第58話 レイラの相談

 リリアとノエルが喧嘩をしてから数日が経った。

 あの事件以降、リリアとノエルの間には微妙な雰囲気が漂っている。



「あれから俺の部屋で夕食を取ることもなくなったし、あの2人は大丈夫かな?」



 リリアとノエルが喧嘩をしてから、俺の部屋で夕食を食べる習慣がなくなった。

 俺としてはあの3人がいなくなって気楽に過ごさせてもらっているのだが、この現状に納得していない奴が1人だけいた。



「グマ!」


「どうしたんだよ、リエラ?」


「グマグマ!」


「リリア達は今日も来ないのかだって!? あんな状態なのに、2人仲良く俺の部屋に来れるわけがないだろう」


「グマ!?」



 もしかしたらリリア達のことを1番心配しているのはリエラなのかもしれない。

 彼女達が来なくなってから、毎日のように俺の服の袖を掴み彼女達の部屋に行こうと提案してくる。



「こんなにもリエラがリリア達の夕食を楽しみにしているとは思わなかった」



 リリア達が来なくなっ以降、俺はリエラと一緒に外で夕食を取っている。

 その度にリエラはリリア達の手料理が恋しいのか、ご飯を食べる前にいつもため息ばかりついていた。



「(もしかしたらリリア達の手料理が1番好きなのはリエラなのかもしれないな)」



 リリア達が作った夕食を美味しそうに食べていたので間違いないだろう。

 今もリエラはリリア達が恋しいのか、ため息ばかりついていた。

 



『コンコン!』


「はい! どちら様ですか?」


「入るよ」


「レイラ!? どうしたんだよ、こんな所に1人で来て!?」


「ちょっとクリスに相談があって‥‥‥」


「相談? 俺に?」


「うん」



 そう言うとレイラは俺の目の前に置いてあった椅子に腰かける。

 レイラが椅子に腰かけると同時にリエラが彼女の膝の上に乗った。



「リエラ!」


「グマ!」


「ふふっ! そういえばこうしてリエラと話すのは久しぶりだね」


「グマグマ!」


「おかしいな。いつも俺が授業をする時、話している気がしたんだけど‥‥‥?」


「授業中はクリスがリエラとよく話している所は見かけるけど、リエラは私達の側に寄ってこないよ」


「確かに。言われてみればそうだな」



 よくよく考えてみればリリアとノエルが喧嘩して以降、授業中にリエラがレイラ達の側にいる所を見たことがない。

 もしかしたらリエラもリリア達に気を使って距離を取っているのかもしれない。

 この子グマが最近ため息が多い理由はそれのような気がした。



「グマ!」


「こうしてリエラのことを撫でるのも久しぶりだね」


「グマ~~~!」



 レイラに頭を撫でられて気持ちよさそうだな。

 俺と2人でいる時とは違い、顔がとろけている。



「それでレイラ、俺に相談ってなんだ?」


「リリアとノエルのことって言えばわかる?」


「わかるよ。最近あの2人の様子はどうなんだ?」


「別に何もないよ。教室にいる時と同じで、必要最低限の会話しかしない」



 やっぱりあの事件以降、2人は殆ど会話をしていないのか。

 朝のホームルームを見ていてもレイラ越しにしか会話をしてないので、必死に間を取り持とうとしているレイラが困ってるのがわかる。



「本当は私が何かしないといけないんだけど、何をしていいかわからなくて‥‥‥‥‥」


「だから俺に相談をしにきたわけか」


「うん」



 レイラがこんなに人の事で悩むなんて珍しいな。

 昔は全く人のことなんて考えなかったのに。それだけレイラも成長しているってことだな。



「2人の仲を取り持つために、私が出来ることはない?」


「レイラに出来ることか‥‥‥」


「うん!」


「正直に言わせてもらうと、何もないな」


「ないの!?」


「うん! レイラには気の毒だけど、あの2人はしばらく放って置いた方がいい」



 下手に俺達が介入すると2人の関係が余計にこじれてしまうような気がする。

 形式的ではあるけど一応仲直りも済ませているし、今はお互いに距離感を掴みかねているだけだ。

 時間が経てば2人の距離は自然と戻るだろう。



「本当にそれでいいの!?」


「たぶんな。それが一番早い解決方法だと思う」


「わかった。クリスが言うならそうする」



 俺の選択が正しいものかわからないけどその方がいい気がした。

 ホームルームで2人の様子を見ているけど、お互いがお互いを意識しすぎて動けないように見える。

 なので何かきっかけがあれば、すぐに仲直り出来ると思った。



「(あの様子を見るとたぶんノエルの方から、リリアに寄り添うと思うんだよな)」



 普段は平然としているように見えるけど、ノエルは責任感が人一倍強い。

 自分がリリアに対して余計なことを言った責任を感じてるはずなので、彼女の方から歩み寄るに違いない。



「グマ!」


「リエラも早くリリア達のご飯を食べたいよね」


「そういうレイラもだろう?」


「うん!」



 こうやって自分の気持ちをはっきりという所がレイラらしい。

 純粋無垢とはこういう子のことを言うのだろう。この学園は腹の底が見えない真っ黒な人間が多いので、余計にそう感じる。



「悩みは解決したか?」


「うん! クリス、ありがとう!」


「グマ!」


「もちろんリエラもね。ありがとう!」



 これでレイラの悩みも一応解決か。

 あとはリリアとノエルだけど、そのことは2人に任せよう。



「せっかくだから一緒に夕食を食べに行こう」


「いいの?」


「あぁ。リエラもその方が喜ぶだろう」



 レイラに抱き閉まられているリエラも幸せそうな表情を浮かべていた。

 それを見ればリエラがどれだけレイラ達と一緒に居たかったわかるだろう。

 リエラはリエラでレイラ達に甘えたかったんだと思う。



「それじゃあ行こうか!」


「うん!」



 それから俺はレイラとリエラを連れて街へと赴き夕食を取った。


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明けましておめでとうございます!

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