第34話 教師の役目
「遅いな‥‥‥リリア達は一体何をしているんだろう?」
校外実習のゴール地点である山頂から、俺はリリア達の姿を探す。
既に殆どの生徒達が目的地に到着する中、彼女達だけがここにいなかった。
「そろそろ校外実習も終わるのに。一体どうしたんだろう?」
今回リリア達が通る道は普段俺が走っている所とは違い、国の手でしっかりと整備されている。
なので地図をみながら進めば迷う事はないはずなんだけど、一体あの子達はどこへ行ったのだろう。
「おやおや? クリス先生が担当している生徒達の姿が見えないですが、どうしたんですか?」
「レイブン先生」
「Aクラスに所属する生徒達はもう帰ってきてるのに。それよりにレベルが高いクラスの生徒達は帰ってきてないようですね」
「そういうレイブン先生の生徒達も半数以上のパーティーが脱落しているじゃないですか」
「それはしょうがないだろう!! 私のクラスの生徒が通ったルートだけ、やたらとレッドベアーが出たんだからな!!」
レイブン先生がやたらとピリピリしているのはそれが原因だった。
今日この山に出現したレッドベアーはAクラスの生徒達が通るルートに数多く出現しており、その生徒達が無謀にもレッドベアーに挑んだ結果その殆どが脱落していた。
「何で他のクラスが通るルートには全然いないのに、私のクラスが通る所だけこんなにレッドベアーがいるんだ!! おかしいだろう!!」
この人のことは嫌いだけど、言っていることは何1つ間違ってないんだよな。
他のクラスの生徒達もレッドベアーの被害にあったけど、Aクラス程の被害は出ていない。
むしろ他のクラスの人達は予定のルートを外れてしまったせいでレッドベアーに遭遇しており、Aクラスの巻き添え事故にあったようなものだ。
Aクラスと他のクラスの間ではそれぐらい被害状況に差が出ていた。
「う~~~ん、なんだろうな。この違和感」
俺の勘違いかもしれないけど、何か作為的なものを感じるんだよな。
そもそもAクラスの生徒達が通るルートだけ、こんなにレッドベアが出現するのか? 普通に考えてそれはありえない。
「俺にはこのレッドベアーが人為的に配置されているようにしか見えないんだよな」
まるで誰かがAクラスの生徒を狙っているように見える。
Aクラスの生徒を試しているのか、それとも陥れようとしているのか。敵の目的がわからなかった。
「クリス!」
「アレン。どうしたんだ?」
「そろそろ校外実習を終わりにしないといけないから、残念ながらリリアちゃん達は脱落っていうことにしてもいい?」
「そうだな。さすがに来るのが遅すぎるし、そうするか」
こんなに時間が掛かってたら、その処置もやむ負えないと思う。
普段の授業だったらこの半分の時間で山を往復しているので、リリア達はきっと正規の道を外れてしまったに違いない。
「こんなあからさまに整備された道があるのに遭難をするのか」
普段から獣道ばかり走ってるから道を間違えたのかな?
そうだとしたら俺に責任があるので、リリア達に対して謝らないといけない。
「そしたら俺がリリア達を迎えに行ってくるか」
それがリリア達の担任である俺の役目だと思う。
あの子達が今どこにいるかわからないけど、ちゃんと見つけ出して学校に送り届けよう。
「ちょっとクリス!!」
「何だよ、フィーナ?」
「リリアちゃん達を探すって簡単に言うけど、この広大な山の中をどうやって探すのよ?」
「それはもちろん教室の中を雑巾がけするように、山の中を端から端まで移動して探すに決まってるじゃないか」
「何を言ってるの? 教室を掃除するのとわけが違うんだから、そんなことは不可能よ」
「余裕だろう。
「なっ、なんて無茶苦茶な脳筋理論なの!?」
「脳筋っていうな!! これでも俺は真剣に考えてるんだぞ!」
毎朝この山を走っているので、大体の地形はわかっている。
体を強化してない状態でも1時間ちょっとあれば登り降り出来るんだ。
魔法で体を強化すれば、短い時間で捜索は出来る。
「ちょっとアレン!! アレンからもこの脳筋に何か言ってやってよ!!」
「捜索方法がクリスらしくていいと思う! 僕は賛成だよ」
「もう! ここには常識人がいないの!?」
「その言葉、そっくりフィーナに返すよ」
今日はアレンが側にいたから大人しかったけど、お前だっていつもは俺が驚くような作戦を立案しているだろう。
アレンですら却下するような無謀な作戦を思いつくくせに。俺の作戦を否定してほしくない。
「そしたらクリス、リリアちゃん達のことをお願いね!」
「わかった。準備が出来次第、早速リリア達を探しに‥‥‥」
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「どうしたんだ!?」
「あっ、あそこにレッドベアーがいます!?」
「何!?」
とある生徒が指を指す方向を見ると山頂では見かけなかったレッドベアーがいる。
しかも体長が5m以上というかなりの大物だ。このまま放って置くと大変なことになる。
気づくと俺はアレンと共にレッドベアーに向けて駆け出していた。
「行くぞ、アレン!!」
「うん!」
生徒達の安全を守るために俺とアレンがレッドベアーへと向かっていく。
幸い相手はまだ俺とアレンの存在に気づいていない。
「(これならやれる!!)」
相手は俺達に気づいてないし、今なら一撃であの魔物を倒す事が出来る!!
俺がレッドベアーの側頭部に蹴りを入れようとした瞬間、聞き覚えのある声が俺の耳に届いた。
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