第60話 家に帰るまでが修学旅行

「ふふ、おかしっ」


 花が突然吹き出して、口元を抑えた。


「何で笑うんだよ」


「だって、変なんだもん」


 無邪気な笑みで、花が眦を細める。

 きっと、花はキスのことなんてこれっぽっちも考えちゃいないんだろうな。


 もしここで、俺が強引に迫ったりしたら……一体どうなるんだろう。

 怒られるだろうか。気まずくなるだろうか。無言で帰ってしまうかもしれない。

 それとも……何も言わずに受け入れてくれるのか。


 ――わからない。

 お互いに好き合っていることを確認したはいいものの、俺たちはまだ正式に交際してるわけじゃない。


 だから……もし花と恋人になったとしたら――キスとか……するんだろう。……多分。普通に……恋人なんだから。

 それに……もっと他のこととかも、きっと……。


 将来的に花とそういったことをするかもしれないと考えると、妄想でも無性に恥ずかしくなってしまうし、嬉しいけど複雑だった。


 その点昔は良かったな。『ちゅーしよう』の一言で深い意味を持たせること無く簡単に行為を済ませていた。単に好きだからって理由だけで、本当に素直に。


 ……そうだ。よくよく考えてみると、俺は花とは良くキスをしていたんだ。

 ちゃんと唇にしたのは一回きりだったけれど。ほっぺなんかにはしょっちゅうしていたのを思い出す。

 なら、なんで今はこんな気持ちなんだ。

 簡単にイメージ出来るはずだろ、花とのキスなんて……。


 ――わかってる。

 それは俺たちが少し大人になったからだ。

 れっきとした大人の男と、女になりつつあるからだ。

 そして、俺は幼なじみでも、“女”になった花に一人前に恋をした。

 だからこんな風に考えてしまうんだ。


 好きだからこそ、花とそういった関係になりたい。普通の女の子たちとは違う、特別な存在になってもらって、恋人としかできないことをしてみたい。


 寂れた噴水を見つめる花を一瞥する。

 柔らかそうな茶色の髪が、夕日を浴びて少し赤みを帯びている。

 くりっとした大きな瞳。長い睫毛。美しいフェイスライン。健康的な色の唇。


「…………」


 ――うぅ……、やっぱりかわいいな。

 彼女の横顔はとても女の子で、俺の胸は半ば自動的に高鳴りを続けてしまう。

 知らぬ間に、身体の一部がギンギンに聳え立っていることに気が付く。


 別に特別性的なことを考えていたわけでもないのに、身体はどこまでも正直らしい。

 花も、今の俺のように異性に対して勝手な考えを巡らすようなことはあるのだろうか……。でも、花はそんな性的な事柄からずっと遠くにいるような気さえする。


 子供のままじゃいられない。それはそうだ、もう十八歳なのだから。あと二年もすれば正式に大人として、社会に名乗っていくようになるだろう。


 だからこそ……綺麗なだけじゃいられない。

 花を性的対象として見てしまうことだってある。現に今、俺はこうして身体に出てしまっている。そんな俺を――彼女は受け入れてくれるのか。


 ――それだけ大きくなったってことだな。身体も心も。



 やがて花が俺の視線に気が付いたらしく、茶色の瞳を向けてきた。

 俺は内心で驚いたのを押し隠すように、目前の噴水に再び目を泳がす。視界の隅ではしっかりと花の姿を捕らえている。


 その後も俺たちは何か喋るでもなく、ただ時間だけが経過していった。

 なんとなく妙な居心地を感じつつも――やがてその沈黙を破ったのは花だった。


「ねえねえ」


 太もも辺りに視線を落としながら、彼女が言った。


「……何?」


「蝶ってさ、仲良い男の子たちとはどんなお話をするの?」


「どんな話、と言われても……うーんバカな話ばっかだと思うけどな。あまり意味のある会話をしないというか」


「ふ~ん……」


 そういった返答が返ってくることをわかっていたような反応だった。

 何故そんなことを聞いてくるのだろう。


「なんで? どーしたの?」


「ううん、なんでもないよ。聞いてみたかっただけ」


 健治が絡んだときはほぼほぼ下世話な話になるが、それは言わないで置こう。きっと花には刺激が強すぎる。


 いや――待てよ。

 だったら女子のほうはどうなんだ。中嶋や佐藤なんかは結構男慣れしてそうだが、そしたら男女の突っ込んだ話の一つや二つ、聞いたりしてるんじゃないのか? だとしたら、花は意外と色々なことを知っているのかも知れない。……俺が思っている以上に。


「そっちは? 普段どんな話するの」


「ん~……でも、恋愛の話とか……やっぱり多いかな」


「ふ、ふーん。やっぱ?」


 ……やっぱ? ってなんだよ。何知ったか気取ってんだよ!

 意味のわからんとこで一言多いの直したい! なんだ、俺は緊張しているのか!?


「うん。ナッチと彼氏の惚気話聞いたりとか」


「えっ――中嶋彼氏いたの!?」


「嘘っ! 知らなかった? 年上の大学生だよ」


「お、おぉ~……やるな中嶋さん」


 中嶋に年上彼氏が居たことにも驚いたが、それ以上にのろけたりするんだな、あいつ。

 まあ俺はのろけ話を聞いたときの花が、一体どういう反応を見せるのか激しく気になるわけだが!


「二人ね、結構面白いんだよ。良く喧嘩したりするらしいんだけど、キスされるとすぐ許しちゃうんだって」


「……へ、へぇ」


 なんとなく、肩身が狭くなる。

 それも花の口から『キス』という単語が出るとは思わなかった。


「……あっ」


 言っちゃった、みたいな顔をする花。

 失態を犯したことに気が付いたのか、彼女は微妙に顔を赤く染めた。


「そ、そういえば……俺らもアレだよね。昔とか……その、良くしたっていうかさ……キス……その、した……よね?」


「…………えっ」


 一瞬、何が起きたのかわからないといった具合に花がこちらを二度見してきた。クエスチョンマークが頭に浮かんでいるところまで見えた。


「あれ……? ん?」


 全力で、すべてを無かったことにしたい。やり直したい。セーブしたい人生だった。

 ああ――クソッ! 今のは確実に言わなくて良かった!

 現実(リアル)が恋愛ゲームと違うのは、意図しない失敗選択肢が世の中には無数に散らばっているということですね!


「……な、何っ?……キスがっ……何?」


 彼女も動揺してしまっているらしく、瞬きの量が多くなっていた。

 言葉を詰まらせながら、なんとか質問を投げかけてくる。


「い、いや、だから……ちっちゃいときとか……良くしませんでしたっけ」


 もう後戻りは出来なかった。

 話続行。この話題で進むことに俺は決めたようです。


「…………し、したねっ」


 照れと驚きが混じったような表情で、彼女が愛らしく微笑んだ。ちらりとこちらを見て、すぐに視線を反らす。


 認められたぁぁぁ! 俺はこの先なんて言えばっ!


「でもっ……どうして……急にそんなこと……」


「ああ、いや! なんか急に思いだしてさ。そんなに気にしないで」


 ずっと花とのキスのことを考えていただなんてバレたら死ねる!


「……そ、そうだよねっ! も、もうっ……」


「はは、ごめん」


 なんとか上手い方向に……転んだのか?

 話題がキスだっただけに、少しだけ気まずかった。

 妙にお互いデリケートで、異性として意識し過ぎてしまう感じは付き合ったら治るものなのだろうか。


 話題を変えようかと頭を巡らせていたときだった。


「……あの!」


 花の強張った声が響いて、俺は彼女に目をやった。

 すると花は唇を尖らせ、何やらぶつぶつ唱え始める。


「……その。ち、蝶ってさ……女の子と……キスとかって……できるの?」


 ――な、何を言っている?


「な、なんだよ……いきなりっ……だからしたじゃん! ちっちゃいときだけど……その、花とっ」


「……そ、そういうのじゃなくて! 今だもん。もっと、その……恋愛っぽいキスっていうか……なんか……そういう……あのっ」


 花が身体を乗り出すようにして、俺にぐいっと接近してくる。

 彼女の頬は自然に赤く染まっていて、珍しく裏声になっていた。俺の瞳の真ん前には、潤んだそれが瞬いている。


「……っ」


 彼女が言った、『今』とは、十八になった俺がという話なのだろうか。それとも、今こうして花と見つめ合ってベンチで座っている俺のことなのだろうか。


 もし後者であるなら……。

 こんな顔近づけてきて……そんな恥じらうような表情をして、一体どういうつもりなんだ。


「…………し、してみてよっ」


 真っ直ぐに瞳を見つめられたまま、花が言い放った。


「……や、やっぱり出来ないんだ。そ、そうだよね……蝶ってそういう度胸とか、無さそう!」


 殆ど俺の言葉を待つこと無く言った。

 まるで準備をしていた台本からの台詞を抜き出したように、手際良く感じられた。


 ――躊躇、しているのかもしれない。

 花も……俺と同じように。


「……で、出来るよ。……度胸くらいあるよ?」


 俺は、吸い込まれそうな花の瞳をしっかりと捕らえ、言い返した。


「……えっ」


 俺が唇を閉ざしてからも、彼女は驚いた表情で瞬きをぱちぱちと続けた。


「……そ、そんなの嘘だもん。出来ないくせにそういうこと言わないでよ」


 自分で言ったくせに、冗談にしようと茶化してくる花。


「からかってるの?」


 自然と、少し強めな口調だったかもしれない。


「えっ……あっ、あのっ」


 俺の言動に、花も困惑しているようだった。

 花の言葉が本気なのか、冗談なのかわからない。

 ただ、そんな混濁する彼女の心の内も少しはわかった気がした。


「……目、閉じなよっ」


「ち、蝶っ……」


 ビリビリと電撃が身体の中心を走っているような感覚に苛まれる。脳が麻痺して身体の先まで神経が届いていないような。


 初めは狼狽していた花だったが――やがて観念したのか、花はゆっくりと瞼を閉じた。


「…………」


「…………」


 ――俺も、花も、なんだか少しヘンだった。

 雰囲気に酔っているせいなのか?


 こんな形でしちゃって良いのか……? ……本当に?


 ……いや、別に良いんじゃないか、キスくらい。唇を重ねるだけなんだから。

 俺は深く考えすぎてるんだ。大切なイベントだと、重きを置きすぎている節がある。

 高校生なんてそんなものだろう。良いなと思った相手と早々に済ませておくのが今の世の常識なんだ。その点俺たちはプラトニックな関係で居られていると思う。

 きっと――これから俺たちがする行為は花の言う、『恋愛っぽいキス』に入るのだろう。

 そう言う意味では、ファーストキスになるなのかもしれない。


 お互いの距離が――詰まっていく。

 花の吐息が。甘い匂いが。俺の頬や鼻腔を刺激する。


 ぎゅっと瞼を瞑る花の愛らしい表情を一瞥。

 その顔が本当に愛しくて、つい胸がキュンとなってしまった。


 ――こんなの……もう、抑えられない。


 どくん、どくん――と高鳴る心音が強い鼓動となって、身体の端々にまで新鮮な血液を伝達させていく。

 次第に思考が衰退していく。身体の感覚も既に失われていた。知らぬ間に体温も急上昇している。


 好きな人とキスをするっていうのは、きっとこんな感じなんだろう。

 俺は今――、その瞬間のまっただ中にいるんだ。


 思ってもみなかった。俺たちが、こんな関係になるだなんて。

 考えてみれば、今回は彼女から吹っかけてきた。そうなると、案外花も恋愛に対して積極的なのかも知れない。


 しちゃうぞ……花、本当に……。

 キス、しても……良いんだよな。


 覚悟を決めた俺も瞼を閉じた。身を乗り出して、肩を竦めている花に覆い被さるようにして、顔を近づけていく――。


 ――今、唇と唇が……。




「おい、ヒロユキ! マジ待てってお前! クソ……! とんでもねえスピードスターだ! 爆発もんだぜ! こいつァ!」


 何とも聞き覚えのある声が、俺の耳に入ってくる。

 そしてその騒がしい足音が、ぴたっと俺たちの前で停止した。


「……えっ……お前たちは……バタフライと、フラワー……だよな?」


 俺は途端に思考停止してしまい、冷や汗がこめかみをつうっと流れた。

 対面の花も、あまりの衝撃に口をぱくぱくさせている。


「お、おぉ……! ミッチーじゃんか! 久しぶりだなぁ! ヒロユキと遊んでたのか……お前本当に動物が好きだよなあ~! しょうがない奴だぜ、まったく」


「あっ、そのっ……! 三井くん、こんにちはっ! 今日も空がすっごく綺麗だねえ」


 あたふたと調子外れなことを話し始める俺と花。


「あ? バタフライ、何だよ久しぶりって……さっきまで一緒にいただろうが。それにフラワー、もうすぐ夜も更ける。常識的に言えば挨拶は『こんばんは』だろ! ……旅行中はヒロユキに構ってやれなかったからな……こうして散歩してるんだが。ところで……お前等こそ二人でコソコソ何しやがってるんだよ……こんな所で」


「……そ、それは……」


「……え、えっとー……」


 お互いに視線を交差させる。

 すると、彼女は顔を真っ赤にして俯いてしまった。


 というか……わかんないかな! この空気でさ! 流石にそこまで鈍感でもないだろミッチー! 雰囲気を見事にブッ壊してくれたな! それになんだよ、さっきのスピードスターがなんちゃらって独り言は! ヘンなジャージ着やがって!


 恨みは全く無いが、俺はミッチーを睨み付けていた。

 悪いが、今だけは悪者になってくれ……運命と言う名のミッチーが邪魔しに来たと思わせてくれ。……頼む。


「……な、何で黙るんだよ。そんな……お、俺をのけ者みたいな目で見やがってよ……」


 ミッチーが哀しそうな表情を浮かべたときだった。

 突然、隣の花が立ち上がった。


「わ、わたし……か、帰る!」


「え!? 花! ちょっと待ってよ!」


「ははは、なんだお前等。そうかわかったぞ……二人のお笑いコントを俺に見せてくれるんだな? ……あぁ~、なるほどなるほど。そうなってくると話は随分と変わってくるな。つまり今日はその練習ってことだな? 修学旅行でもやけにひそめいてやがったのはこれの為だったわけだ!」


 なんでそうなる! 何故俺等二人でミッチー笑わせなきゃいけないんだよ! 寧ろ毎回笑かせてもらってるよありがとう!


 今にも駆け出してしまいそうな花の袖をぎゅっと掴んで、俺は彼女の進行を妨害する。

 そのときだった――数人の人影が俺たちの元へとやって来る。


「おいおい、ようやく見つけたぜ、蒼希くん……だっけか」


 また聞き覚えのある声。

 熊沢を初めとする不良連中が、再び俺たちの前に現れたのだ。


「さっきは笑わせてもらったぜ、まさかお姫様抱っこで逃げるとは思わなかった」


 俺はベンチから立ち上がり、花を背中に隠しつつ熊沢を睨めつける。

 すると、熊沢の顔色が途端に変わった。


「……お前……三井か?」


「…………ベアストリームか。久しぶりだな」


「……おい、三井って誰だよ」


 熊沢の背後の一人が声を荒げる。


「……同じ中学だ」


 そうぼやいた熊沢はなんとも真面目で、人を見下したような態度ではなかった。


 ミッチーは熊沢とその取り巻きたちを見据えると、溜息を漏らした。


「なんだ……お前、まだそんなことやってんのかよ」


 ミッチーの横顔がいつになく真剣である。俺たちには決して見せない表情。

 声色も若干低めで、何処か人を寄せ付けないような雰囲気を俺は感じ取っていた。


 ミッチーは親指を立てて、背後の俺たちを指し示した。


「……後ろの二人に、何か用でもあるのかよ?」


「……いや、別に何でもねえよ……おい、テメーら帰んぞ」


「ハァ!? なんでだよ!」


 背後の男たちがごちゃごちゃと言い始める。

 しかし熊沢はそんな彼等をなだめつつ、公園から退散していった。


「ミッチー、あいつと同じ中学だったのか」


「……まあな。……あいつ等に何かされたのか?」


 言ったほうがいいか……?

 花のほうに見てみると、彼女は首を左右に振った。


 まあ前に殴られたのは俺だし、今回殴ったのも俺だ。実質花は何もされてはいないか……これでチャラになるならそれがいいんだけど。


「…………そうか。でも……もう大丈夫だ。安心しな」


 ミッチーが何かを察したような表情で、そう言った。


 ――え、何。なんか格好いいんですけど! なんですかあなたそのギャップ!

 初めて見る彼のそんな表情に、俺はグッとくるものがあった。


 彼等の間に何があったのかは知らない。

 だけど、ミッチーは今は俺のクラスメイトで、友達だ。

 そこだけは、絶対に変わらない。


 * * *


 俺たちは、その後三人で一緒に帰り道を歩いた。


「てゆーかミッチー……なんで付いて来てんだよ、お前家はあっちだろ」


「は、はぁ!? ……な、なんだよ……い、一緒に帰ったらいけないのかよ! バタフライのくせしやがって……! 俺だけ仲間はずれなのかよっ……! なんでだよっ」


「ほらほら、ケンカしないー! 三人で一緒に帰ろっ!」


 花が俺たちの間に入って、朗らかな笑みを浮かべる。


「いやちょっと待って! 一緒に帰るとか以前に物理的にこいつの家と全然反対方向なんだってば、こっちの道」


「なんでだよ、いけないのかよ、なんでだよ、いけないのかよ……」


 ぶつぶつと呟き始めるミッチー。まるで呪詛のようだ。


「三井くんはわたしたちと一緒に帰りたいんだもんね」


「……まあ、俺はお前たちが一緒に帰りたいっていうから仕方なくだけどな」


「はあ……わかった。もうそれでいいよ」


「ふふ、三井くん面白い」


 あまり花とミッチーが喋っているところを見ることはなかったが、花も随分とミッチーのことが気に入っているらしい。

 何はともあれ、今日はミッチーが来てくれて本当に助かった。あの場に彼が居なかったらと思うと、背筋が凍るようだった。


 花の屈託の無い笑顔がちらりと視界に入る。

 花と二人っきりの甘々な空間を思い出す。


 ――やっぱり、キスしなくて良かったかもな。


 少し惜しい感じはする。だけど、ほっとしている自分もいる。


 今度……ちゃんと交際のお願いをしよう。

 キスは……そのときで良いよね。ちゃんと、俺から……したいし。


 いつの間にか夜を迎える空は未だ明るくて、もうすぐそこまで夏が迫っていることを教えてくれているようだった。


「…………あっ!」


 そこで俺は素っ頓狂な声を上げた。


「蝶……? どうしたの」


「バタフライ……? 腹でも痛いのか? 正露丸なら持ち歩いてるぞ」


「鞄……ロッカーに入れっぱなしだ!」


 家に着くまでが修学旅行。

 俺たちの長い北海道物語は、あともう少しだけ続くようだった。

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