第18話 イッヌ
「近くの
二人は
二人の様子からただごとではないと
「一郎くん、この子大丈夫かな……?」
「わからない。ただ、ひどく
ゴミ袋の中に入れられ、
もう何日も何も食べていなかったのかもしれない。
「そうだ! 私たち牛乳持ってるじゃん! これあげたら――」
「ダメだ。健康な犬なら問題ないけど、ここまで衰弱していたら
ましてや牛乳は冷えている。
冷たい牛乳は腹を下しやすい。
結局、一郎たちは何もできないままペット病院へ
「ありえないほど
犬発見の
発見までの経緯を聞いた獣医師は、怒りを
「そう、ですか……かわいそうに…………」
「先生、この子は助かりますか!?」
「……残念ですが、もう一時間も持たないでしょう」
「そんな! なんとかならないんですか!?」
「……申し訳ない」
「……そう、ですか」
「ここまでの状態になってしまうと、もうどうしようも……せめて、最後の瞬間まで手を
「………………はい」
言われるまでもなく二人は実行に
温かかった犬の手が、
「………………」
「……ご
獣医師の声が、犬の
二人が見つけたこの犬は、たった今生命活動を停止した。
「……この犬、どうしますか?」
「どうしますか……とは?」
「……この犬のことを考えると、こういうことは非常に言いたくないのですが、ペット用の
「それって……ゴミと同じってこと!?
「……
「……分かりました。この犬は俺が
一郎は大きめのダンボールを一つもらい、犬の死体をその中に入れた。
さすがに動物の死体を
何も言わずに付き合ってくれる幽子の存在が一郎には
「その子、どうするの?」
「明日ペット用の葬儀をするよ。それなりの金はかかるだろうけど、貯金を切り
たまたま
「…………誰が、こんな酷いことをしたんだろうね」
「誰でもいい……ただ、こんなことをする奴が同じ人間だという事実が
何の罪もない自分よりも弱い存在へのイジメ、
もしも犯人が目の前にいたら、この犬と同じような目に合わせてやりたい。
「飼えなくなったから捨てる、飽きたから捨てる、面白いから虐待する――命を何だと思っているんだ……クソが!」
命に対して責任が持てないなら、命の
その方がお互いにとって幸せだ。
「幽子、ちょっと近所のコンビニで花をあるだけ買ってきてくれないか? 金は出すから」
「任せて。あ、そのお金は私が出すわ」
一郎の部屋に戻った二人は、小さなテーブルをセットし、その上に犬の入ったダンボールを乗せた。
幽子の買ってきた花でテーブルを
こうして
せめて、生まれ変わったら幸せになってもらいたい。
そう
「一郎くん、ところで今日の
「サボった」
まあ、たまにはいいだろう。
「だろうと思った。まあ、それどころじゃないもんね。後でノート持ってくるわ」
「ああ、悪いな」
これでようやく
飲み会からの犬発見、犬の葬儀とジェットコースターのような
「ふわぁ……」
ようやく終わったと
幽子は後で来ると言っていたけど、まあいい。少しだけ寝よう。
一郎はゆっくりと目を閉じた。
……
…………
………………
――ペロペロ
(うん?)
――ペロペロペロ
(何だ……俺、顔を舐められてる? 何に?)
――ペロペロペロペロ
でも、それにしては顔が濡れている気がしない。
何が起こっているんだ?
一郎はゆっくりと目を開ける。
――ワンッ。
犬がいた。
「うおっ!?」
予想もしない存在に、一郎はびっくりして声を上げた。
「一郎くん、ノート持ってきたわよ。何か声が聞こえたけどどうかした……あれ?」
「ゆ、幽子! これ……!」
一郎は犬を指さした。
いや、犬というよりむしろ……イッヌ?
「あ、この犬昨日の!」」
「えぇっ!?」
「どうしたの、きみ? どうして
――ワンッ。
「ふむふむ、なるほど。そういうことね」
「わかるのか!?」
「何となくは。私たちってこういう動物霊を相手取ることもあるから」
「で、何て言ってるんだ?」
「えーとね、
――ワンッ。
どうやら正解らしい。
「一郎くん、飼おうよこの犬」
こうして一郎はこの幽霊犬と出会い、今に
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます