第7話 初デート。
アルバムを整理していたら、あおいと初めて撮ったプリクラが出て来た。2人ともまだ制服を着ている。
これ、たしか、あおいに告白した日のだよな。あおいは、満面の笑みでピースをしている。
「あおい、美少女すぎだろ」
いま、見返しても本当に可愛い。もし、今、あおいと瓜二つの女子高生に誘われたら、俺は、ふらふらーとついていってしまいそうだ。
まいも似ているけれど、こうして見比べると、少し違う。って、姉妹を女性として比べているとか、どんびきされそうだな。
まぁ、内心だから……って、もしかして、今のあおいには、俺の内心もお見通しなのだろうか。
そうそう。このプリクラの時は、まだ告白してなかった。たしか……。
高3の秋、あおいと初めて会った。
彼女は、誰もいない非常階段の夕方の窓辺にいて外を見ていた。
俺には彼女が泣いているように見えた。
黄昏でオレンジ色に染まる彼女があまりに美しくて、俺は一目惚れしてしまった。
それで思わず、声をかけてしまったのだ。いま思えば、あれが人生で最初で最後のナンパだったのだろう。
「きみ、一年だよね? こんなとこでどうしたの?」
「あっ。先輩。すみません。なんでもないんです」
あおいは、階段を降りていった。
それから、校内であおいを見かける度に声をかけた。声をかける口実はなんでも良かった。
あおいはそっけなかったが、おれは諦めなかった。
それから数ヶ月後のある時、たまたま駅前であおいと出会った。その時は急だったし、そろそろ声をかける口実に事欠いていたので、おれはあおいに近づくと、手をあげたまま固まってしまった。
すると、あおいの方から話かけてくれた。
首を傾げて、右手の人差し指を顎先につけている。
「先輩。今日は話しかけてくれないんですか?」
「あ、あの。急だったから」
あおいは口角をあげて、いたずらっ子のような顔をした。
「もしかして、いつも、なんて声をかけるか決めてくれてたんですか?」
「うん。被らないようにノートにメモしてる」
「あはは。かわいい。あ、先輩、ちょっと付き合ってくれませんか?」
後からわかったのだが、俺があおいに初めて出会った日、彼女は部活の先輩に振られて失恋したらしい。
そして、俺の親友が、毎日諦めずにアオイに話しかけている俺を見るにみかねて、あおいの友達伝いで、おれの好意を伝えてくれていたらしかった。
だから、この日会うまでに、あおいは俺の気持ちを知ってくれていて。
その日は、あおいの買い物に付き合って、別れ際にこういわれた。
「先輩、それで……告白はしてくれないんですか?」
「えっ。そんな急に言われても」
「そうなんだぁ。待ってたのになぁ。残念」
「え。んと。あの。おれとずっとずっと一緒にいてください」
「先輩……、それプロポーズみたいですよ?」
俺は急に猛烈に恥ずかしくなってしまって、頭を掻いた。
「え。いや、そんなつもりは。でも、そうとってもらっても構わない」
すると、あおいは真っ赤になった。
口に手を当てて、わかりやすく動揺していた。
「お母さんとお父さんに相談しないと。それと、子供はちゃんと卒業してからがいいし……」
「いや、子供の事って気が早くない?」
「えっ、そうかな。えっと、あの。……わたしでよければ、ずっとずっと一緒にいさせてください」
そして、駅のホームまで手を繋いで行った。
こうして俺は、人生初告白がプロポーズになってしまったのだった。
付き合い始めてからのあおいは、優しくて可愛くて、最高だった。付き合い出してすぐに、顔の可愛さは、実はオマケなのだと知った。
あおいと過ごせた10年ちょっとは、本当に幸せだった。最高すぎて、簡単に忘れられそうにない。
あおいはいつも正直で、おれには嘘をついたことがなかったけれど、最後に嘘をつかれちゃったな。
「あおい。ずっと一緒にいてくれるって言ったじゃん」
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