『うわぁあああああああ!!!!』
『クソ! クソ! クソッッ!!』
『死ぃねぇえええええっ!!!!』
無線機が受信する生き残りの音声は、一人、また一人と減っていく。
ダララララと繋がる銃声。ドゴン、ドゴンと重い銃声、そして――
「――辿り着いたのは、」
たった100人足らずの部隊は、70m超の巨大フラウ――
だが、敵は
まるで、戦車と随伴歩兵のようだ。
「俺、一人か」
抜き身の刀を手に、男は呟く。
ひゅんと振りかぶると、刀身にべっとり塗られたフラウの体液がびちゃりと飛び散った。
正面に聳える――まるで山か何かのように巨大なソイツは、俺に気付いているのか、気付いていないのか。
少なくとも、周辺から撃たれている大口径のライフル弾には気付いているだろうが、足元に立つ小さな存在には見向きもしない。
足が――無数に生えている赤子のような巨大な足が、一歩踏み出され――
「――――ッ!!」
振るった。
刀は、まるで豆腐でも切るかのように肉を切り裂いた。
数拍遅れ、切断面から青緑色の体液が飛び散った。異常な放射線量に、脳にアラートが鳴り響く。
「……太いな」
切断面はすぐに粘菌によって結びつき、あっという間に修復された。
刀身は63センチ。それに対し、もっとも細い脚部すら、直径2メートルをゆうに超える。
一振りでは、絶対に届かない厚みだ。
『アグレッサー……』
『あとは任せたッ!!』
『――先に逝く、あちらで待ってるぞアグレッサー!』
仲間たちが、一人ずつ減っていく。
ギリギリまで
仲間を助けるため、あえて
一人、また一人と減っていく声は、ここが死地であるということを、嫌というほど教えてくれる。
「――――はっ」
だが、男は笑っていた。
敵は強大。ライフル弾を何万発直撃させても殺せない、無尽蔵の耐久力を誇るばけものだ。
「こっち見ろよ、クソ野郎」
口が、勝手に動く。
きっと、生き残りはこの声を聞いているのだろう。
普段の冷たい、誰も寄せ付けない男の声とは、到底思えない、
「俺を、――見ろッ!!!!」
――楽しそうな、その声を。
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