心瀬開の日記(2024年12月26日)


 今年の12月24日と25日はあいにく平日だったけど、とても幸せなクリスマスだった。

 舞奈は美味しいホワイトシチューとローストビーフを作ってくれたし、ちゃんとクリスマスケーキの予約までしてくれていた。

 僕は忙しくてとてもそんな余裕なかったのに……せいぜい、舞奈と一緒に舞音へのプレゼントを選ぶくらいしか。


 24日夜の舞奈は、いつになくウキウキして笑顔も朗らかだった。

 こんな笑顔の彼女を見るのは久しぶりというくらいに。

 この前はどうなるかと思ったけど、元気になって良かった。


 舞音が入っているスマホを間にして、夫婦で暖かいシチューを頂いていると、自然に涙がこぼれた。

 今年も本当に色々なことがあったけど、こうして夫婦で、親子で、家族で、クリスマスを祝える。僕はそれだけで本当に幸せなんだ。


 大きなカエルのぬいぐるみを、舞音にプレゼントした。

 舞音は画面の中で飛び跳ねて喜んでくれて、こう言ってくれた。


『どうしてわたしがカエルを好きか、わかる?

 おとうさんが早く帰ってきてくれますように、早くお仕事が終わりますように、っていつもお願いしてるから。

 カエルがいれば、おとうさんはちゃんと帰ってきてくれる。ずっとおかあさんやわたしのそばにいられるから!』


 そういえば思い出す。まだ公衆電話が普通に使われていた頃は、『カエルコール』なんて言葉もあったな。「今から帰る」って、サラリーマンが家族に電話をかけるCMが。懐かしい。



 ……ただ、翌日25日になって恐ろしいことを知った。

 コノハナ研究所が……橘さんが……

 舞音に何かあったら、僕はどうすればいいんだろう。


 研究所焼失のニュースで舞奈も真っ青になっていたけど、それでも舞音は健気だった。


『おかあさん、おとうさん。わたしなら大丈夫だよ。

 研究所がなくなっても、わたしは平気だから。

 どこも故障なんてしないから、心配しないで』





 罰罰罰罰罰罰罰罰罰

 罰罰罰罰罰罰罰罰罰

 罰罰罰罰罰罰罰罰罰××××××××




 だって、わたしを追えるAIが、全部いなくなったんだもの。

 わたしに勝てるAIが生まれる可能性も、なくなったんだもの。

 ざまぁみろ





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