第12話「199X年──」
『──カウントダウンを開始します』
「……は?」
「……む?」
…え?
いや。
カ、カウント、
……ダウン────??
「って、なんだっけ──??」
……え~っと。
さっき、ポチッとしたから
えっと、
カウント、カウント……。アカウント。SNSで大炎上──。
「え、大炎上?!」
「炎上じゃと?! な、なんじゃぁ、焼く気か?!
ワシをやる気か?! いい度胸じゃの! そも、いきなり誰じゃ!! お、おおお、お主いったい何者じゃー!」
シュッシュ!! とシャドーボクシングしながら威嚇する少女と、考え込むマイト。
お互い、まさかこんな時間にこんなところで誰かと出くわすとは思っていなかったのか硬直していたところ。
すると、マイトの思考を促すように、突如──眼前のステータス画面に新たな表示が現れる。
それ即ち、最近見慣れてきた時計の表示で──いわゆる『カウントダウン』。
ふむふむ。
つまり、これから厚さ5000mmのダンジョンの壁を爆破するカウントダウンの開始を告げるそれなわけで、あと60秒で────……。
──……ッて、
「…………………ちょ、ちょわっぁああああああああああああああああああああ!」
「ぬわぁぁああ! なんあなななあ、ななな、あなんだぁ?!」
──く、くるかー!!
思わず身構える美少女であったが、マイトくんは今それどころじゃありません!!
そ、そ、それどころじゃありませんよぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!
だって、あと60秒で……!!
『危害半径からの退避を勧告します』
って、ほらきたーーーーーー!!
やっぱり来たーーーーーーー!!
「…………んーーーーーーーーー、待ってぇぇえ!!」
ちょっと、待って!!
危害半径とか、待ってぇぇええええ!!
……い、今だけは待ってぇぇぇええええええ!!
ほらあれ!
あれなの!!
間違えたの!!
押し間違えたの……多分!!
だって、人が出てくるんなんて思ってなくて──あああ、まずいまずいまずい!!
「あああああ、もう!! な、ななんなん、あなな、なんちゅうタイミングで出てくんねん!! このブルマ女子!!」
つーか、ブルマか?!
それはブルマなのか!?
体育大会かぁぁあああああああああああ!!!
しかも、この女子くっさぁぁあ!!
(なにこれ? 生ゴミ?!)
生ごゴミのにおいなのか……って、あかん!! 今は勘弁────……うぉぉろ。
「お、おい、さっきからなんじゃ────変な格好しおって!! しかも人様に
「おろろろおろろろろろろろおろろろろろ──!!」
びちゃびちゃびちゃ!!
「…………ぎ」
ぎぃえやぁぁぁああああああああああああああああああああああああ!!
「ぎぇぁぁぁああああああああああ!! ああ、ああああああななななななあああああああああ!!」
ぎぇぇあああああああああああああああ!!
「おろろろろろろろ────。あっふ。し、しぬ──……」
「し、し、し、死ぬのはワシじゃわぁっぁあ!! くっさー! つーか、お主は死ね!! ななな、な、なにしとんじゃわれぇぇえええ!! なんで初対面でゲロふっかけられにゃならんのじゃ!! それとも、そーいうプレイか?!……うーわ!! み、見てみんかい、これぇ! ほれ、げ、ゲロまみれになっておるわ!! うーわ!! くっさ! 長いこと生きててこの体験は初めてじゃわぁぁあ! 酸っぱい臭いがするぞなもしー!!」
ぎゃーぎゃー騒ぐ女子に、マイトさん頭真っ白。
いいから、
いいから一回黙れ!!
吐いたのは悪かったけど、一回黙れ!!
「──ちょ、ちょっとマジ黙って、頭が混乱してるから黙って?!」
え? なに?
どういう状況!!
マイトさん、ダンジョンの『発破』スイッチ押しちゃった系??
つーか、何この子?
え? ブルマ女子?
え? 昭和?
え? え? え────。
「ぅえろっ!!」
…………。
……。
ビチャビチャビチャ。
「──ぎ、ぎゃああああああああああああ!! ま、またぁぁああああ!! なんで二回も三回もゲロふっかけられにゃならんのじゃぁぁああ!!」
あーーーーもーーーーーーーーー!!!
「悪かったよ! わるかったから黙れぇぇぇえ、うえろぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおえ!!」
「うぉぉおおい!! そ、そう思うなら、吐くな! あと、お主はいっぺん死ねぇぇええ!!」
あー!
あー!!
お互い指をさし合い、「あー!」「あー!」「「ああああああ!!」」
あーーーーーーーーもーーーーーーーー!!!
うっさいうっさいうっさい!!
『カウントダウン開始────60 59 58』
…………。
……。
あーーーーーーーーーーーーーー!!
もーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!
秒読み始まっちゃったよぉ、
もぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおお!!
「これぇぇええ、どーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーすんのぉぉぉおおおお!!」
「知るかぁぁあ、しーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーねぇぇぇええええええ!!」
死ぬか、あほ!!
「お前が死ね、ばーか!!」
「お主の方が馬鹿じゃろうが!! バカなのか?! 死ぬのか?!」
「うっせぇよ!! つーか、なーんでこんな時間にダンジョン攻略してんだよ!! しかも一人でブルマ履いてぇぇええ!!」
「関係あるか!! ブルマ履こうが、ゲロ吐く奴に言われたないわ!! あーくっさ!!」
「お前の方がくっさいわ!! なんだよ、その体臭!! 吐くわそらぁぁあ! 風呂入ってんのかぁぁああ!!」
生ゴミか?!
生ゴミなのか!!
「風呂なんざ入っとるかぁぁい!! 面倒くさいわーい!」
「偉そうに言うとこちゃうわ! ばーか!! 風呂は入るもんなんだよ!! 面倒以前の問題なんだよ、ばーか!!」
うぉえ!
また吐きそう!!
「おおおい、吐くな吐くな!!」
「だったら●ァブリーズくらいしろ、くっさ──」
『──15 14 13』
「って、時間がぁぁぁああああああああああああああああああ!!」
やっば!!
やぁぁぁああああば!!
頭ぱっぱらぱーな女の子と言い合いしてる場合じゃねー!!
危害半径50mの爆発がおきるぅぅう!!
えーっと、
えーっと……。
「なにが時間じゃ!! 馬鹿もんが! 人間はすーぐに時間時間と──」
うっせぇぇえ!!
「──時間が惜しいぃぃいいいいいい!!」
時間は貴重!!
時間が貴重!!
時間のてをにはぁぁぁああ!!
「南無さん!!」
「んぎゃ!? 何すんじゃいきなり腰を掴んでぇぇえ────はっ!」
「ナニもしねぇぇえ! つーか何でもいいから、走れぇぇええええええええ!!」
……走ってるのは、俺だけどぉぉおお!!
その場で回れ~右ッ!!
匂うブルマ美少女を小脇に抱えて、マイトさんスタートよーい!
身をかがめて、
『──10、9、8』
……って、ぐぉぉおおお!!
なんで俺は、
じ、じ、じ、時間がねぇぇえええええええええええ!!
えーっと、えーっと。
一回、
一回考えよう。
マイトさんの100m走のタイムは最後の体育で測ったのは、3年前で────たしか、14秒代!!
つまり、半分の50mなら7秒で行けるってことだよな?!
計算あってるよな?!
8秒あればまだぎりぎり────!!
よし、行ける!!
なので──。
行けッ!!
俺ッ────マイトだっしゅ!!
マイトダッシュだぁぁぁあああああああ!!
「うひゃぁぁあああああ!! さーらーわーれーるー!!」
「攫ってねぇぇえええええええええええええええええ!!」
『7 6 5──』
って、足おっそ!!
マイトさん足おっそ!!
ぜ、全然50mに届く気がしない!!
なんで?! なんでなん?!
「あっほぉ!! 50m? そんなもん、トップスピードに達するまで時間かかるに決まっとろーが。そんで、
アホアホ、うっせーな!!
そして、解説ありがとう!!
「あと、お主荷物持ちすぎじゃ! そのうえワシを抱えとったら、それは無理に決まっとろうに!……なに? 50m7秒? アーホ! そんなもん、空荷でも出せるかこのドアホぅ! あ、ワシの体重は秘密じゃぞ。……うひゅ、ひ・み・つ♡」
うーーーーーーーーーん!!
殴りてぇぇええええええ!!
けど、教えてくれてありがとう!!
つまり────……。
『4 3 』
「間に合わないってことねぇぇええええええええ!!」
「そーなるのー。何が間に合わんか知らんが──」
うん。
知らん方がいい!!
いっそ。知らずに逝った方がいい!!
だけど敢えて言うなら、
っていうか、俺結構口にしてたっけ?!
50m7秒とか言ってたっけ?!
「顔が言っとるわ」
「どんな顔だよ!!」
──
「あーもう!!」
わかったわかった!!
巻き込んだのはマイトのせいだし──。
「せめて──」
コイツだけでも、助かれぇぇぇええええ!!
むんず!!
マイト、渾身の力で少女を抱えると────否ッ、構えると!!
「ちょ! お主なにを、ハッ……まさか、そーいうプレイ──」
──ぶん投げた!!
「にょわっぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああ、これが放置プレーーーーーーイ」
つーか、
どこ触っとんじゃお主ー-!!
お主ぃー……!
お主ぃぃー……
「……って、触るとこなんざ、なにもねーよ!!」
つーか、テメェもエコーしてんじゃねーよ!!!
だいたい凹凸ゼロじゃねーか!!
槍か?!
槍なのか! めっちゃ持ちやすかったわ!!
そして、
──ひゅるるるるるるるるるるるる……。
「……あと、それは放置プレイじゃねぇぇええ!!」
あえていうなら、それ
その言葉通りにきれーな放物線を描いて飛ぶ少女──。
マイトの火事場の
あとはそのまま地面に──ずべしゃ……! と着地!!!
いや、墜らく?……否、着地した! 着地ったら、着地なのだ!!
「……えぶし!!」
うわ……!
す、凄い音した────けど。
うん、
生きろッ!!
「死ぬわ!!」
ガバァ!
「生きとるやん!!」
生きてるなら、OK!!
生きてるって素晴らしいし、うらやましい!!
そして、風呂には入れぇぇえ────。
……と、そこで、ついにカウントダウンが、最終秒読み2秒前。
ついに秒針が、2から1に近づき、
いよいよゼロを差さんとする────。
「……南無さん。短い生涯だったぜ」
イ~イ笑顔を浮かべたマイトは、少女に向かって親指を立ててサムズアップ。
──カッッ!
そのまま、背後からは光り輝くダンジョンの出口。
おそらく爆発数秒前の余波だろうか。
今にも破裂せんばかりに──猛烈に光り輝くと、その光を受けたマイトは
ピッ。
ピッ。
ピー……♪
「ふっ……」
最後に笑い。
そして、残り時間を走馬灯のように、じ~っくりとステータス画面のカウントダウンをみて、最後の瞬間を待つマイト。
もはや足はフラフラ。
目は虚ろ──……カウントは容赦なく秒を刻み、今もゼロへと近づく……。
『3 2──
ピッ
ピッ
※ ※ ※ カウントダウン ※ ※ ※
※ 0:00:03.132 ※
※ ※
※ ※
※ ※
※ 「中断」 ※
※ 「一時中止」 ※
※ 「時間調整」 ※
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓
※ ※ ※ カウントダウン ※ ※ ※
※ 0:00:02.524 ※
※ ※
※ ※
※ ※
※ 「中断」 ※
※ 「一時中止」 ※
※ 「時間調整」 ※
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓
※ ※ ※ カウントダウン ※ ※ ※
※ 0:00:02.014 ※
※ ※
※ ※
※ ※
※ 「中断」 ※
※ 「一時中止」 ※
※ 「時間調整」 ※
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「…………ん?」
ピッ
ピッ
ピッ
「…………ん、んんん?」
走馬灯のようにゆっくり流れる時間間隔。
そのカウントダウン残り2秒のところで、
『2──……………
そう、
ふと、カウント『2』の
そのカウント表示されてるステータス画面の下ーーーーの方に。
──ちっさ~~~く……というか、画面ギリギリに、
⇒⇒⇒ 「中断」
「一時中止」
「時間調整」
「……って!!!」
うぉぉおおおおおおおおおい!!
「こ、ここここここここ、これぇ!!」
これ!
これは!!
これは──!
「中断?!」
な、なにこれ?
何この表示!?
「……っていうか、『中断』あるんかーーーい!!」
な、なんだよこの
読ませる気ゼロやん!!
さらには、
『一時中止』もできるんかーい!!!
そして、
時限信管の調整もできるんかーーーーーーーーい!!
んなもん押すわ!!
今すぐ、押すわ!!
連打で押すわ!!!
「とにかく押すわぁぁああああああああああああああ!!」
──バンッ!!
おらぁぁああああああああああああああああああああ!!!
「止まれえぇぇえええええええええええええええええええー!!」
※ ※ ※ カウントダウン ※ ※ ※
※ 0:00:01.503 ※
※ ※
※ ※
※ ※
※ 「中断」 ※
※ ⇒ 「一時中止」 ※
※ ⇒ 「時間調整」 ※
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
カチッ。
ピーーーーー♪
※ ※ ※ カウントダウン ※ ※ ※
※ 0:00:01.424 ※
※ ※
※ ※
※ ※
※ 「中断」 ※
※ ⇒ 「一時中止」 ※
※ 「時間調整」 ※
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
…………。
……。
『……カウントダウン、一時中止します』
※ ※ ※ カウントダウン ※ ※ ※
※ 0:00:01.415 ※
※ ※
※ 「中断」 ※
※ 「再開」 ※
※ 「時間調整」 ※
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
しーん
「……ぶ、ぶほわぁっぁああああ……」
と、ととと、ととと、、
「止まったぁぁああああ…………?」
ドバァァ!
突然あふれ出す冷や汗と脂汗!!
そして、猛烈な吐き気!!
──おえぇぇぇえええええええええ!!
ビチャビチャビチャ。
とっくに空のはずの胃がひっくりかえったかのうようだ。
緊張感で、脂汗と胃液が逆流して止まらねぇぇえええええ、けど、
「はぁはぁはぁ。……た、助かった、のか?」
よろよろ……。
ガクリ。
ステータス画面を叩き割らんばかりにスイッチ(?)を押すと同時に、「中断」「一時中止」あたりをぶった叩いたらしく、ステータス画面のカウント表示が硬直。
どうやら、表示とともにアナウンスを聞くに「一時中止」を押せたようだ……。
……まさにギリギリ。
そして、ステータス画面はというと、
今もカウントを表示し続けたまま、カッチカッチと催促するように、画面全体が点滅しそのままの表示で止まっている。
どうやら、そこから『再開』できるようだがするか!!
するわけねーだろ! あと1秒しかねーのに!!
「ったく、今はそれよりも残りカウントだ……!」
よくよく見れば、カウント表示には、こまかーーーーい数字も表示されていて、その数字たるや、なんと──。
『0:01.415』
い、
一秒、415ぉ??
「こっまか……!」
そして、ぎーりぎり!!
ギーーーーーリギリ!!
め~~~~~~っちゃ、ギリギリですやん!!
「あっぶ!!」
あっぶ!!
「あっぶねー!!!!」
あと、表示がちっせぇぇええええんだよ!!
そんで、一時中止のあとは、『再開』表示がでてくるってか?!
「もー!! 説明がなさすぎだろぉぉぉおおおおお!」
あの神、今度会ったら絶対ぶっ飛ばしてやる!!
マイトは一度だけあった転生神(?)に怒りを燃やしつつ、そのままヘロヘロになりつつも、なんとか50m走りぬく。
もう走る必要もないけど、惰性というかね、まぁね。うん、ほら……一回走ちゃったので……!
……うん、とりあえずゴール!!
いぇー♪
ビシィ! とポーズ!!
そこに、
「──お主ぃ!! 人を投げるとは何事か!! みろ、顔から鼻血が!! こーんな美少女をぶん投げるとか人としてなっとらーんん!! 人がせっかっくこんな田舎くんだりまできて、直々に視察にくればなんじゃ?! ほんと、たまたまダンジョンの調査に来ておっただけなのに。この仕打ち!! 断じて許せん──そこに直れぃ!! このワシがじきじきにお主を指導してやる!! 熱烈指導をこうー、軍隊の鬼軍曹ばりににだなぁ!……じゃが、感謝するがいい、本来はお主ら異世界人には不干渉が基本なところ、なななん、なーんと今回だけ特別に付きっ切りでこう、ビシバシとだな──」
「うるせーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
ビシッ!!
「はぶわっ!!」
『──再開します』
ピー♪
「はぶわ! じゃねーわ!! ひとがせっかく、生き残れたことに感動しているところをくどくどくどくど!! うっせーんだよ!! なにがダンジョン調査だ! そんなもん昼間にやれ昼間に!! つーか、お前ぇ親はどうした親はぁッ!! 親の顔が見てみたいわ!! ようやく助かったかと思えば、子供の戯言なんて聞いてられるかバカ!! だいたい、子供の
なにを再開────……って、
「あ」
い、勢い余ってステータス画面押しちゃった──かも?…………………って、
「……ああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
「いったー……また暴力を!! こ、ここ、このワシをいったい誰だと!! 世界一の魔法研究機関の長にして、今回この街で発生したダンジョンの異変を調査に──」
『……2 1──────いま!』
「……じーざす」
──カッッッッ!!
ズバァァァアアアアアアアアアアアアアアアアン!!
「どわぁっぁああああああああああああああああああああああああああああ!!」
「んんにゃっぁぁああああああああああああああああああああああああああ!!」
刹那、大爆発!!
大爆発!!
チュドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!
大・爆・発!!!
50mの危害半径はギリギリ逃げおおせていたけど──もう、マジで大爆発!!
そして、その爆風たるや、もはや人間が直撃すれば吹っ飛ぶでは済まない威力!!
もうね──ボンッ!! ですよ、ボンッ!!!
ボーン! とね。
当然、ちっぽけな人間なんぞ、
「どわぁぁあ!」と「んにゃああああ!」とばかりに、二人は組んずほぐれず絡み合って、その場でグルングルンと、
しかし、それでも辛うじて飛ばされないギリギリで立っているだけエライ!!
あとはもう、ゴウゴウ! 爆風が肌を焼き、ついでに言えば威力が強すぎて、『微風の塔』が突風の塔というかもう爆風の塔みたいになって──しかも、揺れ始める。そりゃね! だってこのダンジョン──────塔なんですものぉぉおおお!!
つまりもう
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ! ですよ。
つまり、
つまり────……。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ────ギシッ。
ギシギシギシィィ────……ミシッ
「「ひ!」」
た、
た、
た────。
「「倒れるぅぅううう?!」」
に、
に、
に、
「に、
「にげろぉぉおおおおおおおおおおおおおおお!!」
最後はもう、
二人のウチどっちが言ったか知らないけど、
どっちも正解、どっちも正しい、どっちでもいいから逃げろぉぉおおおお!!
──うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!
ズズゥゥゥゥゥゥゥウウウン……!!
その日。
始まりの街『グラシアス・フォート』に異変起こる。
破壊不可能。撤去不可能。すべて不可能。
──その、神が作りし迷宮と言われる『ダンジョン』が倒壊するという摩訶不思議なとんでも現象が起こる。
それは深夜のことで誰も知らぬままに起こったことであった。
もちろん、その時ダンジョン入口を守っていたギルド憲兵隊は誠実に職務を遂行していたが、突然のことで何が何やらわからぬまま、
ただただ、轟音とともにダンジョン──『微風の塔』が倒壊するのを呆然と見ているしかできなかったという。
彼らの業務日誌にはただ、ひとこと。
「倒れた……」とだけ!!
ただし! 関連すべき情報としては、その少し前に、深夜にも関わらず突如として魔塔の研究者──「
そのため、念のためギルド憲兵隊が本部に通報していたこともあり。その経緯が発覚したという。
そして、当然、その後に関連性が問われることになったのだが──。
……倒壊日の現時点では『魔塔主』は行方不明。
その倒壊に巻き込まれたのではないかと推測され、現在は捜索中とあいなった。
……だが、夜が明けて一夜経った後も、
街及び郊外をはじめその姿は目撃されていないという────────。
(※ ちなみに、ダンジョン』『微風の塔』は人々が一瞬目を離したすきに元に戻っていたと言う……。ダンジョン、摩訶不思議なり)
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