第9話 脆い糸
――――――2年後。
「ミリヤ、」
「なに?」
「俺ら2人でどっか行かない?遠くにさ。」
「そうだね。そうする?」
「…」
「気になるんでしょ?」
「…うん。ミリヤ、結婚しよ。」
「うん。」
「ん?!」
「ん?!」
お互い顔を見合せて、笑った。
「ミリヤならばぁばも、ママも、千紗もみんな安心してくれるよ。」
「そうだね。あたし、あんたにベランダ行かせないしね。」
「ミリヤに言われたら行けないわ。」
「あたしの悲しむ顔が一番来るもんね。」
「来る…。」
「今誰に一番会いたい?」
彼女が僕の上に乗って聞く。
「…一番はママ。その次に千紗。」
「でもミリヤがいる。だから大丈夫。」
「流星。愛してるよ?」
「俺もだよ?」
「…」
「なに?」
「あんたって面白いよね」
「え?」
「初めて会った時から今の今まであたしには絶対楯突かない。」
「そりゃね。」
「あたし失ったら行くとこ無いもんね。」
「無い。お前だけなんだよ、めんどくさくないの。」
「煩わしくないの?」
「そう。結局さ?千紗もママもばぁばもみんな遠慮しなきゃいけない。困らせたくない。でもミリヤは困らせても大丈夫。」
「あんたにわがまま言われたところでね?」
「……でも、千紗にはもっと甘えたかった。」
「小さい時は?甘えなかったの?」
「ある程度はね。でも困らせたくなかった。でも死にきれなくて、逃げきれなくて結局居場所がすぐバレて。…でも千紗は『2人の内緒』って俺が本当は喋れる事も、迷惑かけたくなくて死にたい事もわかってくれてた。それに、父親の事も話してくれた。ママからは一回も聞いたことがないんだよね。だから聞けない。でも、千紗とばぁばは教えてくれた。」
「同じ失い方はしたくないよね。結婚まで至らずとも、もしかしたら優しい家族だったから甘えたかったのかもね?けど、流星みたいに線引きして辛くなってたのかもね。」
「ミリヤ…」
彼女は僕を強く抱き締めてくれた。
心が苦しい…。
消えてしまいたい。
「ミリヤ、俺が居なくなったらすぐ次探せよ。それで忘れろ。それでいいから。」
「そんな悲しい事言わないで。」
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