第9話 クリスの選択
「(この3人の中から結婚相手を選ぶなんて、そんなこと俺に出来るわけがないだろう⁉)」
仮にも3人は姫騎士候補生。将来はこの国の王子と結婚する
そんな女の子達に手を出したら、この国を敵に回すことになる。
俺としても今の生活が気に入ってるので、一時の感情で祖国を敵に回したくなかった。
「(仮にあの3人に手を付けたら良くて国外追放、下手をすれば処刑されるかもしれない)」
そんなリスクを負ってまで、この子達に手を出したくない。
この子達の気持ちは嬉しいけど、俺にはそれを受け入れるだけの覚悟がなかった。
「(一体どうすればこの3人を納得させられるんだ?)」
俺の気持ちを素直に話した所でこの3人は納得しないだろう。
それどころか彼女達の闘争心に火をつけることになり、恋愛に現を抜かして俺の授業をまともに受けてくれなくなるかもしれない。
『キーンコーンカーンコーン』
「あっ!? チャイムが鳴った!?」
「そうだよ! まだ帰りのホームルームが終わってないだろう? だから早くホームルームを始めよう!」
「でも、まだクリスお兄ちゃんの返事を聞いてないよ」
「それはホームルームが終わってからでも出来るはずだ。それよりも他のクラスは既に下校しているのに、このクラスだけホームルームをしてなかったら、周りからおかしいと思われないか?」
「確かにそれは一理ありますわ」
「だろう? だから早くホームルームを終わらせよう! 話はそれからだ!」
返事を先送りにする言い訳として提案させてもらったけど、3人に納得してもらえるかな?
リリア達は眉間に皺を寄せて難しい顔をしている。俺だけでなく彼女達にとっても難しい選択を迫られているに違いない。
「わかった。お兄ちゃんがそう言うなら、あたしは従うよ」
「私も従います」
「私も」
「ありがとう。そしたらホームルームを始めよう」
よかった。これで何とか修羅場を回避できた。
ただこの安寧は一時的なものだ。ホームルームが終わった瞬間、俺はまた3人に囲まれてしまうだろう。
「(そうなる前にこの教室から脱出をしよう!)」
考えがまとまったらやることは単純だ。
教室内のどこにいけばこのクラスから出られるのか、必死になって脱出ルートを探した。
「(教室の出口から1番近い席に座っているのがリリアか)」
ホームルームが終わった瞬間、あそこのドアはリリアによって真っ先に抑えられるだろう。
なのであそこから脱出するのには時間が掛かる。
「(そうなると後ろのドアから出るしかないな)」
ただそこは賢いノエルのことだ。ホームルームが終わった瞬間、後ろのドアは彼女によって真っ先に抑えられるはずだ。
「(つまり俺はリリアとノエル、どちらかと対峙しないといけない)」
一見するとリリアを相手にした方がいいように思えるが、彼女は怪力の持ち主だ。
以前サイロンの村に滞在していた時、
「(単純な力比べをしたら、リリア相手だと時間が掛かる)」
リリア1人の相手でも大変なのに、そこにレイラまで加わったら俺には太刀打ちするすべがない。
なので俺が目指すのは後ろのドアだ。ノエルが魔法を唱えようとする一瞬の隙をついて、この教室から脱出をする。俺が生き残る道はそれしかない。
「以上が今日の連絡事項だ。何か質問はあるか?」
「何もないよ」
「そうか。それならこれでホームルームは終わりにしよう。3人共お疲れ様」
そう言った瞬間、俺はクラス名簿を持ち後方のドアめがけて走る。
予想通り教卓に近いドアはリリアが塞いでおり、俺が迷いもなく後ろのドアに向かって走って行ったことに驚いている。
「やっぱりクリス君はこちらのドアに来ましたね」
「ノエルもここを抑えにきたんだな」
「はい! 前方のドアはリリアさんが抑えてくれると思っていたので、私はこちら側に来ました」
さっきまで散々いがみ合っていたのに何でこういう時は息ぴったりなんだよ。
目的の為に一致団結する3人を見て、意外と相性が悪くないように感じられた。
「さっきの答えを聞くまで、クリス君にはこの教室にいてもらいます!」
「ノエルには悪いけど、ここで捕まるわけにはいかないんだ!」
ここでリリア達に捕まったら、先程のような地獄を1日中味わう事になってしまう。
そうなったら午後の仕事にも支障が出る恐れがあるので、ここで捕まるわけにはいかない。
「(
「クリス君がいきなり加速するなんて‥‥‥もしかして、無詠唱魔法を使ったのですか!?」
「悪いな、ノエル。また明日この学校で会おう」
ノエルよりも先に教室のドアに辿り着いた俺はリリアとレイラが援軍として駆けつける前に急いで教室を出る。
教室を出た俺はその足でこの事件の黒幕と思われるアレンを探す為、校内中を駆け回った。
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ここまでご覧いただきありがとうございます
続きは本日19時頃に投稿しますので、楽しみにしててください!
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