第21話「ランクE」

 その後はギルド憲兵に代わってコッテリと取り調べを受けることになったマイト、


 そして、当然レイラとメリザも絞られ、最後の方は飄々ひょうひょうとしていたメリザまで泣き顔になっている始末。

 最終的には、ヨロヨロとした足取りで、ギルドマスターとやらに最後のお叱りを受けるとかで一時中座した。


 ……いやさ、ギルド憲兵こぇ~わ。


「で? お前は、『鉄の牙』とチンピラ連中と交渉しているところをコイツが……Eランクの冒険者が突然極大魔法をつかったと──??」

 そして取調室の残ったのはマイトとレイラ。

 こちらの方はまだまだ取り調べが続くらしい。

「そ、そーよ! そもそも、コイツがEランクぅ?! そんなわけないでしょ──現場のほうを見てきなさいよ、無茶苦茶よ?! 更地になってるんだからね!! そーよ、ランク詐称さしょうよ! さしょー!! コイツこそ犯罪者じゃないの!!…………ってゆーかぁ、まずは服寄越しなさいよ服ぅぅう!!」


 ぎゃーぎゃーぎゃー!!


「あーあーうるさいうるさいうるさいうるさい。ランク詐称もなにも、正真正銘のEランクだ。どこに出しても恥ずかしいEランクで、ぶっちぎりのE、これぞEランクの象徴のEでレベル1の雑魚だ。だいたい、ランク詐称くらいで一々取り締まってられるか──そも、Eを詐称するアホなんぞおらん。Eだぞ? らんわこいつのEだぞ?」


 ……うん。

 言い過ぎじゃない?


 あれ、なんだろう涙が出てきた──。


「そんでなんだぁ? Eランクの雑魚クソ冒険者が極大魔法だぁぁあ? バカも休み休みいえ、それが出来たらEランクなんてしてるわけがないだろうが。Eランクだぞ? 何もできない雑魚だからEランクなんだっつの──あと、服だぁ? 服着て隠すようなもんもないだろうが、」


「んがぁぁああ!! 最後の言葉が一番聞き捨てならないわねぇぇえええ!!」


 ギッシギシ!!


 ポーションが効いてきたのか、椅子に縛られてるのに元気だな、おいこの女。

 腹に一発ぶち込んだのに堪えていないらしい。


 ……つーか、ギルド憲兵さんはEランクに恨みでもあんの?……泣くよ??

 ま、最後のは同感だけどさ──。



 ──ギロッ!!



「な、なんだよ!」

 突然レイラの矛先がマイトに向いて思わずたじろぐ。

「なんだよじゃねーわよ!! ほらぁ、あの時のやりなさいよ! ドカーンっての!!」


 は?

 やるかぼけ、死ぬわ。


「それにこれぇ!!」

 

 ぺローンと──……うーわ、ちっさ!


そこ・・じゃねぇぇえええええ!」

「底しかねーよ」

「底じゃねっぇえええええ!!」


 あーもう、うっさいうっさいうっさいうっさーい。


「うるさいぞ、レイラ。お前はその貧相なものはさっさとしまえ」

「っだー!! アンタもぉ!! 誰が貧相よ!! ってゆ~かぁ、誰がそっち見ろって言ってんの!! こっち! こっちの穴よ、穴!! あーな!! 見えないのこのお腹にあいた大穴ぁあ!」


 穴とか言うなし──。女の子でしょーが。

 ……つーかほとんど消えてるよー。まったくポーション、マジで優秀。


「穴だぁ?……誰もお前の穴になんざ興味ねーよっ。それよりも、暴行は認めるんだな?」

「ぐ、ぐむぅ」

「はい、斬られましたー」


 いたかったでーす。


だぁーってろ黙ってろ!! お前だって私に穴をあけただろうが!」


 言い方ぁ。


「んなもん正当防衛だろ──……正当防衛はありっすよね」

「……まぁな」


 うーわ、フルフェイスのバイザー越しに、「お前が正当防衛ぇぇ?」って顔してるのバレバレだよ。

 悪かったなEランクで!! 自分の身も守れなくてぇ!


 ……つーか、もういい?


 俺どう見ても被害者やん────まぁ、メリザさんの話が本当ならこの女は一応助けてくれったってことになるんだろうけど……うーん。



 ……だけど、あれ。助けられたのか??



 なんか、どうもなー。

 話を聞けば納得できなくもないけど、結局切られまくりの煽られまくりの──物までパクられただけだしなー。


 うーん。


 つーか、チンピラ優勢で、Cランクのあいつら逃げそうだったしなー。

 そしたら、チンピラに有り金巻き上げられるで済んだっぽくね?……マイトさん切られ損じゃね??


 まぁ、IFは証明しようがないから実際のところがわからないんだけどね。


「ちょ、ちょっとぉぉお! せ、正当防衛ってそんな!……ま、まさかBランクのアタシを捕まえようってんじゃ──!」

「もう捕まってんだよ、お前は」


 ──むが!!


 ガーンみたいな顔しているレイラ。

 ぶぷぷ、いい気味だぜ──ってだから、睨むなし!!


「くぅぅ、くっそー!! こんなことなら、こんなクソ野郎なら助けるんじゃなかったわよ!!」

「頼んでねーよ、事態悪化・・・・させただけじゃねーかよ」


「あー。それ・・だ……」


「へ?」


 それ・・


 憲兵を挟んでギャーギャー言い合いしているところに、低い声で静止が入る。

 そして、


「……串焼き屋の親父の証言とコイツ──そんで現場検証から見てだな」じろりっ


 へ? へ?


「──お前、街中で魔法使ったのか?……しかも、ちょっとやそっとで済まないレベルのを」

「むご!!」


 や、やっべー。


 そ、そそそ、そう来ましたか──って、このアマぁ!!

 なんか「やーいやーい!」って顔がうるさいよ! そういうのバレバレだからな!!


 つーか、全ッッ部お前のせいなんだぞ!! 結構な割合でぇぇえええ!!




    ……ま。

    こういう扱いにはマイトさん慣れている──そして、




「あ、あははははははははは、憲兵さんまっさかー。俺が魔法ぅぅうう? あははははははー、ないないないない!」


 だって、


「俺、レベル1のEランクっすよー」


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