第29話 もう一人の幽子
「いやー、
もちろん、現実世界の幽子はそんなことしてない。
「あら?
「そうしようとも思ったんだけど、さすがにここも
「一郎くんのお父様は買ったけど?」
「個人では使わないでしょ? 売りに出してもどうせ
「なるほど。で、どうやって出るつもり? ここには私がいるんだけど?」
「もちろん、あなたと入れ
鏡の中の幽子が
一歩、また一歩と
その一歩を
部屋の外から中の
「幽子が……二人!?」
「一郎くん、こいつは
「ドッペルゲンガーって、
「そう。ドッペルゲンガーの正体についてはパラレルワールドの自分や、幽体
「ドッペルゲンガーって見たら死ぬって言われているヤツだろ? スライムにしては
「ゲームのスライムはともかく、
「じゃあ、逃げた方がいいやつなんじゃ……?」
「こいつはスライムみたいなものだけど、スライムじゃないからその
「何という
「ちょっとちょっと、なーんか私に勝てるの
――ヒュゴッ!
ギロチンのようなその一撃を、本物の幽子は
しかし、
「う、ぐ……」
「幽子!」
「私があんたそのものだってこと
立ち上がろうとしている本物の幽子に偽物が迫る。
「自分自身に勝てる人間なんてそうそういない。あんたはここで自分自身に殺されるの……よっ!」
――バキッ!
偽物が本物を蹴り上げる。
本物は
そして全力のダブルハンマー。
本物が
「ぐ……」
「あーっはっは! あなたになった
偽物が頭を
ぐりぐりとそのまま足を動かす。
「そ……」
「そ? えー、何? 教えてくれるの? ありがとー♪」
「その前に私の質問に答えてくれる? あなたは今どんな気持ち?」
「もう最高♪ 弱い者イジメって最高の
「そう、気が合うわね。私も
――グシャッ!
突然、偽物の幽子の頭の半分が吹き飛んだ。
しかし偽物の幽子は元々が不定形な魔物が
床に
「な、ん、で……?」
「あ、しゃべれるんだ。ちょっと
「え、あ……?」
「あ、気づいちゃった? ブフッ! 今気づくとかおっそーい♪ そこの私は床ペロしてるんだから、こんなはっきりしゃべれるわけないでしょ、バーカ♪」
声のする方向が
声の
そこに三人目の幽子がいた。
「こ、このあんた……偽物!?」
「はい、正解。陰陽師が
「え? 三人目の幽子? 何がどうなってるんだ?」
「ごめんね一郎くん、
紙で分身を作り、それからずっと
「才能がある
大きな紙で等身大サイズの人形を作る必要があったとのこと。
「そ、そんな記憶はなかったぞ!」
「そりゃないわよ。だってあなたがコピーしたのって私の分身だし」
分身はあくまで分身。
本体の記憶までは
「自分自身を相手にするとかクソめんどくさいことになるの
ブンブンとその場で
風を切る音が
「鏡の中に引き篭ってる芋スナ
陰陽師用の教科書にも
「力の
「あ、あぁぁぁぁ…………」
「あ、ビビっちゃった? まあそうよね。あなたがコピーしたのって、あくまで私の分身だから、本物の私の二割ぐらいの強さだし。どうやったところで
「こ、こうなったら鏡の中に逃げ――」
「れるとでも思ってる? ロク!」
――ワンッ!
名前を呼ばれたロクはその場で飛び上がり、クローゼットルームの電気を
部屋の電気が追加され、月光の
魔方陣を
「あ、あう……」
「さーて、どうやって遊ぼうかなー? 元が不定形だからきっと
私の二割だし長く楽しめそう――と幽子。
これを聞いた時、鏡の悪魔は心の中で強く思った。
自分なんかより、この女の方がよっぽど悪魔だ。
「
――バキャアアァァァァッ!
――ドガァァァァッ!
持っていたバットでアッパースイング。
偽物の幽子は
くの字にたたまれた身体が鏡にぶちあたって
もう鏡の中に入れない。
「チェックメイト。これで終わり。一郎くん、もう入ってきても大丈夫よ」
「了解。じゃあさっさとガラスを片付けないとな。朝には帰るんだから」
「――ッ! 違う! 今のは私の声じゃない! まだ来ないで!」
「え?」
幽子の
散らばったガラスの破片、その中でも
次の瞬間、
光がおさまった後、そこには二人の一郎がいた。
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