第11話 ナーガ族


「あー、なんか身体が重いな……」



 ハルバードと遊んだ翌日、オレは再びアニスター共和国へとやってきていた。

今日はここでとある人と落ち合う約束をしていたのだ。



「ラウンドニャンで1日遊んだくらいで筋肉痛になるとか、鍛え方が足りてないか……?」



 最近は小競り合いくらいしか発生していないし、そもそも師団長に昇進してからはオレが自ら戦場に赴いて最前線で戦うってこともなくなったからな。

個人的には現場で身体を動かしてる方が好きなんだが、まあそういうわけにもいかねえか。



「それにしても、ラァ子さんか……」



 以前、マッチング魔道具『デスティニー』でオレに絡んできてくれた女の子。

プロフィールでは内気で人見知り、みたいなことを書いてたけど、いざメッセージのやり取りをしたらすっごいグイグイ来たんだよな。

で、今日ここで待ち合わせしてるのがそのラァ子さんなわけだが……



「……お、もう来てるっぽいな」



 デスティニーの待ち合わせ機能を使って、ラァ子さんが近くにいることを確認する。

というかこれ、こっちに気付いて近づいてきてる感じだな。



「えーと、バングヘアのメカクレ少女……」



 ズリ、ズリ、ズリ……



「……あ、あのぉ」



「うわっ!」



 いきなり背後から声をかけられて大きな声を出してしまった。

なんだ? 全然気配を感じなかったぞ……このオレがここまで近づかれるとは……



「……ル、ルイさん、ですよね?」



「はい……あっもしかしてラァ子……さん?」



 驚きつつも後ろを振り返ると、そこには……2メートル超えのデカくて華奢な女が立っていた。

いや、正確には『上体を持ち上げていた』と言った方が正しいだろうか。

彼女の下半身は通常の人間族の足ではなく、ヘビのような胴体をしていた。



「ラァ子さん、〝ナーガ族〟だったんですね……」



「……はい。その、プロフに載せて無くてすいません。顔写真だけだと詐欺みたいなものですよね」



「い、いえ、別に構いませんが、ちょっと驚いただけで……」



 ナーガ族は、上半身が人型で、下半身がヘビ型の魔人族だ。

頭から尻尾の先までを身長とすると、全ての人型種族の中で最も背が高い種族である。

しかし、体格は比較的スレンダーな人が多いため、見た目よりも体重は軽い。

プロフィールにエビルムーン帝国出身って書いてあったから魔人族かもなあとは思っていたが、まさかナーガ族だとは。



「……わあ、ほ、本物のルイさんだ。カッコいい……」



「あ、ありがとうございます」



 なんか、実際に合うとマッチング魔道具の時と全然雰囲気違うな。

デスティニーでメッセージのやり取りしてたときは『ルイさん本当に好きです会いたいですいつ会えますかわたし明日空いてます住所教えていただければこちらから伺いますお泊りも大丈夫です』みたいな感じで勢いがすごくて、ハチェット曰く『地雷だからやめたほうがいい』ってことだったが、今はなんというか、プロフィール通りの引っ込み思案の大人しい女の子って感じだ。

身長2メートル以上あるけど。



「それじゃあ、今日はよろしくお願いします」



「……お、おねがいします」



 今日の予定は、ラァ子さんの希望で映画を一緒に観に行って、その後は喫茶店で軽く話をして解散……って感じだ。

初デートっていっても、相手によってどういうスケジュールが良いのかは違ってくるんだな。

ミラさんのときは夜集合だったけど、今日は普通に正午過ぎに待ち合わせをした。

……まあ、ミラさんはヴァンパイアだから夜の方が都合が良かったんだろうが。



「……そ、その。最初に少し聞いておきたい事が、あるんですけど」



「あ、はい。なんですか?」



 もしかして映画の好みとかだろうか。

ラァ子さんの好きなので良いとは言ったが、一応聞いてくれる辺り、気が利く子なんだな……



「……あ、あのぉ。ルイさんは、『石化耐性』のスキルは持ってますか?」



 …………。



「はい?」

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