第10話「ダンジョン武器化?」

「ふぁいとー!」


 さんぱーつ!!


 ──ぐびぐびぐび!!


「うぉぇぇええええええ!!」


 金貨3枚分のマナポーションを飲み干したマイト。

 次なるダンジョンに向かったはいいが、ダンジョンの形成している、ランクDダンジョン『異国の竹やぶ(推奨ランクD以上)』の出口は、分厚いしがら・・・(※ 枝を組んだ柵のこと)で、見た目は薄い癖にどうやら、不思議空間のせいか結構な厚みを持っているらしい。


 おかげで使用魔力40と途方もない数値だ!!


 つまり、先に使用した魔力35のせいで、現在魔力残り10


 ──つまり!!


 さ、最低でもあと30必要というわけで、今地獄の味を3本分堪能しているというわけだ────……。



  おろろろろろろ────……っと、あぶない!!



 は、吐いたら回復しねぇぇ!!


 気合で、全てを飲み干し、胃の中でチャプンチャプンというほどに、体が全身全霊で吸収を拒否するそれを押して、無理やり胃から腸に送り込む!!


 ひっひっふー

  ひっひっふー


 す、すてーたすおーぷん……



  ブンッッ!!



 ※ ※ ※


L v:1

名 前:マイト

職 業:冒険者

スキル:発破Lv1

取得済:Lv1「壁面発破」


●マイトの能力値


体 力: 11

筋 力: 20

防御力: 14

魔 力: 10/33 ⇒ 42/33(UP!)

敏 捷: 15

抵抗力:  9


残ステータスポイント「+0」


 ※ ※ ※



 しゃおらぁぁあああああああああ!!


 ──減少分を取り戻してさらに限界突破ぁぁああ!!


 うぉぇぇえええええ!!

 その分、涙と滝汗が止まらねぇぇえ!!


 ……だが、できた!

 俺は出来たぞぉぉおおおお!!


 滝の様な冷や汗と涙を流しながら、ショーなんたらの空に叫ぶマイト。


 そのまま、ふら~りとしがら・・・に手を当てると、恨み辛みとを込めて──。



  「発破よーーーーーい!!」



 ブンッッ!!


『目標──「ダンジョン壁」厚さ4000mm、使用魔力40』


 よっしゃこーーーーい!!


 異様に気合いを入れたマイトのそれがステータス画面に叩き込まれる!


 ……………発破しますか? Y/N



  ろんの、もち!!



 ⇒「Y」 ピコン♪




『カウントダウンを開始します』


「おっしゃ、かかってこーーーーーい!!」


 もはや、やけくそ気味のマイト。

 それほどのマナポーションはくっそまずいんだが。ここまで来きら、逆にテンション上がってきたー!!


 もしかすると、ポーションの中にヤバメの成分が入っているのかもしれないが、今のマイトそのあたりに思いを馳せる余裕もなく、とにかく数をこなさねばと躍起になっていた。


 もちろん、ここの入口にもギルド憲兵隊が配置されているので、あまり騒がしくするわけにはいかないが、この後爆破することを考えると微々たる差だ。

 ゆえにそのテンションのまま、一気に発破!!


『危害半径からの退避を勧告します』

「言われんでもいくわーい!」


 ドダダダ!!


 危害半径40mで、爆風をよけるために、大木を利用!

 幸い、森林系のダンジョンのこともあってか周囲には竹っぽい木とかそれなりに太い気もある。


 それをありがたく利用させてもらって────『3 2 1──いま!』



   ズバァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!



「うわっぁああああ!!」


 ビリビリビリビリビリ……!


 これまでで一番大きな爆発!! 凄まじい振動だ。

 そりゃ、40mは危害半径に含める爆破だ、当然だろう!!


 グラグラ揺れる地面と、吹き付ける爆風に思わず漏れる悲鳴。

 地球の兵器でもなかなかないんじゃないか──────……ドスゥゥ!!



   ……バイン!!

    バイン、バイ~~~ン……。




  ──は?




 奇妙な音と冷や汗に気付いて顔をあげたところで硬直するマイト。

 なぜなら、伏せてい頭上スレスレに何か・・がぶっ刺さっていたのだ。


 それも相当なスピードで刺さったのか……?

 未だに、バィィィイイン……と、震えているほどだ。


 いや、これ、バィィン! じゃなくて──貫通してるよ……ね?


「し、し、死ぬかと思ったわ! あっぶねー!!」


 ……え?

 反対から貫通してきたのか、これ?!

 だって、ほんの数センチずれてたら頭に直撃ですよ!?


 ……ようやくこのことに気付いて、ゾゾーっと背筋が寒くなるマイト。


「うげ……。しかもこれ、爆破したダンジョン壁の一部か?」


 何ということでしょう。

 ただの破片──竹かと思えば、シュウシュウと硝煙を吹いて大木にぶっ刺さっていたのだ。


 間違いない、この硬さとしいい、爆破した壁で間違いない。


「あっぶねー……!」


 なるほど。

 たしかに、ここのダンジョンの出口は、土とか石じゃないから、爆破したらどうなるのかと思ってたけど……。


 まさか、全部凶悪なショットガンみたいに吹っ飛ぶとはね?!

 こんなん、マイトさんじゃなきゃ死んでますよ?!


 しかも、よくよく見れば、周囲には無数の竹のような枝がびっしりと地面とか樹にぶっ刺さっている……。


  うーわ……!


「あっぶねー」


 今更ながら、冷や汗を流すマイト。

 大木の後ろに隠れていなければ串刺しになっていたことだろう

 まさに驚愕の威力だ──というか、爆破の影響力だ!


 多分、初見でこれだったら、あやうく自分のスキルで串刺しになって死んでいただろう。改めてスキル『発破』は危険すぎると認識したマイト。そして、ちょ~~~っとばかりテンションがおかしくなっていたことを猛省するのであった。



 ……って、まてよ?



 ギシリ……ッ!

 ようやく冷えてきたそれ・・を、両手で曲げようと力を籠めるがびくともしない。


「……おいおい、この枝……。結構固くね?」


 腰に差している「木の枝」を抜いて、今手にしているそれをジッと見比べる──。



(……あ、これいいかも!!)



 天啓を得たマイトは、ポンと手を打ち、具合を確かめようと軽く振る。


 ぶんぶん!

  ぶんぶん!


「……お、おぉ! わるくない! 思わぬ副産物だけど、木の枝なんかより絶対こっちのほうがいくない・・・・?」


 しかも、意外と軽い。

 未鑑定だけど、「銅の剣」とか「鋼の剣」のように持てないと言うこともない。


 すくなくとも推奨腕力は問題ないということだ。まぁ元は壁だしね。


 そして、触れてみてわかったのだが、もとは無敵の壁なだけあって、すげー硬い。

 ……っていうか、枝みたいな見た目のくせに、ま~~ったく曲がらない────いいね。


 マイトはついさっき死にかけていたわりに、コロッと気分を変えて、散らばった枝でいい形のを数本回収。


 それ以外は持てないので、邪魔にならないようにダンジョンの中に蹴り入れて証拠隠滅。


 あ、今思えば──他のダンジョンの破片ほっといて大丈夫かな? とチラリと思うマイト。

 ……まぁ、見た目はただの石とかだし大丈夫かと考え直す。


 (注:大丈夫じゃない)


「(おい、何だ今の音!?)」

「(わからん!! そも何だ今日は? さっきも向うでデカい音がしたぞ!)」


 げ!

 ヤバい……時間かけ過ぎた。


 どうやら入口にいたギルド憲兵隊が爆音に気付いて騒ぎだしたらしい。

 そういえば不可視の森のフィールドだけど、意外と音は筒抜けなのかもしれない。


 『毒蛇の坩堝』と違って地形的な防音効果が望めないようだ。

 まずいまずい!!


 慌てて開いた出口に突入すると、相変わらずボス部屋と地続きタイプの宝物庫ではあったが、そこにお邪魔して宝をGET!


 ここは何と宝箱が5つ!!

 そして壺と樽つきで、もちろんその中にもアイテムがあった!!

 

 うっひょう!!

 大収穫!! ここ美味しいかも──!!


 大慌てで回収したので、ボス部屋のほうからボケーっとした顔でこちらを見ているオークチーフの存在に気付いたもののノーリアクションであとにするのであった。

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