第4話「スキル『発破』」

 ステータスオープン!



 ──ブゥゥゥウン……。



 ※ ※ ※

L v:1

名 前:マイト

職 業:冒険者

スキル:発破Lv1(NEW!)

取得済:Lv1「壁面発破」(NEW!)


●マイトの能力値


体 力: 2/11

筋 力: 20

防御力: 14

魔 力: 3/33

敏 捷: 15

抵抗力:  9


残ステータスポイント「+0」


 ※ ※ ※



「…………って、(NEW!)じゃねーよ、クソ神がぁぁぁああああああ!!」


 なんだよ!!

 『はっぱ』なら最初から『発破』って漢字で書けよ!!

 スマホ使い過ぎで漢字をド忘れしたオッサンかぁぁあああ!!


「──はぁはぁはぁ……」

 ド畜生ブルシットッ!


 ひとしきり、開いたステータス画面に表示されたそれに突っ込むマイト。

 いやでも、ツッコむでしょ?! そこは突っ込むでしょ! つっこまないでか?!


 つーか、なんで「はっぱ」が「発破」やねん!


 そりゃ、たしかにさー。召喚上位の勇者や英雄さんらも最初は、「せいけん」とか「りゅうつかい」だったよ?!


 使い始めて、そこから理解が及んで色々スキルを覚えていくのはわかるよ!!

 実際、『聖剣』『竜使い』って理解したのもしばらくたってからって話を聞いた覚えもあるけどさぁぁあああ!!


「──せやけど、こんなんわかるかぁぁぁあああああああああい!!」

 

 「はっぱ」が「発破」とかわかるかぁぁああ!!

 つーか、対象に、

 しかも、壁とかに触れて・・・・・・・スキル『発破』を起動するとか難しいっちゅうねん!!


 初見でどれだけの人間がこれに気付くねん!!


 どこにおんねん! ゆーてみぃ!!


 説明書もなしに、「スキルはっぱ!」とか言う奴がよぉぉおお! いたらむしろそいつの頭の中みてみたいわ!!


 ああああああああ、

 もーーーーーーーーーーーーーーーーー!!


「……つーか、チンピラ死んでなくてよかったー」


 瓦礫でぺちゃんこになってるけど、かろうじて息しとるわー。

 腹立つ連中だったけど、殺したくはないし……。


 あ、でも、3人のうち、リーダー格のやついねぇ?

 まさか、吹っ飛ばされすぎて──……。


「う、うう……。なんだ、ボ、ボスモンスターでも出てきたのか?」


 ワッツWhat’s

 や、やべぇ、チンピラが意識取り戻しかけてるし!!


 ──だが、幸いにも吹っ飛ばしたのはマイトじゃないと思ってるみたいだし、いっそこのまま勘違いしてもらうとして……。


「よ、よし。今のうちに奪われたものを回収──……あぁ、ダメか。やめといたほうがいいよな」


 奴等の懐を漁ろうとして、ピタリと止まるマイト……。


(くそー、荷物回収したかったけど、そんなことしたら絶対に目を付けられるよな……)


 ……せめて、スマホくらいは回収したいが、くそ!!

 せ、背に腹は代えられない。


 チンピラ連中はとにかくしつこいのが信条みたいなやつらだ。

 マイトさんとしては穏便に済ませたいので、ここは渋々諦める。


 なに……。構うもんか!

 スマホは心の支えでもあったけど、命には代えられない。

 それに、今日はスキルの使い方が分かっただけでもよしとしよう──────!!


 …………って、ちょっと待てよ。



   ピタリ。



 いま。

 このまま帰ろうとして、ふと・・重要なことを思いだした気がする。

 具体的には前話参照──……って、前話ってなんだよ? いや、まぁそれはいいんだけど……。


 え、え~っと。


 なんかさっきあり得ないもの・・・・・・・が視界の端に映ってたような気がしたんだけど──……したよね?



   チラリ。



 そっと振り返るマイト。

 そこには果たして。



 チンピラ……

 無数の石くれ……


 ダンジョン……


 その出口──




「え? 出口あいてね?」


 え?

 え?


「あれ? あい、てる……よね?」


 いま、自分で言っといて、見過ごしかけたけど────はい、あいてます。

 ゲンキ君がクリアしてから、しっかり閉まっていたはずのダンジョンの出口がぽっかりあいてます・・・・・


 「って、あいてるぅぅうう?!」


 開いてる!!

 開いてる!!

 開いちゃってますけどぉおお!!


 ──ぐわばっ!!


 思わず、昆虫的な動きで振り返ったマイトの視線の先には、なにやら見覚えのある空間がある。


「つーか、中見えてね?」


    ……え?


「ええー??」


 いやいや、まさかまさか。

 ごしごし。目をこすって──。

 ……もう一度。



 ゴォォォオ……。



 どこかヒンヤリとした風が流れ出てくるのは、たしかにダンジョンの中──。

 しかも、最奥部……。


「は、ははは。あ、あり得ないありえない。あり得ないって。……た、たまたま誰か出てきただけだよね?」


 でなきゃ、おかしい。


 ダンジョンって、知る限りじゃ破壊不可能だしー。

 そんな、まさかまさかの『発破』で破壊不能のダンジョン吹っ飛ばすなんて芸当──────あははは。




   『目標──

    「ダンジョン壁」厚さ3000mm、使用魔力30』




「……って、言ってるぅぅう!」


 俺言ってる!! 言っちゃってたよ!!


 そーだよ、そーだった!

 俺っていうか、俺の中の内なる・・・・・・・──天下のステータス画面さんが言ってるぅぅうう!! 言ってらっしゃいますぅぅう!!


 しかも、結構具体的にダンジョンの壁の厚さを言ってるぅうう! 


「つーか、3000mmって、分厚いな出口の壁!!」


 3000mmって、300cm……3メートルやん!!

 そんなにあったん?!


 なにそれ?!


 3メートルやで?! 3メートル! 人間二人を縦に並べた長さやで?!

 そして、それが魔力30って、アンタそれ魔力1で10cmの岩盤ぶっとばせるちゅうことやで?!


 え?

「つーか、マジでダンジョンの壁ぶち破ったん??」


 え?

「い、いいのそれ?」


 え?

「で、できちゃってるよね……」


 なんか独り言ばっか言っちゃってるけど──おそるおそる……。


 そのままゆっくりと、

 覗き込んだ先には出口からの侵入者を阻むシールドすらない。


 つーか、えー?


 こ、これ……入っていい感じ?

 出口からってことは直接、宝物庫?? ボスをスルーして……??


 え? そんなんあり……?

 これ、ゲームだったらバグ仕様じゃないの??


「だ、だけどまぁ、ね! 念のため、ね──」


 こほん


「……おじゃましーす」



 おそるおそる



   ──てくてくてく



「わーい、ダンジョンだー」


 あ、やっぱり空気がひんやりしてる。

 そして薄暗くて────……お??


「お、おぉー?! こ、これって……宝物庫、だよな??」


 入って内部をグルリと見回すと、どうみてもダンジョン内だ。

 空気もそうだし、周囲に満ちている濃密は緊張もそう──。


 そして、

「あ、そうそう、これこれ」


 うわー、やっぱあるんだね。宝物庫。


 古~い記憶だけど、そう、たしかこんな感じの構造で──宝箱大きな宝箱が、『3つ』ほどあって────……。



「…………って、あるぅぇぇええええええ?!」



 ……あるやん!!

 ここにあるやん!!


「宝箱あるやん!! え? いいの? これ宝箱やで! これ宝箱やんけ!!!


 し、しかも、

 えええええええ──?!

「さ、さささ、三個とも未開封なんですけどぉぉぉぉおおお!」


 え?

 マジでいいの?


 これ、いいの? つーか……あり??


 え?


「お、おかしいぞ……。普通は、確か──で、出口待ちしてる連中を裏から入らせないために、出口側にはダンジョンからしか・・・・・・・・・通過できない透明の・・・・・・・・・不思議バリアー・・・・・・・が張ってたはず……」


 え~っと、ならこの場合って……?




  ぽくぽくぽくぽく、

         ちーん♪




「……まいっか」



 チンピラどもに殴られ過ぎ ア~ンド 一度に色々なことが起こりすぎて、もはや考えるのがめんどくさい。

 あと、貰えるもんは、もらっとこ──と貧乏根性を出したマイトくんもここいる。


 うんうん、いずれにしても早くしないとチンピラが目覚めるしね。



   はい、というわけで、御開帳──パカー。



「……わーお」


 キラキラキラ……♪


「お、お、おおー! き、金貨だ! 金貨袋だ!! あはは、うふふふふ」


 やった!

 金貨だ、金貨だ♪


 緩く縛られた汚い皮袋が無造作に箱の底に落ちており、

 さらには、その口から金ぴか丸々の金貨が数枚零れ落ちているではないか。どうやら本物らしい。


 ──わーい、やったね!


 そして、こっちの箱にはハイポーションだよ! 普通のポーションと違って、体力だけでなく魔力も回復してくれる優れもの!


 あと、こっちは魔石だー!! やったーこれも高く売れるぞー!


  ダララララララララ──……ディン♪


 しめて、

 金貨5枚、ハイポーション×1、赤の魔石(中)×1 なり~………………………。




「って、えええええええええええええええええええええええええええええええ?!」


 めぎゃーん!!




 いまさらながら、

 一通り驚いた後で、宝箱の中身をもったまま、

 よ~~~~~うやく現実に戻って来たマイトは、誰憚ることなく3メートルくらい、ビョ~ンと飛び上がったのであった。

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