第2話 パパそっくり

多分僕が母に初めてベランダに居ることがバレた日からだと思う。


・ベランダに1人で行かない

・窓を勝手にあけない

・1人で外に行かない


事を約束させられた。



そんな事で僕の考えは曲がらない。

負の感情を母への正しい愛情だと捉えていて、毎日毎日、母の負担を減らすことを考えていた。


そんな日々の中で家を抜け出すことも度々。

でも怖くなって、


千紗ちしゃ…きたよ」


と頼る始末。




だからもう迷惑を掛けたくないとある日の夜中、公園の滑り台の下に隠れた。

でも陽が少し顔を出して薄闇になってきた頃に、


「流、帰るよ。」と千紗が滑り台の下に入ってきて声をかける。


「いや。」とだけ言い僕は膝を抱えて震える。

「流星、この滑り台の下の事は千紗と流との内緒にする。だから教えて。何があった?」


千紗は僕が話せるのをわかっていた。


「いや。」僕も頑固だ。絶対に答えなかった。


すると、千紗は言った。


「もう一回言うけどここでの話はあたしとあんたの2人きりの秘密。あんた気づいてるんでしょ?紗里が本当の母親じゃないって。『母さん』が産みの親だって。それにあんたは話せる。けどそれを隠してる。あたし達に『迷惑』をかけたくなくて。特に紗里には。大好きだから余計に悩ませたくない。違う?」


僕はまだ答えなかった。


すると、千紗は声を荒らげた。


「流星!!あたしにくらい甘えな!全部話はなしな!あんたこのままなら本当に死ぬよ!!死にたいんだとは思うけどそんなことしたらあんたの大好きなママはどうなんの?!あんたの事追って自殺でもさせる気?!」


「いや!!そんなの嫌!!ママにそんな事させたくない!!けど僕は要らない子!!ママから産まれてない!!よその子なんだ!だから僕なんか、僕なんか居なくなればいいんだ!!なのにいつもいつも失敗する!この間だってそうだよ!!死ねばよかったのに、ママにバレた。だから泣かせた。うまく出来なくて…だからほっといて!!」



すると千紗は笑っていた。


「なんで笑うの?」

幼い僕には不思議だった。


「喋れんじゃん。しかもこんなに難しい言葉たくさん。あんた本当に4歳?」

「千紗がおしえてくれたから。」

「まさかここまで話せるようになってるとはね。」

「…だって話さない方がママは困らない。」

「そうかな?きっと沢山話せた方が紗里は楽しいと思うな。」




この時僕は自分から千紗に抱き着いていた。


「…あんた本当にパパそっくり。そうやってよく頭撫でてくれてた。」

「…?パパが?」

「そうだよ?…また大人になったら話してあげるから。」

「うん…」



僕は無意識に千紗の頭を撫でていた。




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