第20話 父、襲来
「よう、田中。なんか眠そうだな」
「もしかして、誰かとイチャイチャして
「はっはっは! お持ち帰り率100%の
「あ、やっぱわかるか? なかなか寝させてくれなくてさぁ……」
――ピシッ
その場の空気に
「ま、またまたぁ!
「そ、そうだよ! お前に限ってそんなはずないよな!?」
「俺たちを
3人の友人が
信じたくない。
そんなはずない。
たとえ俺たちが裏切っても、こいつだけは裏切らないはずだ。
そんな考えに支配されていた彼らに、
「あ、一郎くんおはよ。
「あ、
「ゆ、幽子!? 一郎!?」
「ミ、ミスコン女王の
「しかも頑張っただと!? 一体何を頑張ったんだ!?」
「何って、それは……」
「ヒ・ミ・ツ♪」
「「「裏切り者オオオオォォォォ!」」」
一郎の友人たちは、泣きながら教室から出て行った。
「あいつら……もう授業始まるのに。欠席
「いいんじゃない? いつまでも同じネタで一郎くんをからかい続ける
――ワンッ。
「お前と遊んでいただけなのにな、ロク」
――ワウワウッ。
一郎が
ロクは
大型犬が教室に
この教室が
しかし、一郎もロクも、一切の注目を浴びることなく
むしろ彼の隣に座った幽子のほうが目立っているくらいだ。
教室に犬がいるというのに誰も気にする
それもそのはず。
なぜならロクは犬ではなく
「ロク、
「本当は
「一郎くん、体調大丈夫なの? 普通の人が幽霊に取り憑かれるのって
「うーん、いつもよりちょっとだけ腹が減るくらいで特に問題はないかな?」
「ロクのほうも
――ハッハッハッハッ。
幽子が
「そう言えば気になっていたんだけど、ロクのお
幽霊なので、フンの
しかし、その他のことがわからない。
この世に存在する以上エネルギー
「食事とかトリミングとかどうすんの?」
「食事は直接食べられないから、外に出て
「なるほど……その
「リンクしないわ」
「それじゃあ何か食っても楽しくないんじゃ?」
「うん、だから直接食べれるように、帰ったら
「わかった。
「
「通販やってるのか……きみんとこの業界」
「
知らなかった。
自分たちが知らないだけで、結構生活に根ざした商売をしているのか、
「霊的な
「ふーん」
自分が知らなかったことはこんなにもあるのか。
一郎は
「あ、
「ロク、しばらく
――ワンッ。
ロクは本当に
こっちの言うことを完全に理解しているようで、授業の邪魔は
それどころか、
もしかしたら人間の言葉だけでなく、
――キーン、コーン、
――カーン、コーン。
「あー、やっと終わったー♪ 一郎くん、この後どうする?」
「授業がないから帰るよ。幽子は?」
「んー、私も帰ろうかな? 早いところロクの祭壇作ってあげたいし」
「悪いな。何か特別な材料とか必要か?」
「ううん、そんなことないわ。そこらのホームセンターとかで買えるもので作れるから」
「そっか。じゃあこれから買いに行こうぜ。もちろん金は俺が出すよ」
「ううん、私も半分出すわ。飼おうって言ったのは私だしね」
「別に気にしなくていいのに。ボンボンの貯金
「一郎くんこそ、実家が陰陽師やってる私の貯金舐めないでよ? だてに一年で四回も引っ
「でもそれ全部ワケあり
「そうですけど何か?」
「いえ、何も……」
まあ、悪い霊しか
「それじゃあサクッと買い物を済ませましょうか。お昼だし、ついでに何か食べて行きましょ」
午後の予定を話しながら、一郎たちは大学を出た。
途中、腹ごしらえのためにラーメンを食べ、
ロクの
途中、自転車に乗った幼女が「ママー、おっきなわんわんいる」と言って、母親を
あの子は「見える」子なのだろう。
これから先、その手のことで何か困ることがないよう
「ただいまー」
「おう、おかえり」
「え!?」
部屋に帰ると、誰もいないはずの部屋から人の声がした。
一郎は一瞬、また
彼のではない
ロクも警戒する様子がないし、とりあえずは
「父さん!? シンガポールにいるんじゃ……?」
「仕事が落ち着いたから帰ってきた。家に帰る前にお前の顔でも見ていこうと思ってな」
「そうか……お
「うむ、しかし一郎、お前
「えーと、53キロくらいだったかな?」
「この一年で何キロ痩せたんだ? お前の中にいた成人男性はどこに行った?」
はっはっは、と笑いながら
不健康な
「ところで一郎、痩せたのはいいのだが……その
「ああ、まあね……父さんの考えている通りだよ。けど、その件に関してはもう
「本当か? ならいいが……俺や母さんを心配させまいとしてそう言ってるんじゃないよな?」
「ああ、違う。安心してくれ。このマンション自体、多分もう悪い霊は出ないと思うし、
「その理由、
「もちろんだ。今お茶を出すよ」
「一郎くーん、来たわよー。あれ? 私の知らない靴がある」
来客がいると理解した幽子は、いったん
来客を一切気にすることなく一郎の部屋に上がる。
彼女か。
「おや? 一郎、この美しいお
「いや、違う。彼女は――」
「初めまして、一郎くんのお父様ですね? 物部幽子と申します。一郎くんとはただならぬお付き合いをさせてもらっています♪」
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