第5話、日本神話伍

 こんにちは。


 今回も、日本神話について書きたい。前回にちょっとだけ触れた三輪山の主の話になる。

 三輪山の主は名を大物主神と言った。姿は美しい白蛇だと伝えられている。

 この大物主神、ある時に美男の姿をとり、斎宮である倭迹迹日百襲姫やまとととびのももそひめのの元へ通うようになった。もちろん、夜更けにだ。最初、百襲姫は夜にしか来ない男を不審に思うが。それでも、口には出さないで迎えていた。

 しばらくが経ち、姫は思い切って男に問いかけた。


「……あなたはどこのどなたでしょう?人ではないとわたくしは思うのですけど」


「……確かに、私は人ではない。棲家は三輪山だ、名を大物主と申す」


「はあ」


 姫が言うと、三輪山の主だと名乗った男はさらに告げた。


「なら、私は本来の姿に戻る。その際、決して驚いたり大きな声を出したりしないように」


「分かりました」


 頷くと、男は目の前から姿を消した。姫はすぐに男を探す。ふと、近くにあった壺を見つける。手に取り、中を覗いた。

 そこにはとぐろを巻いた美しい白蛇がいたが。姫はあまりの事に驚いて大きな声を出してしまう。すると、白蛇は先程の男の姿に変化した。


「……姫、約束を破ったな。あれだけ、驚いたりせぬように言ったというのに」


「あ!」


「私は帰らせてもらう、さらばだ」


 男はまた、姿を消した。部屋の中には百襲姫だけが残される。姫はあまりの事に衝撃を受け、とっさに近くにあった火箸を取った。

 それで自害を図る。百襲姫はしばらくして、息を引き取った。


 後に姫は葬られた。彼女が自害に火箸を使った事から、お墓はいつしか箸墓と呼ばれるようになる。

 今回は以上だ。短くはあるが。失礼する。

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