第5話 それぞれの思惑
「着きましたよ! ここがこれからクリスさんに寝泊まりしてもらう部屋になります!」
「ここが俺の部屋か。ずいぶんと広いんだな」
「はい! 教師が使う部屋なので、学生に割り当てられた部屋よりも少しだけ広いです!」
俺が案内された部屋は騎士団の時に使用していた部屋よりもはるかに広い。
ベッドは2人分寝れる大きさがあり、キッチンスペースも充実していて風呂とトイレも別になっている。
「(まさか騎士団にいた時よりも豪華な部屋に住めるとは思わなかった)」
騎士団で寝泊まりしていた所より学校の寮の方が圧倒的に設備がいい。
学内に俺専用の個人スぺースが与えられたことといい、騎士団にいた時よりも俺に対する待遇がよかった。
「(騎士団にいた時はこれよりも狭い部屋の中に2人で住んでいたことを考えると、ここは天国のような空間だ)」
至れり尽くせりとはこういうことをいうのだろう。
騎士団にいた若手達と仲を深めるという目的であれば以前の環境の方がいいけど、設備的な面で見れば圧倒的にこの学校の方がよかった。
「それでは一通り説明が終わったので、私はこれで失礼します」
「あぁ。今日は学園を案内してくれてありがとう」
「どういたしまして。明日からまたよろしくお願いします」
そう言ってミリアは俺の部屋から出て行った。
ミリアがいなくなった後、俺は自室に備え付けてあるベッドに寝そべり天井を見つめる。
そして今日1日自分の身に起こった事を頭の中で反芻させながら、明日からどのような生活を送ることになるのか考えていた。
「ついに明日から学校が始まるのか。俺みたいな荒くれ者にこの学園の教師なんて務まるのかな」
生まれてこの方人に物を教えた経験なんて殆どない。
そんなやつがいきなり子供達に剣術を教えることなんて出来るのか不安になった。
「本当に俺はこの学校の教師としてやっていけるのかな?」
アレンからは好きなように授業をやっていいと言われているけど、本当にそれでいいのかな?
俺が好き勝手やった結果、周りの教師陣から反発を受けそうで怖い。
その時はアレンが俺のことを守ってくれると思うが、明日からの生活を考えると不安で押しつぶされそうになった。
「それにしても一体アレンは何を考えているんだ?」
俺を騎士団長の座から降ろしてこの学校の教師にしたけど、アレンがしたかったことはこういう事なのか?
俺にはあいつの本心がわからない。本人は姫騎士を育てる為に力を貸してほしいと言っていたけど、俺には何か別の思惑があるように思えた。
「そういえばこの学校に来てから、俺はアレンの姿を1度も見ていない」
予定ではアレンも今日付けでこの学校に赴任しているはずなのに、校内であいつの姿を1度も見なかった。
本来なら俺と一緒に校内見学をしているはずだ。それなのに俺1人だけが校内見学をしていたのはどう考えたっておかしい。
「もしかしてアレンは俺が教師になる前からこの学園に関わっていたのか?」
そう考えると色々とつじつまが合う。
この学校に入って何かしらの異変を感じたけど1人で対処が出来そうにないので、俺を呼びつけた。そう考えた方が自然だ。
「アレンが何を考えてるかわからないけど、何かしら企んでいる事は確実だな」
そうでなければ俺を学園の教師にするはずがない。
アレンが何を考えてるかわからないけど、あいつの行動には注意した方がいいだろう。
そうでないとまた面倒なことに巻き込まれる可能性がある。
「それに問題は他にもある」
それは俺が担任をする選抜クラスのことだ。
他のクラスは30人程度の生徒がいるのに、何で俺のクラスには女子生徒が3人しかいないんだ?
姫騎士を育てるという名目があるにしても、3人は少なすぎるだろう。
国としても王子の嫁候補は多いにこしたことはない。
それなのにも関わらずこんなにも人数が少ないのはアレンがそうなるよう強引に推し進めたからに違いない。
「ダメだな。色々なことを考えると頭が痛くなってくる」
こういう時はさっさとベッドに入って寝るに限る。
難しいことは明日の俺に任せて、今日はゆっくりと体を休めることにしよう。
「そしたらさっさと風呂に入って、明日に備えるか」
俺は小難しい事を考えるのはやめて部屋に備え付けてある風呂に入り体を清める。
それから今日の疲れを取るためベッドに入り、明日行われる入学式に備えて早めに寝ることにした。
------------------------------------------------------------------------------------------------
ここまでご覧いただきありがとうございます
続きは本日19時頃の投稿を予定しております!
次話から重要なキャラクターがたくさん出てきますので、楽しみにしてて下さい!
最後になりますが、この作品が面白いと思ってくれた方はぜひフォローや★★★の評価、応援をよろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます