第28話

『増えてきたね』

「だね。撃ち漏らし多いなぁ」


 ファルケとは違い、シェリーはもう誰かが入って来ても、姿も隠さず備品を漁り続けていた。

 あの少年だけが生き残ったわけではない。他にも何人も生き残りが降りてきたのだ。

 彼らは皆自分の棚から銃や装備を回収し、上階に戻っていく。時折途中で倒れ動かなくなる者も居たが、誰も死体になった者には視線を向けない。


『外見だけは同じように作れたけど、中身はまだ未完成ってとこかな。これじゃ、生身なだけで機械と変わらない。むしろ肉は脆いから機械以下かな? ここの管理者何考えてるんだろ』

「管理者って、司みたいな?」

『あー、流石にそうぽんぽこ俺みたいな仮想体作れるとは思えないけど……』


 あまりの状況に理解が追いつかず壁にもたれて動けなくなっているファルケは、二人の会話を黙って聞いていた。

 そして、少しだけ冷静になった頭は先程の会話に違和感を覚える。


(仮想体ってのが何かは分からないけど、人間を作るよりツカサを作る方が難しいって言ってるように聞こえたわね……)


 ファルケの認識では、グレムリンはいくらでも量産されるものだ。製造工場から湧いて出てくるグレムリンの姿を何度も見たことのあるファルケは、グレムリンは簡単に量産出来るものだと考えていた。――だが、司の言葉をそのまま信用するなら、どうやらそうではないらしい。


(人間は、そんな簡単に作れるの……?)


 ファルケの思考は間違っている。

 当然、無機物でしかないグレムリンは有機物である人間より容易に量産出来る。ナノマテリアルを使えば、新宿で司が自作出来たほどだ。

 だが、人間を作るのはそう容易なことではない。から調べ、再現するという方向性で一歩ずつ理解を進めていく他にない。

 その結果を出力しているのが、この製造工場である。


 ファルケは、司と他のグレムリンの違いがまだ理解出来ないでいた。人間のような思考を持つ友好的なグレムリンとしか考えていないのだ。

 しかし実際は、物質体しか持たないグレムリンと、仮想体しか持たない司は全く別の存在である。

 無機物によって作られるグレムリンの物質体は、人体と比べると随分単純である。人間の脳を模した思考パターンを持つ司にとっても、比較にはならない。


(…………え?)


 何人も、何人もの子供達が部屋に入ってくる。シェリーとファルケのことなど見えていないかのように自分の銃を手に取り、戻っていく。

 それまで黙って見送っていたファルケは、信じられないものを見てしまった。


「ケイリー……?」


 ファルケはそう呟くと、ごしごしと目を擦った。見間違いだと、そう信じたくて。

 けれど、何度見てもそのグレムリンは、姿

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