第三章 ヤンキー令嬢と強面公爵
3-1
(果たし合いだったとはいえ、
「お
ミーシャが
「え? ……まぁ、別に
「
興奮気味に近付いてきたミーシャに、何もなかったと伝えたものの、全然
(詳しく聞きたいって言われてもな……話せるのは果たし合いしたことだけだぞ? いき
なり
「……姉様には絶対
様子を
もちろんだと言わんばかりの力強い
「お相手があの
「しーっ! 声がでかいぞミーシャ!」
人差し指を口の前に持ってきながら、声の音量を落とすよう伝える。
三人の侍女は、私が同性の友人ではなく、公爵様と会っていたことを聞いて目を見開いていた。
「まさかお嬢様が公爵様とそんな展開に……でも、貴族男性が女性にご
「いや、喧嘩を売った相手に女も男も関係ない。これは私の負けなんだ……」
ミーシャ達には喧嘩のルールが理解できなかったようで、三人とも首を
「……でも、不思議ですね。公爵様はそもそもなぜお嬢様に喧嘩を売ったのでしょう?」
「それは私に
公爵様は、最初はビビらせるつもりで睨んだだけで、喧嘩を売る気まではなかったのだろう。けれども、社交界デビューしたての
「わざわざ誘いの手紙を送って、自分が負かしたお嬢様を観劇にまで誘ったりしますか?」
「確かに負けた、けどそれは今回の
「「握力勝負……」」
何だそれはという表情でこちらを見つめるドーラとレベッカの視線がいささか気になったものの、私は話を続けた。
「握力勝負だけじゃ、男が女に勝ったとは言えない、
「抹殺って……ただ睨まれただけでそこまでしますかね……?」
「だって冷酷と言われる公爵様だぞ?
「お嬢様、
ミーシャの
今後も
そもそもこのまま負け続けるのは、性格上絶対許せない。
「今度こそ、絶対
「観劇の勝ち負けって……?」
「そんなものはありませんよお嬢様」
「ドーラさんに同意です」
首を傾げたミーシャと、私の考えに首を
「いやあるさ。要するに私は、淑女として
「わかりました。お嬢様は公爵様と観劇に行かれるということですね。承知
「ドーラ……あぁ、
少し前までは否定的な様子かと思ったが、さすがドーラだ。付き合いが長いこともあって、私の考えを
他二人の侍女も、間はあったものの、力になると宣言してくれた。
(やっぱり話してみるもんだな! これなら相当心強いぞ!!)
翌日、公爵様の返事はすぐに届いた。
(私も楽しみにしています……勝者の
手紙を読み終えると、私はすぐに観劇の勉強を始めた。
ほとんど知識がないに等しかったので、クリスタ姉様に頼んで初歩的なことが
「それにしても
「……楽しんできます」
本当は果たし合いなんです、喧嘩を買ってしまったんです。そう正直に言うこともできないので、ごまかし続けた。侍女達は約束を守ってくれて、クリスタ姉様に話が知られることはなかった。
できることなら、クリスタ姉様にバレてしまう前に、果たし合いの決着をつけたいところだ。そのために、約束の日まで観劇の勉強に
公爵様と食事に行ってから三日が経過した。
今日も図書室で観劇に関する本を読んでいた。半分ほど読み進めると、本から視線を外して背もたれに思い切り寄りかかった。
「……
毎日本と向き合う日々に
想像していたよりも観劇に関して覚えることは多く、
(喧嘩してた日々の方がよっぽど楽だったな)
精神的に疲れてしまい、今日はこれ以上
「……たまには
本を閉じて元の場所に
「ティアラー! 走りに行こう!!」
ティアラというのは私の愛馬の名前だ。本当は「最強姫」という漢字でティアラと読むのだが、この世界には漢字がないので、読み仮名だけのティアラで登録されてしまった。立派な
私が大声を出すと、ヒヒーン! と負けないくらい大きな声が返って来た。
「ティアラ! 元気にしてたか?」
私はティアラの下に
「最近走れなくてごめんな。今日は遠くまでは行けないけど、いっぱい走ろう」
満面の
ティアラとは長い付き合いで、もう三年も共にしている。それだけ時間を重ねているからか、馬の言葉はわからなくてもティアラとは意思
「よし、行こう」
厩舎を出ると、私は
レリオーズ
「やっぱり、走るなら全速力だよな」
前世はバイクを乗り回していた私にとって、走りは命。大事にしていた愛車があり、
クリスタ姉様が乗馬の特訓をしている様子を見たことがあるが、それは非常に美しく、ゆったりとした動きだった。
(そういやそれもあって、クリスタ姉様との勝負は絶対勝てると
勝負に負けたことを、
思い返してみれば、私はクリスタ姉様を舐めていたのだ。お上品な乗馬には負けるわけがないと。しかしふたを開けてみれば、クリスタ姉様の実力は
とにかく、私はクリスタ姉様がきっかけで乗馬を知ることになった。
できる限り速く走れる馬を探していたところ、ティアラと運命の出会いを果たしたのだ。
ティアラがやって来た当初は相当な暴れ馬でみんな手を焼いていた。けれども、私はティアラの走りに
「気持ちいいな!!」
やっぱり乗馬は好きだ。
乗馬ができることは、貴族
「……なぁティアラ。もし私がレリオーズ侯爵家を出たら、ついて来てくれるか?」
「って、そんなこと言われても困るよな。さ、走ろう!」
息抜きをしにきたのだから、難しいことを考えるのは
その後も私は、気が済むまでティアラと草原を駆け
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます