第6話 家事

小学校6年生。


母と千紗は姉妹ということもあり、ずっと連絡を取り合っていた。


最近、僕の帰りが遅い事、夜に家を抜け出す事、隠れてベランダで煙草を吸っていることに不安を覚え、千紗の所で母の仕事が終わるまでの間預かって貰えないかと相談をかけていた。



そして、僕が夜、こっそりベランダで煙草を吸っていると母が来た。


「やべっ…」


慌てて普段隠してある空き缶の灰皿に煙草を入れた。でも時すでに遅し。


煙も匂いも充満していた。


さすがに母に怒鳴られると思ったが、


「あんたさ、家だけにしてよ。」とだけ言った。

そして続けて、


「あとさ、流星あんた、明日から学校帰り学童行かなくていいから千紗の所行って。わかった?」

「学童でいい。」


「…あんた週5学童行かせてんのに実質3回くらいでしょ?まともに行ってんの。知らないとでも思ってんの?その間千紗の所に行く訳でもなし。あんたそれにいつから千紗の所行ってないの?」


「お金かかってて勿体ないなら行く。迷惑かけないようにする。だから千紗のところには行かない。」

「なんでそんなかたくななわけ?」

「言いたくない。でもママに迷惑かけない努力はする。…タバコはやめたくないけど。」



「…学童は週3でいい。残り2日は千紗の所に行って。間違って火事起こされても困る。」

「…洗濯は?掃除は?お皿洗いは?ご飯作りは?ママがいない間に俺はそれを済ませたい。ママに楽してもらいたくてやってんのになんで奪うの?」

「……わかった。じゃあタバコやめて。なら行かなくていい。ただ学童は全部行け。あんたが心配だから行かせてる。」

「…なんで学童に行かない日があるか聞かないの?」


「…!」

母の目が少し開いた。


「別にいいけど。ママに迷惑かけないようにするから。ごめんね。」

「ママこそごめん。ちゃんと聞いてなかった。あたしの気持ちばっかり押し付けてた。」

「聞きたい?」

「聞きたい。教えて。」



僕は母に抱き着いた。


「…嫌ならやめる。」


母は僕を包み込んで頭を撫でてくれた。


「嫌だなんて1ミリも思わない。」


我慢しきれなくなって声を我慢して泣いていた。


「流、教えて?行ってない時は何してるの?」

「…家に帰ってきて、洗濯物片付けたり、お皿洗ったりしてる。」

「あれ?それ帰ってきてからいつもしてるから帰ってきてからでもいいんじゃないの?」

「火曜日と金曜日はママが少し遅い日なんだ。だからママが帰ってくる前に済ませたくて行ってなかった。ママが帰ってくる前に、ママが帰ってくる時には全部終わらせて、ご飯作れるようにしたかったから。そうしないと、ママ手伝いに来ちゃうからさ。」


「ごめんね…。そんな事考えさてたんだ。」

「『ごめんね』なんか聞きたくない。『ありがとう』でいいんだよ。それも迷惑ならもうわかんない。どうしたらいい?」


「迷惑じゃないよ。むしろ申し訳ないなって。」

「…僕がママ守るから。ママは仕事してくれてる。だから僕は家の事してママを助ける。当たり前でしょ?」

「流、別に出来ないからとか、残ってたからってママ、流星を嫌いになったりしないよ?」

「うん…でも綺麗なおうちがいいでしょ?」

「ありがとう。でも無理はしなくていいからね。疲れちゃうから。」

「ママも疲れて帰ってくる。だから当たり前の事。僕とママは2人で生きてる。」


「そうだね。そうなんだけどさ?流星気付いてた?またここ最近あんたママと話してないからね?ママは流とお話したいけど、流がママの顔見てはなししなくなってる。…寂しいんだよ?それはそれで。」


「…ごめんなさい。」

「謝らなくていいけど、ちょっとずつでいいからお話しよ?」

「わかった。」

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