第30話 悪魔の嘲笑と1/3の純情な感情
二人の一郎を
目の前の自分自身と向かい合った一郎は
一郎の
鏡の中に入らなければ、見た目や
しかし逆を言えば、『完璧』にコピーすることはできなくても、コピー自体は
自分の
ここはこの幽子とかいう
できるなら逃げ出すだけでなく、今後のことを考えて二人とも
なので、この陰陽師になんとしても自分が本物だと思わせなければならない。
鏡の悪魔は
「まずったぁ……まさか最後の最後にこんな手を取るなんて」
自らの
「私の
「そんなんで偽物が手を挙げるわけないだろ」
「偽物ってバレたら殺されるのに、はいって言うバカはいないんじゃないか?」
「うーん、この悪魔バカだしワンチャンいけると思ったんだけどなあ」
幽子が二人をチラリと見る。
二人の一郎の様子は何も変わらない。
「
幽子が
さて、どうしたものか?
「なあ幽子、
「あるにはあるんだけど、私それ使えないのよね。
「なら、ここはやっぱり
「まあ、定番をやるしかないでしょうね。ってことで二人の一郎くんに
「「175センチ55キロ!」」
「住んでいる
「「月120万!」」
「私と初めて出会った
「「四月の頭にあった
「好きな映画のジャンルは!?」
「「90年代アメリカンホラーとサメ!」」
「一番最初に私が
「「まだ
「わかっていたけど
幽子は
「二人とも、これで
「ああ」
「わかった」
本当にとっておきの最後の質問なのだろう。
この質問で
そう
「ずばり聞くけど一郎くん……私のことをどう思ってる?」
「好きだ!」
「それは、えーと…………」
二人のリアクションが別れた。
幽子は
投げ飛ばされた方の一郎は
「ぐあっ!」
「ようやく
幽子の
ポケットに
――
「
部屋の中の一郎は
「あなたは……そうね、大きくてかわいいクマさんの
術の発動が近いのだろう。
術符を持つ幽子の手の
「今だ! やれ! 幽子!」
「ええ、言われなくても」
――
幽子の手から術符が
輝く術符は一直線に――部屋の中にいた方の一郎を
「あ……? え……?」
術符によって
何が起こったのかわからないといった様子だ。
「な、何で俺を!? 偽物はあっちだろ!?」
「いいえ、偽物は間違いなくあなたよ。100%確信を持ってそう言えるわ」
「お、お前間違ってるぞ! 偽物はあっちの方だ! だって、だって俺はちゃんとお前に好きだって――!」
「本物の一郎くんが
「あ……」
偽物――鏡の悪魔は自分の
そうだ、そうだった。
この田中一郎とか言う男は、二人きりでこんなところに来てまでも、
言う
助かりたいという気持ちが前に出
「っていうか、あなた自分がミスったせいでバレたと思っているようだけど、ぶっちゃけ初めからどっちか偽物かなんて分かっていたからね、私」
本物の一郎にはロクが
なので、ロクとのリンクを
「じゃ、じゃあ何で
「そんなの、あなたがなりふり
じゃあ、自分がしていたことは全くの無駄だったのか。
最初から
鏡の悪魔の顔が、
それを見た幽子はこらえきれず
「あは! ふふ……あはははははははははは!」
この女……やはり最初に感じた通りだ。
自分よりもよっぽど悪魔だった。
「さようなら悪魔さん。かわいいクマさんになって自分の
「ああ……あああああぁぁぁぁぁぁぁっ!」
鏡の悪魔の
そして光が
大きなサイズの白クマ人形が。
「せーのっ、うりゃーっ!」
――ドゴッッ!
幽個は人形に
蹴飛ばされた人形は
『うげ、おげええ……』
人形から
何度も何度も。
ドンドンと。
『やめ、やめて……お願いです! やめてください!』
「何人も殺しておいてやめてはないでしょ? あなたのせいで
――痛みを感じられるだけありがたいと思いなさい。
――だってまだ死んでないんだから。
ゾッとするような冷たい
人形になった悪魔は
『ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…………』
「
全てが終わった後、幽子は一郎、ロクとともにクローゼットルームの
壁や
「なあ幽子、最初から俺が本物だってわかっていたならさ、あいつを騙して絶望を
きみに投げられた時、めっちゃ
「いくらなんでもあんなに
「そう、だけど……でも、思わず力が入っちゃったんだからしょうがないじゃない」
「何で?」
「だって……」
――だって一郎くん、好きって言ってくれなかったから……。
「……っ!」
「まだ言ってくれないんだって思ったら、思わず力が……ごめんなさい」
「あ、うん……そ、そういうことなら
この後、 二人は一言もしゃべらず
一郎は近いうちにちゃんと
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