第12話 物部幽子という女
一郎は投げ飛ばしたソファーの
「物部、色々とありがとうな。変なことに
「いえいえ、巻き込まれたのは私自身の
「で、聞きたいんだけどさ……きみ
「うちの大学のミスコン女王」
「それで
「思わないわよさすがに(笑)。聞きたいのはコレのことでしょ?」
一郎はその問いに
「これは
「何でそんなものをきみが使えるんだ? もしかしてきみは
「ううん、違うわ。確かに私の実家は江戸の
「え? ああいうのって免許制なの!?」
「そうよ? じゃなきゃトラブルの元になっちゃうもん」
除霊は
免許である
免許制を自分たち一般人が知らないのは、知識のない悪質な
「日本の免許は陰陽科っていう、
普通の人には見えないし感じない、科学では説明できないものを取り
そんな
「でもね、そんな超難しい試験だけど、時々10代で合格しちゃうような天才もいるのもまた事実なのよ。私には絶対無理だわ……」
「あんなすごい力を持っているのにか?」
「田中くんから見ればそうだろうけど、私なんてできる人から見たら中の下くらいの実力しかないわよ。プロ陰陽師の中には
「そうなのか?」
「そうよ。そこの人たちに
「そんなに!?」
その人たちは本当に同じ人間なのだろうか?
「特に
「も、もしかしてその人、手からビームとか出せたりしないか? あと、
「何でちょっとワクワクしてるの!?」
それは男のロマンだからだ。
日本人の男の子なら、誰もが一度はやっただろう。
高いところから飛んで舞〇術とか。
「まあ、できるでしょうね。っていうか、そのくらいなら多分一級免許持ってる人なら全員……」
「マジでか!?」
そんな、何ということだ……!
人間は手からビームを出したり、空を飛んだりできたのか……!
「それ、
「しない。そもそもこの手の力って生まれついての
「……そっか」
「何かメチャクチャがっかりしてない!? 何で!?」
「そうか……俺にはできないのか」
「ちなみに私も無理。ぶっちゃけ
「へえ、妹いるんだ」
「うん。今高校二年生で17歳。写真あるけど見る?」
せっかくなので見せてもらった。
神社の
「かわいい子でしょ?」
「うん」
「私に似て」
「確かにそうだけど自分で言うな」
「あはは♪ あ、ところで田中くんそろそろじゃないかな?」
「え? 何が?」
いったい何が『そろそろ』なのだろう?
「このマンションって、できた
「ああ、一部の部屋だけ」
「田中くんが取り
「ああ、そうだけど?」
「じゃあやっぱりそろそろでしょ」
「だから何がそろそろなんだ?」
「さっきの
――ドオオォォォン!
突然の
「地震!?」
「違うわ。空間そのものが揺れているの」
慌てる一郎とは
「マンション全体のゴーストハウス化、多分あいつが
モグモグと口を動かしながら説明する幽子。
「そんな風に生きている人たちに
「……
「ブーッ! もう、どんだけ良い人なのよ田中くんは! 仲間を呼んで復讐に来るに決まってるでしょ」
――ドオオォォォン!
再び部屋が大きく揺れた。
あまりの振動に、一郎はソファーから転がり落ちた。
「自分勝手な理由でここに住み着き、田中くんを取り殺そうとか思ってたヤツよ? 反省なんてするわけないじゃない」
悪霊は
「悪霊になるような性格のやつが、あれだけボコられた上に
「お、おいっ!? 冷静に言っているけどそれってっまずいんじゃ……」
――ドオオォォォン!
三度の
空間が大きく揺れて
真っ黒な光――物理的にあり得ないものが中から
『マ、タ、ア、ッ、タ、ナ……』
「ええ、そうね。さっきぶり。ところであなた、二度と戻ってくるなって言われなかった?」
『ハ、ハ、ハ……! ソ、ン、ナ、ヤ、ク、ソ、ク、シ、タ、オ、ボ、エ、ナ、イ!』
「でしょうね。あんた脳みそなさそうだもん。田中くん」
「え?」
幽子は突然一郎に近づくと、
――え? え? え?
――この
「私の術力を流し込んだ。これでしばらくの間はあいつはきみに
「あ、ああ……わかったよ」
言われた通りに移動する。
先ほどの5倍はあろうかという巨大で
肩、胸、腹、足――全身に人の顔が張り付き
「仲間を取り込んで
『ナ、カ、マ? タ、ダ、ノ、ト、リ、マ、キ』
「ふーん、そんなこと言うんだ。あんた絶対生きてるとき嫌われてたでしょ? ムーブがネット小説に出てくる
『ダ、マ、レ!』
幽霊が
全身に張り付いた顔が
『コ、ン、ド、ハ、ユ、ダ、ン、シ、ナ、イ……! オ、マ、エ、コ、ロ、ス……!』
「どうぞ? できるものなら」
幽子は残っていたビールを一気に煽り、空き缶を幽霊に向かって投げた。
「陰陽八家が序列八位――
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