第4話 痛みの記憶と心の声
暫くは落ち着いていた。
でも、ある日、母がトイレにたっている時に、祖母が訪ねてきて、勝手に上がってきた。
僕は、体が固まった。
ワンピースを着たスナックのママ風の匂いの少しキツイ人。
「紗里は?」
「……。」
「聞こえてないの?紗里は?」
「……」
「返事も出来ないの?!」
祖母の手が僕の頬に飛んできた。
僕はその瞬間に言葉にならない声を上げた。
あまりの大きな声に紗里トイレから飛び出て来て僕を抱き上げた。
そして、祖母を見て「何しに来たの。」と聞く。
「可愛い子供と孫に逢いに来てあげたのに何その態度。それにその子は…」
「あたしの子だから!!」
母が被せて言う。でももう僕は頭がパニックになっていてずっと大声を上げていた。
「何その子、病気?どんな育て方したらそうなるの?」
祖母は湧水の様に母を傷付ける言葉を出す。
だから僕は、「ママは悪くない!!悪いのは僕なんだ!!ママは何も悪くない!!悪くない!!悪くない!!僕なんだ!!あーーーー!!」と叫んでいた。
「母さん、帰って。」
「わかったわよ、別に興味もない、そんな可愛くない子。」
母さんは僕を抱いたままあやしてくれていた。
暫くして、
「流、母さん来てもいれなくていいからね。もし入ってきたらすぐ言って。わかった?」
「うん。」
……この時、必死だった。
早く泣きやもう。
早く落ち着こう。
ママを困らせた。
こんな感情に押しつぶされそうになっていて、
心の中でずっと千紗を呼んでいた。
すると、15分程で千紗が来た。
一人でブロックで遊んでる僕を優しく後ろから抱きしめてくれた。
「
さっき、無理に抑えた涙が滝の如く溢れ出して千紗の方を向いて抱き着いた。
「叩かれた!痛かった!ばぁばに叩かれた!…」と千紗に吐き出した。
「え?流星、母さんに叩かれたの?」と母が僕に聞く。
「叩かれた…」と背中を向けたまま答えると、
僕の正面に回ってきて、
「なんでママに言わなかったの?」と聞いてきた。
「僕が悪い子だから。ばぁばを入れたから。叩かれたって言ったらママ困るから。僕もっと悪い子になるから。…ママに嫌われる。」
「嫌わないから。悪い子でもない。痛かったよね…ごめんね。」
「それが嫌なの!!ママごめんねじゃない!!」
僕が叫ぶ前に、「お姉ちゃん、ちょっとごめん」と言って千紗が僕を抱き上げてベランダに行った。
「流、よく言えた。偉かった。」
「うん。」
「
「なにが?」
「来てくれた。」
「ママに呼ばれたからね。」
「僕も心の中で呼んだんだよ。」
「やっぱりそうだったんだ。」
「聞こえた?」
「聞こえた。」
「ねぇ、ちしゃ。」
「なに?」
「ばぁばは僕が嫌い?」
「どうして?」
「前にも痛いことされた。」
「覚えてんの?」
「少しだけ。だから怖かった。」
「嫌いじゃないよ。けどねあんなふうにしか出来ないの。いつかわかってあげて。」
「僕を産んだの嫌なのかな?」
「違うよ。それも違う。いつかわかるから。あたしも母さんの代わりに謝るから。本当にごめんね。」
「いいよ。もう大丈夫。」
僕はまた千紗に抱き着いて、いつの間にか眠りについていた。
数年前、僕は
あまりの痛さで暫く泣いていたのを覚えている。
母二人子一人 海星 @Kaisei123
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