第17話 3人の実力

 リリア達が素振りを始めてから1時間が経過した。

 それだけの時間3人の素振りを見れば、おのずとその人の実力がわかる。



「(俺の予想通り、ノエルとレイラの剣術は素晴らしいな)」



 アレンが特別クラスに入れただけはある。この2人は上級生と戦わせても互角以上に戦えるだろう。

 また育て方次第ではアレンレベルに到達する可能性を秘めている、非常に楽しみな逸材だった。



「(ただ問題はリリアだな)」



 今まで我流でやっていたせいか、2人に比べれば一振り一振りが荒くて改善することが多い。

 だがそれはノエルやレイラと比べたらそう見えるだけだ。あの2人が別格なだけでリリアも稀有な才能を持っている。



「(もしリリアが普通科に入っていたら、Aクラスでも上位の成績を収めていたはずだ)」



 彼女はまだまだ粗削りだが、そのぐらい才能がある。

 ノエルとレイラが磨き抜かれたダイヤだとしたら、リリアはダイヤの原石と言ってもいいだろう。

 これからのトレーニング次第では化ける可能性がある。



「(それにリリアは順調に育てば、ノエル達より強くなるかもしれない)」



 入学試験の成績表を見た時、リリアは1対1の摸擬戦でノエルやレイラと互角に戦っていたという。

 もし彼女がノエルやレイラ並みに剣術が上手かったら、この学校に敵はいなかったと思う。それこそ俺やアレンといい勝負が出来たかもしれない。



「(このダイヤの原石を輝かせられるか、全ては俺の手腕に掛かっている!)」



 この3年間の間にリリアが大成しなかったら全て俺の責任だ。

 その時は潔く教師を辞めた方がいい。俺にそう思わせるぐらい、この3人の中でリリアの才能が突出していた。



「ノエルちゃんとレイラちゃんはすごいな。綺麗に剣が振れて羨ましい」


「リリア?」


「やっぱりあたしには才能がないのかな? この学園に入ったこと自体、場違いだったんじゃ‥‥‥」


「どうしたんだよ、リリア? 急に独り言をぶつぶつ言い始めて。らしくないぞ」


「何でもないよ!? 気にしないで、お兄ちゃん!?」



 まずいな。ノエルとレイラの素振りを見て、リリアがナーバスになっている。

 彼女がこれ以上落ち込まないようにフォローを入れたいところだけど、今のリリアにかける言葉がない。



「(壁にぶつかった時は自分で乗り越えるしか方法がないんだよな)」



 慰めることはいくらでも出来るけど、それではリリアの為にならない。

 もしこの壁を乗り越えることが出来ればリリアは一皮むけて強くなれる。

 なので俺は彼女が苦しんでいる所を側で見守るしかなかった。



「クリス君! クリス君!!」


「ノエルか。俺に何のようだ?」


「『何のようだ?』じゃありませんよ!? 素振りは終わりましたけど、この後私達は何をするんですか?」


「あぁそのことか。ノエル達が次にするのはランニングだ」


「ランニング?」


「うん。この学校の裏に山があるだろう。そこの頂上を折り返し地点として往復してもらう」


「ちょっと待って下さい!? 私達は授業中にマラソンをするんですか!?」


「そうだけど、何か異論があるのか?」


「っつ!? ‥‥‥‥‥ありません。クリス君がそういうなら、私は素直に従います」



 すんなりと受け入れたリリアやレイラと違って、ノエルはこのトレーニングにも抵抗があるようだ。

 ただ彼女のいいたいこともわかる。剣の実技を学びにきたのに、山道を走らされるなんて普通は思わないだろう。

 ノエルが俺に疑心を抱くぐらい、俺のクラスは他のクラスと毛色の違う授業を行っていた。



「そしたら早速走りに行こう。俺が先導するから、3人は俺の後ろに着いてきてくれ」


「「「はい!」」」



 それから俺はリリア達を引き連れて山を登る。

 俺が毎朝走っている獣道に沿って4人で山頂を目指した。


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ここまでご覧いただきありがとうございます

続きは本日の19時頃投稿しますので、お待ちください!


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