第55話 好敵手(ライバル)
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
試合が始まるとリリアが勢いよくジャックに迫っていく。
リリアの勢いに反してジャックはその場から動かない。
今までの相手とは違い、ジャックはリリアの攻撃を全て受け切るつもりのようだ。
「(もしかしたらジャックはリリアの弱点がわかっているのかもしれない)」
あの落ち着きを払った様子は自信の裏返しに他ならない。
今までリリアが戦った相手のように力任せで倒そうとせず、冷静に攻撃を受けようとしている。
『ガキッ!!』
「ぐっ!?」
木剣同士が激しくぶつかりあう音と共にジャックのうめき声が聞こえる。
あまりに強い衝撃を受けて驚いたのか、ジャックの顔が歪んだ。
「(ジャックもリリアの馬鹿力に驚いているようだな)」
今までの対戦相手が乱戦を選ぶのはリリアのあの攻撃を受け切れないからだ。
現にジャック同様受けの姿勢で挑んだ相手もいたが、あの鋭くて重いリリアの1撃に面を食らって戦い方を変えている。
それほどリリアの攻撃は鋭くて重かった。
「この子の一太刀はこんなに重いのか!?」
敵が面食らっている間にもリリアは2撃、3撃と攻撃を加えていく。
その光景は外野の人達から見れば、リリアが相手を追い詰めているように見えた。
「(油断するなよ、リリア。相手は少しずつお前の剣筋を見極めてるぞ)」
1撃1撃リリアの攻撃を受けながら、徐々にリズムを掴んでいる。
ただリリアもそのことはわかっているはずだ。大振りをせずコンパクトに振ることを心がけ、相手に対して隙を作らないようにしていた。
「はぁっ!!」
「ぐっ!?」
ジャックがリリアの攻撃をいなすとすぐさま攻撃を仕掛ける。
しかしリリアはすかさずその攻撃を受ける。今までコンパクトに振っていたのが功を奏して、攻撃を受けることが出来た。
「(これは今まで見てきた模擬戦の中で1番いい戦いになりそうだな)」
本能で戦うリリア対理性的に戦うジャック。段々と試合が面白くなってきた。
気付けば俺だけでなく、試合をしていない殆どの生徒がこの戦いを見ている。
その光景を見れば、いかにこの戦いが白熱しているかわかるだろう。
「中々やるじゃないか!」
「そっちこそ!!」
正直この戦いはどちらが勝つかわからないな。
2人の力は互角なので、少しでもミスをした方が負ける。
「やあっ!!」
「ふっ!」
息つく暇もなくリリアは攻め続けるが、それを相手はうまくいなし始めた。
単調に攻めすぎたせいで、攻撃のタイミングを完全に読まれたみたいだ。
「そこだ!!」
「あっ!?」
リリアが木剣を振り降ろした一瞬のスキを狙って、ジャックがリリアの木剣を弾き飛ばした。
弾き飛ばした木剣は空高く舞い上がり、ステージの外へと落下する。
その瞬間この試合の勝者が決定した。
「勝負あり!! 勝者ジャック・ライオッツ!!」
審判をしていたロスタス先生が勝者の名前を告げるとリリアはその場でうなだれてしまう。
一方のジャックはリリアに勝ったことがよほど嬉しかったのか、その場で雄たけびをあげた。
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