第28話「凱旋」
「おい! 誰かが来るぞ!!」
「気をつけろ──敵かもしれん!! アンデッドの可能性も考慮し────……ロメオか!!」
あ、隊長さんだ。
「ど、どうも──帰還しました」
ヘロヘロのロメオが決死隊の面々に肩を貸されてなんとか帰還。
ポーションである程度回復できても限界がある。なにより数が全然足りなかったのだ。
メイベルに渡した数本を除けば、残り二本。
それを結構重篤だったCランクの冒険者に分けて、ロメオは残った分を水で薄めて無理やり摂取。
それでも多少は効果があったのか、なんとか動ける程度にはなった。
余談だが、ジュリー製のポーションをわけた決死隊の面々は偉く感動していた、
「うぉ!! この味って、最近出回るレアなやつじゃ!!
「あ、ほんとだ! すごいわ、おしいいし!」
美味しいの……だろうか?
まぁ、まずいとは思わないけど──ジュリーはわざわざポーションの味にまでこだわっていたらしい、
そのせいで、冒険者ギルドで販売した低級ポーションには、たまに滅茶苦茶うまくて薬効の高いレアものが含まれていると最近話題になっていたそうだ。
裏では、引き当てたレアものを結構な高値で転売する奴もいるとかいないとか……。
そんなわけで、思わぬところで宣伝することができたのは僥倖であった。
宣伝? そりゃもちろん、ジュリーちゃん特性なのをアッピ~~~ルさせてもらいましたよ。
なんでも、直接買いに行くっす!!
とかファンになった奴もいたので、今後の販路の拡大に期待だ。案外一律銅貨6枚よりも高く売れるかもしれない──まぁ、卸先があるのでこのあたりはロローナさんとかギルドと交渉だな。
そして、先遣隊唯一の生き残りメイベルさんは、ひとり帰還したことを淡々と報告。
律儀に謝罪するとともに戦死したメンバーの認識票を返すと、事情の説明のためギルドにしばらく残留するとかなんとか──。
そうしてこうして、生還したロメオたちは一時英雄として持て囃されたのであったが──……いかんせん、戦闘を目撃していたのがメイベルただ一人ということもあって、あまりロメオの活躍が吹聴されなかったのはちょっと残念。
それなりの報酬も貰ったけど、まぁ決死隊はほぼ一律で、ロメオはちょっと色がついたくらい、それでも十分なんだけどね。緊急クエストは通常の者より安くなる傾向があるのだ。(※ 代わりにギルド貢献度は高く評価され、昇級時に加点されると言う噂)
あぁ、もちろん、メイベルさんは、ちゃんと証言をしてくれたらしい。
ボスモンスターこと、軍団の王が『人狼』ないし『犬神』であったこと、それをロメオと共闘して倒したこと──奇妙な現象「奴隷紋」らしきものを目撃したことも。
……もっとも、このあたりはメリザさんがチラっと話してくれた程度で事の真相はわからない。結局メイベルさんとはあの後で会うこともなかったし、なによりロメオも長居する気もなかった。
まぁ、それは仕方ないことだろう。
あの通り、メイベルさんはペラペラしゃべるタイプでないこともあるし、他のメンバーは気絶中。そのためロメオの活躍を語ってくれる存在がいないこともあってか、結局今回のモンスターブレイク騒動は、メイベルの──……さすらいにAランクの活躍で解決したと言うことで収まったらしい。
ロメオも、まぁ……うん、それでいいっす。
だって、ロメオさんが自分でペラペラ語るのもおかしいしね──……。
そんなわけで、モンスターブレイク騒動は、わずか数日で終息するのであった。
残ったモンスターの残党も、急遽駆け付けた男爵の騎士数名が冒険者の支援を受けつつダンジョンをあらかた掃討することで、事なきをえたらしい。
……そうしてこうして、ロメオは重傷を負いながらも帰還し、報酬を得て────今、御者のあんちゃんの荷車に揺られてビター・スプリングスに向かっているのであった。
「いやー……一時はどうなるかと思ったぜ」
「あ、あはは。同感です──それに、助かりました。あの装備がなければヤバかったです」
いや、もうかなり。
「そうかい? なら届けた介があったってもんよ──」
「はい、本当に助かりました──この俺は必ず」
わっはっは!
「いいってことよ、なんだかんだでお前の工房には世話になってるしな──ほれ、この前も車輪治してくれただろ?」
「え? まぁ──ええ、でもちゃんとお金をもらってるわけですし──」
仕事は仕事だもん。
「それを言うなら俺だってジュリーちゃんに特急料金もらってるぜ?」
「でも、──いえ、そう、ですね……」
なるほど。
思えば、どこかで何かが違っていればロメオはここにいなかったのかもしれない。
車輪の修理をしていなければ……。
ポーションの依頼を受けていなければ……。
工房に帰っていなければ──────。
「なるほど、なー」
「どうした?」
「いえ、縁ってのは面白いなーって」
「わっはっは! なにを達観してるのやら────それよりも、ほれ。そろそろつくけど、装備全壊した言い訳考えといたほうがいいんじゃねーか?」
「う……」
そ、そう言えば──。
せっかく作ってくれた装備の大半を失ってしまった。
「実際、びっくりしたぜ──。どこの蛮族だって! 恰好してたロメオが、いつのまにか、また布の服で帰って来るんだからよー」
うぐぐぐ。
面目次第もねぇー。
回収できるものはある程度回収したけど、大修理が必要なものばかり、いっそ一から作った方が早いかもだ。
「ま、皆仲いいからよ、正直に話せばどーってことねーよ」
「あ、あはは、そうですね」
うん。
まぁ、ジュリーの怖さを知らないから言ってるんだろうなー。うーぶるぶる、
無茶するなって言われてたのに、無茶しまくっちまったよ。
隠したいところだけど、田舎のことだから、すぐにばれるだろうし────うごごご、犬神と対峙するより悩んでるんですけどぉ!!
「ほれ、そろそろつくぞ──」
「あ、ああああ、あーど、どうも」
ははは、
悩んでるとつくのはえーわ。
しょんぼり。
こうして、ロメオは満身創痍、ボロボロの装備を抱えて工房に帰宅するのであったが────。
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