第10話 アレンの思惑
「アレン!! 一体どこにいるんだ!!」
ホームルームが終わってすぐ、俺は教室を飛び出してこの学校のどこかに潜んでいるアレンのことを探した。
きっとアレンのことだ。俺が昔助けた女の子をあのクラスに集めたのには、何か理由があるに決まってる。
俺はあの子達の担任として、その理由を聞かなければいけない。
だから必死になってこの学校のどこかに潜んでいるアレンのことを探した。
「はぁ、はぁ、はぁ‥‥‥‥‥これだけ校内を探し回っても見つからないなんて、一体あいつはどこへ行ったんだ?」
入学式の時に見かけたっきり、アレンの姿を1度も見ていない。
だがあいつもこの学校の教師だから、校舎内のどこかにいるはずだ。
絶対に見つけ出して事の真相を確かめてやる!!
「クリスさん!? そんな血相を変えてどうしたんですか?」
「ミリア! 丁度いい所に来てくれたな!!」
「えっ!? 何ですか!?」
「アレンのことを見かけなかったか? いくら校内を探しても見つからないんだよ」
「アレン校長ですか? あの人なら入学式のスピーチが終わった後、校長室に戻ったはずですよ」
「ありがとう!」
「ちょっと待って下さい!? 校内を駆け回るのは校則できん‥‥‥‥‥」
去り際にミリアが何か言っていたけど、今はそれどころではない。
俺はアレンがいるであろう校長室へ向かって一目散に駆けて行った。
「おい、アレン!! これはどういうことだ!!」
「クリス! どうしたの? そんなに血相を変えて?」
「『どうしたの?』じゃない!! リリア達をあのクラスに集めたのはお前だろう!!」
「うん、そうだよ!」
「『そうだよ!』じゃない!! あいつ等はこれっぽっちも姫騎士になろうと思ってないのに、なんで選抜クラスに入れたんだ!! 理由を説明しろ!!」
リリア達のあの様子を見る限り、自分達が王子様の嫁候補に選ばれているなんて微塵も思ってない。
その説明をしていないのにも関わらず姫騎士候補にさせるなんて、あの子達に悪いと思わないのか?
「それは‥‥‥」
「ちゃんとリリア達にその話はしたんだろうな? もしその話をしてないなら、今すぐあの子達を一般クラスに編入させろ!!」
「おっ、落ち着いてよクリス!? その話はこれからするから!? だから僕の胸倉を掴まないで!?」
「これが落ち着いてられるかよ!! リリア達がどんな子か、俺と一緒に旅をしていたお前が1番よく知ってるだろう!!」
「もちろん知ってるよ!? クリスが彼女達にどれだけ愛情を持って接してきたかも含めて、僕は全部知ってるよ!?」
「俺は別に愛情を持って接してなんか‥‥‥」
「そんなに照れなくていいよ。リリアちゃん達が住んでいる所に滞在している間、クリスがあの子達の面倒を見てきた姿を僕が1番近くで見ていたんだ。だからあの子達とクリスの関係性は僕が1番わかってるよ」
「だったらあいつ等を姫騎士候補にするのは今すぐやめてくれ!!」
「それは出来ないよ」
「何故だ?」
「あのクラスに立候補したのは、ほかならぬ彼女達自身なんだから」
「何だと!?」
あいつ等が自分の意志であのクラスを選択しただと!?
俺に対してものすごい執着心を見せる3人の性格上、この国の姫になりたいという願望を持つはずがない。
「その話は本当なのか!?」
「本当だよ。ただあの子達は姫騎士になりたいというよりも、クリスと一緒にいたいから志願したというのが本音だと思うけどね」
「どういうこどだ?」
「言葉の通りだよ。このクラスは姫騎士になる生徒を1人選ぶんだけど、選ばれなかった残りの2人はどうなると思う?」
「それはもちろん優秀な人材だから、近衛騎士団に配属されるんじゃないか?」
「おしい! クリスの言う通り近衛騎士団に配属されるんだけど、騎士団のどこに配属されると思う?」
「う~~~ん。さすがにそこまではわからないな」
「クリス、思い出して! この前王の間で、王様が言っていたことを!」
「あの
そういえば教師をすることが決まった時、あの
あの時
騎士団の団長を解任されたことで頭がいっぱいだったからよく覚えてない。
『最後にもう1つ質問するけど、姫騎士になれなかった他の生徒達はどうするんだ?』
『その時は近衛騎士団に入れて、クリスの副官にすればいいと思うよ』
「もしかしてリリア達の目的はあのクラスを卒業して、俺の副官になることなのか?」
「そうだよ! よくわかったね」
なるほどな。だから3人共このクラスに入ろうと思ったのか。
目的を知った今ならリリア達の考えている事が手に取るようにわかる。
あの3人は俺の副官になるため、わざわざ選抜クラスに立候補したんだ。
「(一般公募している騎士団の試験に受かったからといって、騎士団長である俺の側にいける可能性は殆どない)」
こんな感想を抱くのは癪だけど、3人の作戦は理にかなっている。
このやり方が俺の側に行ける1番の近道だ、だから3人は姫騎士を育成する為の選抜クラスに入ったのかもしれない。
「普通にやってても俺の側にいれる可能性が低いから、選抜クラスに入って
「そういうことだよ! さすがはクリス、察しがいいね!」
「それは誉め言葉でも何でもないよ」
なんだか話を聞くだけで頭が痛くなってきた。
つまりあの子達は俺と一緒に仕事がしたいから、選抜クラスに入ったんだ。
彼女達の気持ちは痛い程わかるけど、個人的な感想を言わせてもらうとはた迷惑な話である。
「僕はこの選抜クラスを決めるために面接官として入学試験に参加させてもらったんだけど、面接中に彼女達の思いを聞いて思いついたんだ!」
「聞きたくはないけど、何を思いついたんだ?」
「クリスに懐いていたあの子達が将来騎士団長の副官になりたいと言ってるなら、その子達の指導をクリスに任せてみようと思ったんだよ!」
「なるほどな。だから俺を騎士団長の座から降ろしたのか」
「そうだよ! その方が何かと手っ取り早いと思って、王様にそう進言したんだ」
なるほどな。そういうことか。ここにきてようやくアレンの考えがわかった。
ようは自分の副官は自分で育てろと。アレンはそう言いたいんだな?
「(俺が教師になった理由はわかったけど、それはそれで別の問題が残る)」
この部分がこの問題の重要事項だろう。
それがわからない事にはアレンの本心が見えてこない。
俺は今の会話の中で抱いた疑問をアレンに直接ぶつけることにした。
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ここまでご覧いただきありがとうございます!
続きは明日の7時頃投稿しますので、楽しみにしてください!
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