第24話「突入!」
ババーン……!!
『夕闇の洞穴』の中に鎮座し、異様な雰囲気を放つ中ボス部屋。
その名前の通り中ボスが待ち構えている場所で、この辺を根城とする冒険者の登竜門となっている。
というのも、このダンジョンのさらに深部へ向かう丁度中間地点に位置しており、
まるで、ここまで到達した冒険者の力量を確かめるかの如く立ち塞がっているのだ、
内部は、巨大な門とその先の広大なボス部屋とで区切られており、
いつもなら、一日に数回リポップすると言われる『
「開いてる……?」
「先客か?!」
言うや否や、
──ざざんっ!
と、目視できる位置まで接近すると、一度足を止めて円陣を組むロメオ達一行。
その辺の連携は言葉にせずともできるあたりそれなりに死線を潜り抜けた冒険者ならではと言えるだろう。
いつもなら固く閉ざされているはずの巨大な門が完全開放状態だ。何かあると思って間違いない。
「……十中八九、ボスがいるな。ロメオ一度息を整えろ」
「わかった。10秒くれ」
──ガシャ!
怪我こそないが、連続したスキルの使用と速歩によって、やや心臓が高鳴っている。
息苦しさはないが、呼吸を落ち着けるために一度兜を解放。
すーはー。
すーはー。
「……しかし、妙だな? 中ボスは『
わからないが、逃げた魔物がこの周辺で姿を消したことからも統率者がいるのは間違いない。
──普段なら、入口には中ボスの試練を受けようとする順番待ちのパーティがいて、
その先には洞窟には似つかわしくない凝った装飾の扉があり、その先にはドーム状の空間が広がっており、ゴツゴツとした岩だらけの地面とボスモンスターが街受けているのだ。
ちなみに、そこまでがいわゆる洞窟エリアで、E~Dのモンスターが多く生息している初心者ご用達の狩場となっており、
Cランク相当の腕を持つものなら倒せると言う中ボスを倒して初めて奥へと進むことができる。
そして、中ボスは、一度倒すとリポップまでに時間がかかるため──実は、初心者でも先に進もうと思えばタイミング次第でいくらでも行けるのだが、当然推奨されない。
っと、閑話休題。
そんなことよりも、速攻重視!
魔物どもが本格的に動き出すまでに時間がない!
「いけるか、ロメオ」
「ろんのもち」
ガチャンッ!
バイザーを下ろし、兜の緒を閉める!
トントンッ。
最後に、軽くジャンプして装備の具合を確かめる。
(くくくっ、体にぴったりだ。マジでいい装備だぜ──見た目以外はな!)
……そして、大きくサムズアップ──準備よし!
「
「よーーっし!! 一気呵成に突撃して、制圧する──いいか? ボス部屋は外からは中が見えない仕様だ──ただし、音だけは聞こえるようになっており──まぁ全員知ってるわな?」
コクリと頷く冒険者たち。
ここにいつのは最低でもCランク以上──ルーキーはいない。
「ならば一気にいくぞ!! いいな、何が起こってもビビるんじゃねーぞ!」
「「「おう!!」」」
扉が開いていても、光を通さないボス部屋は初見殺しな仕様となっている。一歩踏み込めば、今度は外と隔絶される仕様だが、別に何人でも入れるため、あくまでも見えるか見えないかだけの差でしかない。
もっとも、
ただし、初めて行くボス部屋の場合は、この程度の情報量でもかなり危険と言えるだろう。
外へと音が響くように作られているのは、おそらく、音で外からの侵入者をビビらせるような仕様になっているのだ。
そして、
「全員、とつ────」
「待って!!」
リーダーの声を合図に、全員が覚悟を決めてまさに突撃せんとした、そう、ほんとにまさにその時鋭い声が響く!!
それは最後尾を守っていたBランクの弓士で、盗賊職程ではないが、間隔に優れた決死隊の耳を務めていた女性だ。
その彼女がいうのだ──待てと!
「みんな聞いて!! この音──……この戦闘の振動音を!!」
ッッ!!
「いま、内部で現在戦闘が行われているわ!!」
「な、なんだと?!」
ばかな──と、慌てて、盗賊職のリーダーが床に耳をつけ、手を壁に這わせて音と、振動を感知!!
「なんてこった……!! ほんとだ。くそ、俺としたことが!!」
どうやら、リーダーの男。盗賊職でありながら、隊の指揮とロメオの戦闘を間近で聞いていた影響が出ていたのかもしれない。
「すまん! 見落とした、マジで誰かいるぞ!! 誰かがこの先で戦闘中だ───!!」
そう!
現在、内部でボスと誰かが戦闘中────つまり、これは!
「総員! 突撃やめ!! 総員、突撃やめ!!」
すぅぅぅうう、
「これより、攻撃支援行動を行う!! 我々は内部の戦闘を支援するぞ!!────十中八九、」
……この戦闘音は、
Aランク冒険者とボスのそれであると推測!!
「なんてこった、あれからずっと戦い続けていたのか?!」
ロメオをして驚愕だ。
二日前に消息不明になったAランク冒険者たち。
当然、未帰還者として扱われていたわけだが、なんという精神力か────。
「作戦変更! いま、無駄に手を出すと却って足を引っ張る可能性がある」
コクリ!
リーダーの意見に、全員同意の態勢だ。
なにせ、敵情は不明なところに、Aランク冒険者生存の可能性だ。そして、それが戦闘中──とんでもない事態である。
Aランク冒険者も規格外だが、
それと昼夜とわず戦い続けていたモンスターもただものではないだろう。
少なく見積もってAランク冒険者と同等か、それ以上だ!
「だが、戦闘が終わるのを待つわけにもいかねぇ! 状況不明!! だが、支援くらいはできる!!」
「「「おうよ!!」」」
全員が同意し、急速に高まっていく士気。
そうだ。
決死隊だったはずが、これで一気に生存確率が上がる!
Aランクが消息不明になるモンスターをBランク主体で討つ! という作戦が、
Aランクとともに、全員でボスモンスターを討つ! に変わったのだ、勝ち目は十分にある!!
「行くぞ!! 魔法使いは支援魔法を準備、それと回復魔法も、いつでもかけれるようにな!」
「はい!!」「任せろ!!」
Cランクを同行させたのは、この魔法支援のためだ。
Bランクのロメオ達は、全員が戦闘職で魔法職を欠いていたのだ。
Cランクだけでは護衛するにも戦闘の矢面に立つのも心もとない戦力だが、魔法があるとないでは戦略の幅が大きく変わる──その判断が、今功を奏するかもしれない!
ッすぅぅうう!
「気合いしれろ、野郎ども────!!」
「「「おおおううう!!」」」
行くぞ、
突入ぅぅぅうううううううううううう!!
※ ※ ※
──うわっぁあああああああああああ!!
簡単なん打ち合わせだけ済ませてロメオ達は一気呵成に中ボス部屋に突入。
刹那、周囲に空気が一気に変わり、森の中の様な濃密な草いきれの空間に代わる。
ここがボス部屋。
草原のようなダンジョン植物が無数に生える、広大な疎林地帯がそこにあった!!
普段なら、この広大なドーム状の空間を巨大な蛾が鱗粉をまき散らしながら飛び回るのだが、状況は一変していた。
無数の木々が倒され、
下生えは削り取られ、天井壁を問わずに破壊の痕跡が無数に散らばる異様な空間!!
そこにいたのは数名に戦士。
否──今はたった一人の戦士が、そこにおり、いかにも満身創痍といった風情で立ち尽くしていた。
敵影はなし────なしはなしだが、体に突き刺さる様な強大な敵意の固まり!!
「……な!!」
驚いたのは視線の先の戦士だろう。
ボロボロのローブに真赤な剣を携えた小柄な剣士であった。
おそらく、件のAランク冒険者──仲間らしき、Bランクは中ボス部屋の入口の反対で折り重なるようにして倒れていた。……おそらく息はあるまい。
「ギルドからの増援だ!!──現状を……」
リーダーがそう叫ぶなり、
状況を察したのか、驚いていたAランクが何かを叫ぶ────。
その声が聞こえるか聞こえないかの刹那の時……。
ぞわっ!!
ロメオは反射的に剣を構えた。盾を構えた──身構えた!!!
「来るなッ!」
どかーーーーーーーーーーーーーーーんッ!
まさに激突!!
否、撃滅だ!!
駆け付けたばかりのロメオ達決死隊8名は、Aランクの警告が刺さると同時に、突如強襲を受けて、吹き飛ばされる!
その一撃たるや!
Aランク冒険者が思わず目を覆うほどの一撃だったのだろう!
中ボス部屋の反対で折り重なるようにして倒れているBランクもまさにこんな状況だったのだろう!
なにもわからず、なにかもわからず、何もできないままに一方的に────。
「がはぁ!!」
「な! ばかな!!」
息をついたのは、ロメオ!!
驚いた声をついたのは、Aランク冒険者!!
そして、吹き飛ばされたはずの決死隊はロメオの背後で、脳震盪を熾して白目を剥いてはいるが、五体満足──生きている!!
そして、
そして、
そして、
「げふっ……。な、じょ、冗談、だろ────」
ロメオ以外に唯一意識を保っていた、リーダーの盗賊職は、驚愕に目を見開き、最後に叫ぶ──。
グルンと白目をむいた最後の最後に、その化け物をみて叫ぶ……!!
そう、
このダンジョンにいるはずのない上級のモンスター!!
グルルルルルル……!!
『グルアッァァアアアアアアアアアアアアアア!』
「人狼だとぉぉぉおおおおおおおおおおおおお!」
がはっ!!
その言葉を最後に、彼もまた意識を失い、残る6名とともにドサリと倒れて戦力外となる。
対峙するのは、ロメオ一人──と、獣臭漂う巨大な人型モンスターで、ボス級の
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