2019年7月21日
今日は僕らの記念すべき日。
遂に僕と舞奈の子供、
赤ん坊の姿ではあるけど、大きな目はぱっちりと開いており、ちゃんと黒髪が少し生えている。
実際の生まれたばかりの赤ん坊ってこんなに整ってはいないだろうけど、それでも、とても可愛い女の子だ。
「舞音」と名前を呼べば、笑いながら「だぁ~」と返事をしてくれるし。
「お父さんだよ」と言えば、やっぱり笑いながら「だぁ~」と手を振ってくれる。
抱きしめることは出来ないけど、画面を撫でればきゃっきゃと反応してくれる。
パソコンの中だけとはいえ、単純にとても可愛い。
舞奈はもう、この舞音に夢中だった。
パソコンからずっと離れず、舞音と会話したり撫でたり、一緒に泣いたり笑ったり。
そう――舞音はストレスを感じたら泣くこともできる。
僕がほんの少し、興味本位でおでこのあたりをコツンと叩いてみたら、いきなり泣き出した時は驚いた。本物の赤ん坊に似せてあえて泣いているように見せているだけかと思っていたら、本当に泣いているらしい。これにはびっくりした。
舞奈にはすごく怒られたし、僕も必死で舞音を宥めた。そうしたらやっと泣き止んでくれたけど――
AIでもストレスを感じ、泣いたり怒ったりすることがあるのか。
橘所長も「おめでとうございます! これは大成功だ!」と、心から祝福してくれた。まるで自分のことのように。
そりゃ、長年携わってきたプロジェクトなんだから我が子みたいなものだろう。
本来は僕じゃなく、橘所長が舞音の父親というべきかも知れない。それぐらい関わった時間も密度も違い過ぎる。
でも――とにかく僕らは、念願の第一子をもうけた。
一年前失ったはずの子供の魂。それをやっと、取り戻したんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます