第28話 クリスの泣き所
「どうしたんだよ、3人共。まだ集合時間まで時間があるだろう」
「確かにまだ時間に余裕はありますわね」
「でもあたし達はお兄ちゃんと話したかったから早めに来たんだ」
「なるほど。そうだったのか」
「だからクリスお兄ちゃん、あたし達の相手をして♡」
「う~~~ん、そうだなぁ」
リリア達が俺に会いに来てくれたのは嬉しいけど、今の俺達の関係は教師と生徒という立場である。
ある程度距離感が離れてれば見過ごしてもらえるが、この距離感はまずい。
リリアとノエルは左右から俺の腕を掴みレイラは正面から抱き着き上目遣いで俺の事を見ている。
そしてその様子を見るフィーナは俺のことをゴミをみるような目で見ていた。
「ちょっとクリス、あんたまさか自分の教え子に手を出してないでしょうね?」
「馬鹿野郎!? 自分の学校の生徒に手を出すわけがないだろう!!」
「本当? こんな可愛い子達と一緒にいるんだから、1人ぐらいは手を付けてるんじゃないの?」
「フィーナは何を言ってるんだよ!? 冗談にしても笑えないぞ!?」
実際それっぽい関係になってるから否定し辛い。
毎日授業の後一緒に夕食を取る関係だと言ったら、フィーナは卒倒してしまうだろう。
ここは俺だけじゃなくてリリア達にもきっぱり否定してもらう必要がある。
「みんなも何か言ってくれよ。俺達は学校でいかがわしいような事をするふしだらな関係じゃないだろう?」
「そうだよ! あたし達はクリスお兄ちゃんとそういうことは一切していません!!」
「リリア!」
いつもはここぞとばかり自分が正妻だと主張するリリアが真っ先に俺との関係を否定してくれた。
フィーナに向かって毅然と立ち向かうリリアは凄く格好いい。教え子の成長に思わず涙が出そうになった。
「その話は本当なの?」
「はい! あたし達はクリスお兄ちゃんに手を出してほしいのに。お兄ちゃんは全く手を出してくれないんです!」
「おい!? 何を言ってるんだよ!?」
「リリアちゃんって言ったっけ? 貴方はクリスに手を出してほしいの?」
「はい! ここでは言えないようなことをたくさんしてほしいんですが、クリスお兄ちゃんはチキンなので中々あたしに手を出してくれないんです」
「リリアさんの言う通りですわ! こんな魅力的な女性が3人も側にいるのに、指1本触れませんの」
「クリスはへたれ」
「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!! お前達は余計なことを言うな!!!」
そんなことを言ったら余計にフィーナが誤解するだろう!!
みろ!! フィーナの顔を!! 端正な顔を引きつらせながら、俺のことを軽蔑するような目で見てる。
「クリス」
「何だ?」
「私、あとでこのことをアレンに報告するわ」
「ちょっ、待てよ!? フィーナ!?」
「止めても無駄よ。クリスが未成年に手を出してたって、はっきりと告げてあげる」
「だから待てって!? それは誤解だとさっきから言ってるだろう!!」
「誤解だったらどうして3人の美少女を両手に侍らせてるのよ!!」
「それは‥‥‥」
「言い訳をしない!!」
「別にいい訳なんてしてないよ」
「嘘をつかないで!! クリスがその子達に手を出した証拠として、正面にいる女の子が貴方に対して熱い視線を向けて‥‥‥ってレイラちゃん? もしかして、貴方はレイラちゃんなの!?」
「やっほー。フィーナ!」
「レイラちゃん、この泥棒猫と知り合いなの?」
「うん! あの人はフィーナ・アルファートと言って、確か教会の司祭?」
「司祭じゃなくて聖女よ。魔王を倒した事で、特別な役職が与えられたの」
「えっ!? フィーナって聖女になったの!?」
「そうよ!! って何で勇者パーティーの一員として魔王討伐任務に参加したクリスがこの中で1番驚いてるのよ!!」
「いやだってなぁ‥‥‥」
こんなにがさつで清楚さのかけらもない女性が聖女なんて誰も思わないだろう。
本来聖女とはもっとおしとやかで清廉潔白なイメージがある。
それに対してフィーナはその真逆の性格をしているので、驚くのも当たり前だ。
「聖女だからって何よ!! あたしの方がお兄ちゃんと付き合いが長いんだからね!!」
「そうですわ! 私の方が貴方よりもクリス君の良い所をいっぱい知っています!!」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! お前達はもう黙ってくれ!!!」
リリアとノエルが口を開けば開く程、フィーナへの誤解が深まっていく。
この悪循環は一体どうやったら解消されるんだ!!
「(このままではフィーナに無実の罪を着せられて、この学園をクビになってしまう!?)」
俺はフィーナの誤解を解くため、必死になって解決策を考える。
ただその解決策は中々見つからず時間だけが無駄に過ぎていった。
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ここまでご覧いただきありがとうございます
続きは明日の7時頃投稿しますので、お待ちください!
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