第25話 クリスの心配事

「校外学習ですか」


「そういえばそういうイベントもあったね」



 夕食を食べているの最中に今度行われる校外学習の話をリリア達に話したら、彼女達からそんな反応が帰ってきた。

 唯一何の反応も見せなかったレイラはというと俺の隣で美味しそうにご飯を食べている。

 彼女にとって今度行われる校外学習の話よりもノエルが作った料理を食べる方が大事なようだ。



「それで校外学習はどこで行われるんですの?」


「裏山だ」


「裏山?」


「そうだ。この学校にある裏山に3人で登ってもらう事になった」



 俺が神妙な面持ちで話しているのに、リリア達は淡白な反応しか返さない。

 それどころかこの話題がどうでもいいような感じで話を聞いている。



「リリア達はこの話題に興味がないの?」


「興味がないわけではないけど、ただ山登りをするだけでしょ?」


「そうだよ」


「それなら心配いらないと思うな」


「むしろクリス君が私達のことを心配しすぎな気がします」


「何!?」



 俺は彼女達のことを思って話してるのに。これでは俺が心配性の人みたいじゃないか!?

 むしろリリア達がそんなに平然としていられるかわからない。

 これから自分達が行う行事なのにも関わらず、ここまで無関心を貫ける理由がわからなかった。



「クリスお兄ちゃんは何が心配なの?」


「俺が唯一心配していることは山登りをしている時に3人が疲れ果てて途中棄権しないかだけだよ」


「その心配はいらないよ!」


「そうなの!?」


「そうですわよ。毎日私達のことを山頂まで走らせてるのはどこのどなたですか?」


「俺だな」



 当日歩く予定のルートとは違うけど、毎日あの3人を山頂まで登らせてるのは俺だ。

 しかも国が整備した道ではなく魔物達が作った道なき道を走っている為、普通の山登りで疲弊することはないだろう。



「それに今回の山登りって往復するわけじゃないんでしょ?」


「一応そういうことになっている」


「それなら私達は大丈夫ですわ!」


「本当か?」


「うん! だっていつもクリスお兄ちゃんが使ってる獣道じゃなくて、国が整備した道を歩いていいんでしょ? それなら楽勝だよ!」



 リリアとノエルの話を聞いてると俺が酷いやつみたいに聞こえる。

 今度からもう少しリリア達の指導を楽なものにしようとこの時誓った。



「一応言っておくと今回の登山は、通常の登山とは違う」


「何が違うんですか?」


「登山中に出現した魔物は自分達で退治しないといけないんだ」



 あの山には数多くの魔物が生息している。

 温厚なモンスターもいれば、レッドベアーのような好戦的なモンスターもいるので、そのモンスター達を倒して自力で頂上にたどり着かなければいけない。

 これは入学したばかりの1年生には難易度が高い物だと俺は思っていた。。



「だからリリア達には今度授業で鋼鉄製の剣の使い方を説明するよ」


「魔物狩りはしなくてもいいんですか?」


「それももちろんやる予定だ。だけどみんな何かしらの戦闘経験があるはずだから、そこはあんまり問題視していない」



 ノエルはエルフの町でそういう訓練は受けているはずだし、レイラもその辺の事は一通り習っているはずだ。

 唯一実戦経験のないリリアが心配だけど、彼女もサイロンの村の出身なので魔物狩りは手慣れていると思う。



「もしかして3人共、魔物狩りには自信がないの?」


「そんなことありませんわ! 魔物なんて私の手にかかれば一撃で倒せます!」


「あたしも大丈夫だよ! クリスお兄ちゃんの期待に応えられるように頑張るね」



 2人が自信を持ってそう言うなら大丈夫だろう。

 正直今回の校外学習はこの3人が組めば問題なくこなせる課題だと思っている。



「(たとえ不測の事態が起きてもレイラがいれば大丈夫なはずだ)」



 なんでも器用にこなせる彼女がいれば、どんな問題が起きても解決できる。

 特にこういった校外で行う行事だと戦闘経験豊富なレイラがいれば、大抵のことは何とかなると思っていた。



「(とりあえず明日の授業で剣を握らせて、校外学習直前に魔物が襲ってきた時の対策でもするか)」



 何回かモンスターと戦わせれば、この3人ならどんな問題でも解決できるだろう。

 レッドベアーみたいな凶悪な魔物が出てきたら対処するのは難しいと思うけど、他の魔物なら彼女達の敵ではない。



「リリア! おかわり!!」


「はいはい! 今おかわりを持ってきますね!」



 そんなことを頭の中で考えながら俺はノエルが作った夕食を食べる。

 リリアとノエルは校外学習のことなんて忘れて料理の味付けの仕方について話しており、レイラは無言でたくさんご飯を食べている。



「(1年生初のイベントを前にして緊張感のかけらもないけど、こんな状態で本当に大丈夫かな?)」



 万が一彼女達の身に何かがあったとしてもすぐに助けられるかわからない。

 自分の身は自分で守らないといけない以上、実際に戦っている所を見ないと俺も安心して校外学習に彼女達を送り出すことが出来ないと思う。



「(どうなるかわからないけど、とりあえず彼女達の実力を見てみるか)」



 リリア達3人に魔物と戦ってもらい、その実力を見る。

 そこでもし問題があれば、その時また俺が指導をすればいい。



「(そしたら改めて授業内容を考えないとな)」



 俺は校外学習までの予定を逆算しながら、頭の中で授業の予定を立てる。

 この日の俺はリリア達が部屋に帰るまで、今度行われる校外学習のことについて考えていた。


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ここまでご覧いただきありがとうございます

続きは本日の19時頃投稿しますので、お待ちください!


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